2019/03/10

ゼウスを魅了した女神たち(ギリシャ神話50)

出典 http://www.ozawa-katsuhiko.com/index.html
 
デメテル
 ゼウスが関係するヘラ以外の主要女神の一人に「穀物の女神デメテル」がいる。彼女もゼウスの姉妹で、したがって「ヘラ」の姉妹でありオリュンポス12神の一人となる。
 このゼウスとデメテルの子どもが「冥界の神ハデスにさらわれた娘ペルセポネ」となる。デメテルは「大地母神」という、どの民族も歴史以前から持つ神の性格を強く持ち、その名前の中に「母(メテル)」という言葉を残し(「デ」の方はさまざまに考えられているが、「大地」を表す「ゲ」のなまりかとも考えられる)、本来的に「土地神」という主神の位置にあったと考えられる。従って、主神ゼウスとの間に関係が持たされたのであろう。なお、このデメテルはゼウスの兄弟「海のポセイドン」にも襲われてレイプされてしまう物語がある。

レト
 ついでは「レト」である。レトもゼウスの従姉妹となる。彼女はオリュンポスの神々の中でも、とりわけ有力な神「予言と音楽と弓の神アポロン」と「純潔と野生と狩りの女神アルテミス」の母となる。彼女もゼウスによって子どもを孕んでしまい、臨月になったのだがゼウスの妻ヘラの嫉妬のために出産場所や出産の女神の立ち会いが奪われ、苦しみの中でようやく当時「浮島」であったデロス島がその場所を提供してくれ、ほかの神々の助けで出産の女神が連れて来られて、ようやく二人の素晴らしい子ども達を生むことができたという。古典期のギリシャでは、通常オリュンポスの一族以外祭られるということは少ないのだが、彼女は「別格」で、その二人の偉大な子どもと共にデロス島やクレタ島、小アジアなどで祭られていた。どうも出自は小アジア系の主神であったかと考えられる。

ディオネ
 ディオネはヘシオドスでは生まれが曖昧なのだが、アポロドロスではウラノスとガイアの子とされるので、文字通り原初の女神の一人となる(ヘシオドスではオケアノスとテテュスのたくさんの子の中に、この名前がある)。その名前は「ゼウス」と同根と考えられ(ゼウスの語幹はディウとされる)、従って言語学的には「ゼウスの女性形」となり、本来彼女はゼウスの分身的存在であったかとも考えられ、ゼウスの神託所として有名でホメロスの叙事詩にも登場する中部ギリシャの「ドドナ」にあっては「ゼウスの妻」とされていた。すなわち、中部ギリシャの大地母神がゼウスに吸収された時「ゼウスと同じ名前の女性形(ディオネ)」とされたのかと考えられる。
ゼウスはこのディオネからは「アフロディテ」を生んだことになっており、ホメロスの物語ではそうなっている。他方、ヘシオドスではウラノスの男根からとなっていて、「二重のアフロディテ」となっている。この二重のアフロディテはギリシャ人自身も気づいており、それぞれを「ウーラニア・パンデーモス」「パンデーモス・ウーラニア」と名付けていた。ディオネは、そのうちの「パンデーモス・アフロディテ」の母親ということになる。このように、アフロディテという女神は複雑で、二重のアフロディテについては「アフロディテ」の項を参照。

ムネモシュネ
 彼女もディオネやテミスの姉妹となる。彼女は「記憶の女神」だが、彼女からは「文芸の女神ムサイたち」がゼウスによって生み出されている。ギリシャ人にとって文芸(ムーシケー)は必須の人間的教養とされ、従って「無教養」というギリシャ語は「ア・ムーシコス」つまり「非文芸的」という言葉であった。文芸の内容は「音楽」「詩」「悲喜劇」「地誌・歴史」等を含んでいたから「記憶」の女神の娘とされ、その重要性からゼウスによって権威づけられたのであろう。

マイア
 彼女は、ゼウスの従兄弟に相当するアトラスの娘で「昴の星の姉妹」の一人となる。彼女からは、オリュンポス12神のひとり「道と使いの神ヘルメス」が生まれている。また後でみる「おおぐま座・カリストの物語」では、ゼウスによって犯されて孕んでしまったカリストの子アルカスを彼女が引き取ってそだてたという話しもある。

エレクトラ
 ゼウスはどうも「美人姉妹」に弱かったようで、姉妹を手にかけている事例が多い。マイアの姉妹のエレクトラもその一人となる。彼女からは「ダルダノス」と「イアシオン」の兄弟が生まれている。ダルダノスは北エーゲ海の「秘教の島サモトラケ」から「トロイ伝説」にかかわり、ダーダネルス海峡に名前を残している。イアシオンは「デメテルの恋人」となり「富の神プルトン」の父となったとかの神話がつたえられている。

タユゲテ
 昴の星の姉妹の三人目となる。彼女は、ゼウスに犯されて「ラケダイモン」を生み、これを恥じて山中に身を隠し、以来その山は彼女の名前で呼ばれるようになったという。この山こそ、スパルタの西に険しくそびえる有名な山脈「タユゲトス山」となる。一方この「ラケダイモン」とは「スパルタの別名」であることはいうまでもなく、この地の祖となっていったというわけで、このタユゲテの場合は「有名山脈」と、その麓の「有名地」の由来話しと言える。

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