2006/04/16

琵琶湖が生んだ近江


 滋賀の旧国名は、言うまでもなく「近江」です。近江とは  『〔「あわうみ(淡海)」の転。淡水のうみの意〕
(1)
旧国名の一。滋賀県に相当。江州(ごうしゆう)
(2)
淡水湖。特に、琵琶湖』(goo国語辞典「大辞林 第二版」より)

とあります。もう少し、詳しい解説を見てみましょう。

<近江」とは、奈良の都に近い淡水の湖を意味する「近つ淡海(あわうみ)」が転訛した地名だそうだ。言うまでもなく「近つ淡海」とは、我が国最大の淡水湖である琵琶湖を指す。幅広い北側から南に下がるに従って細くなっていく形状は、まさに楽器の琵琶の形によく似ている。

「近つ淡海」から「近江」に国名が換えられたのは、大宝元年(701)に施行された大宝律令の時からである。近江にかかる枕詞は「さざなみ」である。この響きのよい言葉は、いかにも湖畔に打ち寄せる小さな波を連想させ、太陽の光を反射してのどかに横たわる琵琶湖のイメージに繋がる。万葉仮名では「さざなみ」を「楽浪」という漢字で表記する>

では「淡海」とは、何を表しているのでしょうか?

<淡海とは、塩分を含まない真水の湖を意味します。つまり近淡海とは琵琶湖を、遠淡海とは浜名湖を指し、その地域の代表的な景観が国名になったと考えられます>

<琵琶湖と浜名湖の両方に共通する事は、西側に山がある事です。都から東へ旅立った人にとって、比叡山南の峠を越えて眼下に初めて見た琵琶湖と、湖西連峰の頂から見下ろした浜名湖の光景は、重なって見えたのではないでしょうか。  その時代、淡水湖は琵琶湖と浜名湖だけでなく沢山あったはずです。が、近淡海=琵琶湖の対となる淡水湖の中で、遠淡海の名に相応しい湖は浜名湖の他に考えられなかったのかもしれません>

このように「近江」誕生のルーツには、やはりシンボルとなる琵琶湖の存在が欠かせなかった、という事でしょう。

<琵琶湖は、カスピ海やバイカル湖などとともに「古代湖」として、自然史上とっても貴重な湖の一つです。「古代湖」とは、数十万年以前に誕生した寿命の長い湖の事で、世界に僅か10カ所ほどしか確認されていません>

<琵琶湖って、元々は今の位置にはなかったそうです。学者の調べによると、現在の三重県辺りから移動というか発生と消滅を繰り返して、今の位置に落ち着いたそうです。その歴史は、なんと400万年。カスピ海やバイカル湖などに匹敵する、世界で3番目に古い湖です>

<形も良く似たあの淡路島が、すっぽり入るぐらいの広さがあります>という驚くべき事実もあります。

 <琵琶湖の名前の由来をご存知ですか? 大方の人が、果物か楽器の「ビワ」まではご存知のようですね。では、どっち? 答えは楽器の琵琶、あの琵琶法師の琵琶です。楽器の琵琶に形が似ているから、琵琶湖と名付けられたそうです。

では昔の人は、どこから琵琶湖の形を見たのでしょう? 飛行機も地図もない時代なのに・・・>というように、琵琶湖の由来は「楽器の琵琶に、形が良く似ているところから来た」というのが定説になっている感がありますが、実は別の説もあります。


地名辞典の説明1~尾張国西春日井郡琵琶島町
藤原師長が、愛人に琵琶を形見に与えた事から、その名が起こったと言われているが、これは師長が琵琶に堪能だったために付会した物語で、新川と住吉川に囲まれ住吉川が湾曲している形状が琵琶に似ているからである。

・地名辞典の説明2~京都府城陽市枇杷庄
木津川が大きく蛇行する川沿いにあり、水輪(ミワ)の転音である>

<前記のように、地形の湾曲がある水辺や湿地などがビワと呼ばれており、琵琶湖の場合もそのような場所が多いので、土地の住人にはそんな意識が元々あった。その後、琵琶がビワと発音されるような(元々「ビハ」という発音)時代になって、水輪(ミワ)と琵琶を結びつける人も生じて、近世文人たちの手で楽器説にまで仕立て上げられるようになったのではないか>という事のようであった。

<「ハ→ワ」というハ行転呼音の変化は、平安時代中期以降に既に一般化しているようなので「竹生島縁起」の時代には、既に「ビワ」という発音になっており「水輪→琵琶」説も候補としては挙げられると思います>と、なかなか一筋縄ではいかないようだ。

ポリネシア語による解釈
出典 http://www.iris.dti.ne.jp/~muken/
<琵琶湖の名は、その形が琵琶に似ているからというのが通説です。しかし「琵琶」の音読みは「びは」で、日本各地にある「びは(琵琶、枇杷)」地名の殆どは「琵琶楽器説」では説明できないとされ(吉田東伍『大日本地名辞書』)、「びは」地名の多くは川、海など水辺の湿地で湾曲している地形の場所であるところから「ミワ(水輪)」の転という説があります。

 この「びわ」は、マオリ語の「ピハ」、PIHA(yawn)、「あくびをした(大きく口を開けた湖)」の転訛と解します>

新川と湾曲した住吉川に囲まれた、名古屋市西区枇杷島町、木津川が大きく蛇行する京都府城陽市枇杷庄(びわのしょう)などの「びわ」も同じ語源で、楽器や果物の名ではなく、大きく口を開けたような土地の形状によるものでしょう。

<近江国は東山道に属する大国で、現在の滋賀県にあたります。周囲を山で囲まれ、中央に日本最大の淡水湖の琵琶湖があります。近江盆地は、西側の比良山地・比叡山地と東側の鈴鹿山脈の間の断層盆地で、中央の低所が琵琶湖です。

この「おうみ」は「アハ(淡)・ウミ(海)」の約とされ、古くから淡海、相海、近江などと表記されました。近江は、浜名湖の「遠つ淡海」に対して「近つ淡海」と称したからというのが定説です。『和名抄』は、「知加津阿不三(ちかつあふみ)」と訓じます。

この「おうみ」、「ちかつあふみ」は、マオリ語の「アウ・ミ」、AU-MI(au=sea;mi(Hawaii)=urine)、「尿をする(瀬田川が流れ出す)海(琵琶湖)」  「チカ・ツ・ア・フミ」、TIKA-TU-A-HUMI(tika=straight,keeping a direct course;tu=stand,settle;a=the...of,belonging to;humi=abundant)、「(東山道、北陸道への)近道に・ある(重用されている)・大きな海のような湖・がある(地域。琵琶湖がある国)」の転訛と解します。

『日本書紀』神功紀摂政元年3月5日の条の、武内宿禰の歌に「淡海(あふみ)の海(み) 瀬田の濟(わたり)に潜(かづ)く鳥 目にし見えねば 憤(いきどほろ)しも」
「淡海(あふみ)の海(み) 瀬田の濟(わたり)に潜(かづ)く鳥 田上(たなかみ)過ぎて 菟道(うじ)に捕らへつ」の二首がみえます。

「淡海(あふみ)の海(み)」(原文では「阿布彌能彌」となっています)の「彌(み)」には、岩波大系本の讀み下ろしでは「海」の字をあてていますが、「海」では意味が通じません。これを上記のように「ミ=尿・川=瀬田川」と解すると、歌の意味がよく理解できます>

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