2019/11/13

カリグラとネロ ~ 内乱の一世紀(13)

出典http://timeway.vivian.jp/index.html 

オクタヴィアヌスの三度目の、そして最後の妻がリヴィア。リヴィアには夫がいて、しかもお腹も大きいというのに、オクタヴィアヌスは見初めてしまった。そして夫と別れさせて結婚したんです。しかし結局、彼女はオクタヴィアヌスの子供を産むことはなかった。

オクタヴィアヌスは、そのリヴィアの連れ子を養子にして、その子が二代目の皇帝になった。ティベリウスといいます。即位した時は、もう50代。どちらかというと、日陰の人生を送った。陰気な人という評判です。別荘に引きこもって、政治は側近に任せきり。

 彼も息子がいなくて死後、跡を継いだのが彼の甥の息子とオクタヴィアヌスの孫娘の間に生まれたカリグラ。この人は、精神的にどうもおかしかったといわれる。

私の大学時代、アメリカの男性雑誌ペントハウスの社長が「カリグラ」という映画を作った。カリグラの人生を忠実に描いたらしい。出来上がった作品は18禁。私は見に行かなかったんですが、いった友人によると全編ぼかしだらけで、何がなんだか分からなかったらしい。まあ、そんな皇帝です。ちょっとだけいうと、自分の妹たちと肉体関係結び、さらに売春もさせる。馬をコンスル(執政官)にしようともしました。

ある時、有名な騎士階級の者の息子が、綺麗な髪をしているという理由で死刑にした。そして、その日にその父親を宴会に招待して、何回も乾杯させるのね。父親は宴会が終わるまで、悲しいそぶりや怒りの感情を見せずにカリグラに付き合った。なぜかというと、彼にはもう一人息子がいたというんだ。ちょっとでもカリグラに批判的な素振りを見せたら、もう一人の息子が処刑されるかもしれないと考えたんだ。

良家の子女を集めて売春宿を作って、市民に買わせる。滅茶苦茶ですわ。自分の娘を売春婦にさせられた貴族達の怒りは、いかばかりか。

 カリグラ帝は、正真正銘のサディストだったんだろうね。自分の目の前の誰かに、屈辱を与えることが楽しくて楽しくてしょうがなかったんだと思います。彼を精神異常だと書いてある本が殆どなんですが、ローマ帝国皇帝なんて、とんでもない権力なわけです。それを、たかだか25歳の平凡な若者が手に入れてしまったらどうなるか。その実例がカリグラです。権力の大きさに、自分自身が押しつぶされてたんじゃないかな。弱い者虐めでしか、自分の力を確かめることができなかった心の小さな男だったんだろう。自分の周りのあらゆる人に滅茶苦茶するものですから、最後には親衛隊に殺されてしまった。即位わずか4年。

カリグラは自分の地位が狙われるのを恐れて、一族の男は殆ど殺していた。残っていたのは、叔父クラウディウスのみ。なぜクラウディウスが殺されなかったかというと、ちょっと頭が弱かった。カリグラはこんな馬鹿に帝位をねらえるはずがないと思って、殺さずに虐めて楽しんでいた。

ところがクラウディウス、即位すると急に頭が良くなる。実に理路整然と話をして、みんなを驚かせた。実はカリグラに殺されないように、馬鹿のふりをしていたというんだ。でも、こういう面白い話は大抵ウソですから、真に受けないようにね。

クラウディウスは女運が悪かった。4人の女性と結婚しましたが公然と浮気をする妻がいたり、最後の妻には毒殺されてしまう。この最後の妻が、オクタヴィアヌスの曾孫でカリグラの妹の一人。彼女も離婚経験があって、連れ子がいた。この連れ子を早く帝位につけるため、クラウディウスを殺してしまうのね。

 連れ子がネロです。暴君で有名ですが、多分普通の男の子だったと思うよ。即位したのが17歳。若い時はセネカという有名な哲学者や優秀な親衛隊長が補佐して評判よかったんですが、大きくなるにつれてわがままになった。

まずは、口うるさい母親を殺してしまう。離婚した妻に世間の同情が集まると、これも殺してしまう。補佐してくれたセネカ達も追い払われて、わがままし放題になったというけれど、カリグラに比べれば可愛いもんです。

盛んに詩を作ってコンクールに出たり、競馬やオリンピックに出場したりする。他の出場者は皇帝に勝つわけにはいかないから、ネロは必ず優勝するのです。で、自分のことを天才だと思いこんでしまう、他愛ない人です。

これも最後は地方の総督が反乱を起こし、親衛隊に見捨てられて自殺するのですが、最後の言葉。

「おお、私の死によって、何と惜しい芸術家がこの世から消えてしまう事よ。」

皇帝という地位を離れても、自分自身に価値があることを信じたかったんでしょう。ネロという人は、必死であがいていたようです。

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