2007/09/13

モーツァルト フルートとハープのための協奏曲(第2楽章)


 

 ≪モーツァルトのメロディーは美しい。

 しかし、それはため息のように短い。

 

 冒頭の序奏をうけて歌いだすフルートの旋律は、そんなモーツァルトの特長がもっともよく出ている。短くはあっても、一度聞けば決して忘れないメロディーである。

 

 この旋律が、最も効果的に使われたのが、映画「アマデウス」だ。サリエリが、はっきりとモーツァルトに対する殺意を固める場面である。また、この場面はサリエリの口を通し、この上もなく素晴らしいモーツァルトへの賛辞が聞ける場面でもある。

 

 コンスタンツェが、夫モーツァルトの作品を持ってサリエリを訪れるところから、この場面は始まる。皇帝の姪であるエリザベートの音楽教師の職にありつくため、夫に内緒で作品を持ち込んだのであった。

 サリエリは、作品を置いていくよう仕向けるが、コンスタンツェは断った。

 

コンスタンツェ

 「主人に知れたら叱られます。オリジナルですから。」

 

サリエリ

 「これはオリジナルですか?」

 

コンスタンツェ

 「えぇ、写しは作りません」

 

サリエリ

 「これは本当にオリジナルですか?」

 

 そう言うと、サリエリは立ち上がって譜面を見つめる。

 

 すると、この「フルートとハープのための協奏曲」の第2楽章冒頭のメロディーが流れ始める。

 

 この音楽をバックに、晩年のサリエリが語り出す。

 

 「仰天した。

 とても信じられなかった。 

 曲想が浮かぶまま書いたオリジナルが、どこにも書き直しがない。

 どれも直前に完成しているのだ、頭の中で。 

 どのページも、写したように整っている」

 

 「その音楽は、見事なまでに完璧だった。

 音符一つ変えるだけで破綻が生じ、楽句一つで音楽が壊れる」

 

 「私は思い知った・・・それは「神の声による響き」なのだ。

 五線紙に閉じこめられた小さな音符の彼方に、私は至上の美を見た」

 

 そうして打ちのめされたサリエリは部屋に閉じ籠り、初めて神を冒涜する言葉を口にして十字架を火の中に投じる。

 

 「もう、あなたは敵だ!

 憎い敵だ!

 あなたは神の賛美を歌う役目に、好色で、下劣で、幼稚なあの若造を選んだ」

 

 「そして私には、彼の天分を見抜く能力だけ。あなたは不公平で、理不尽で、冷酷だ!」

 

 「あんたの思い通りにはさせない。あんたの創造物であるあいつを、傷つけ、打ち砕く!

 あんたの化身である、あいつを滅ぼす!」

 

 苦悩するサリエリのバックに流れる、モーツァルトの音楽のなんと美しいことか≫

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