京都の桜は3月中旬から下旬にかけて咲く枝垂桜を皮切りに、3月末から4月初めにソメイヨシノ、さらに4月中旬に平安神宮などで有名な八重枝垂桜と続く。
通常は満開のソメイヨシノを目指して行くことが多いから、運良く枝垂桜がまだ残っていたり、八重枝垂れが咲き始めていれば、コラボが楽しめるわけだ。
そんな中、「京都で最も遅い桜」と言われる「御室桜」は4月下旬に咲く。古くから和歌などにも詠まれている御室桜だけに、是非一度は観たいと思いつつも、なにしろこの桜を拝めるのは御室仁和寺のみ。当然、他の桜とは時期がずれるから、これを見るためには他のソメイヨシノや枝垂桜は全て諦めないといけないだけに、これまでなかなか行くことはできなかったが、この年は実に幸運なことに早く咲いたお陰で他の八重枝垂れと同時に、満開の御室桜に対面することができたのである。
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《毎年春、仁和寺は満開の桜で飾られます。金堂前の染井吉野、鐘楼前のしだれ桜などが競って咲き誇ります。その中でも中門内の西側一帯に「御室桜」と呼ばれる遅咲きで有名な桜の林があります。古くは江戸時代の頃から庶民の桜として親しまれ、数多くの和歌に詠われております。
また、花見の盛んな様子は江戸時代の儒学者・貝原益軒が書いた『京城勝覧』(けいじょうしょうらん)という京都の名所を巡覧できる案内書にも次の様に紹介されています。
「春はこの境内の奥に八重桜多し、洛中洛外にて第一とす、吉野の山桜に対すべし、…花見る人多くして日々群衆せり…」と記され、吉野の桜に比べて優るとも劣らないと絶賛されております。
そして近代大正13年に国の名勝に指定されました。
御室桜は遅咲きで、背丈の低い桜です。近年までは桜の下に硬い岩盤があるため、根を地中深くのばせないので背丈が低くなったと言われていましたが、現在の調査で岩盤ではなく粘土質の土壌であることが解りました。
ただ、粘土質であっても土中に酸素や栄養分が少なく、桜が根をのばせない要因の一つにはなっているようです。
あながち今までの通説が間違いと言う訳ではなさそうです》
「ああ、観に来てよかった」
と思えるような御室桜の美しさ。重厚な五重塔をバックに、同じく満開のミツバツツジとの共演も見事だった。
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