2007/09/03

シベリウス 交響詩『フィンランディア』

 


 この曲は交響曲第2番と並ぶ、シベリウスの代表作であるとともに、誰もが知っているメロディを持っているという点では、シベリウスの作品中でも最も有名な曲と言える。同時にフィンランド国民にとっても、特別な意味を持つ作品となっている。

 

 この曲が作曲された19世紀末から20世紀初頭にかけて、フィンランドはロシアの圧政下にあった。ロシアからの独立の気運に燃えていたフィンランド国民を鼓舞したのが、この「フィンランディア」である。シベリウスが、フィンランドに対する熱い愛国心を込めて作曲した名曲だ。

 

 この曲は元々、フィンランドの歩みを示す「歴史的情景」という劇の付随音楽の一部として作曲されたもので「フィンランディア」は、そのクライマックである「フィンランドの目覚め」の部分のために作られた。そういう曲なので、フィンランド民謡風の叙情性を感じさせてくれると同時に、祖国愛を盛り上げる力強さを持っており、特別に「愛国心」という言葉を抜きにしても、聞いていてエネルギーが湧いてくるような曲となっている。

 

 ただしロシア支配下の時代の作品ということで、当初は「フィンランディア(フィンランド頌歌)」とは呼ばれていなかった。あまりにも愛国的な気分を持つため、この曲を「フィンランディア」というタイトルで演奏することは禁じられていたのあり、そういう暗い時代の雰囲気が曲の前半に濃厚に漂っている。

 

 この曲は、映画「ダイハード2」のBGMとしても効果的に使われたが、これは監督のレニー・ハーリンがフィンランド出身だったためで、テロリストとの激しい戦いを描いたストーリーを「フィンランディア」の曲の展開と重ね合わせて使ったのではないかと思われる。

 

 曲は、いくつかの部分から成っていいる。

 冒頭は、アンダンテ・ソステヌートの重々しく不安な気分を持った金管楽器の重奏で始まりまるが、これはロシアの圧制をイメージさせる「苦難のモチーフ」だ。この動機は何の前触れもなく唐突に始まるため、非常に強いインパクトを持っており、一度聞いたら忘れられないような、印象的な曲の始まり方と言える。

 

 これを受け、民衆の悲嘆を示すようなメロディが木管楽器と弦楽器に出てると次第に盛り上がり、金管楽器とティンパニに「タ,タタタタ,タタッタ」というリズムを持つ「闘争への呼びかけ」のモチーフが登場する。冒頭の「苦難のモチーフ」が再現した後、今度は低音から力強い歩みを感じさせるモチーフが出てきて、曲は力強く盛り上がり主部に入る。

 

 この2つの力強いモチーフに、勝利に向かう輝く未来を感じさせる新しいモチーフが加わり、クライマックスが築かれる。主部が繰り返された後、盛り上がりがスッと引いていくと有名な「フィンランディア讃歌」の部分となる。この美しいメロディは最初、木管楽器で演奏され弦楽器が引き継ぐが、このメロディは賛美歌としても単独で歌われる曲で、宗教的な感動にも満ちている。フィンランドの「第2の国歌」として親しまれているメロディであり、恐らく本当の国歌よりも世界的には有名だろう。

 

 この部分が静かに終わった後、2つの「闘争のモチーフ」と「勝利に向かうモチーフ」が再現され、フルオーケストラによる雄大な行進曲となって盛り上が最高潮に達するが、これは圧政に反応する民衆の力を描いたものだ。最後は「フィンランディア讃歌」のメロディも加え、さらに力強く盛り上がり壮大なフィナーレとなる。

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