2007/06/24

ムソルグスキー オペラ『ボリス・ゴドゥノフ』(リムスキー=コルサコフ編曲) Act 4


 上演拒否の報の後、ムソルグスキーはスターソフらとも話し合い、オペラの改定作業に取り組んだ。

 

 まず、重要な女声役であるマリーナ・ムニーシェクが登場し、バレエ場面もあるポーランドを舞台とする2場が作られ、更にプーシキンの原作ではほとんど触れられていない民衆の蜂起を描いた「クロームィ近くの森の中の空き地」の場(いわゆる「革命の場」)が追加されている。

 

 入れ替わりに原典版にあった聖ワシリイ大聖堂の場は削られ、同場面にあった子供たちと白痴のやり取り、白痴の歌「流れよ、流れよ、苦い涙!」は「革命の場」に移されている。そして、原典版がボリスの死で終わるのに対して、改訂版は「革命の場」で締め括られる事になり、オペラの印象を大きく変えることとなった。

 

 原典版ではボリス個人の悲劇という印象であったものが、偽ドミトリーや民衆が前面に押し出され、白痴の歌で終わることにより、個人よりもロシアという国の悲劇が強調されるようになっている。

 

 改訂版の9つの場面を分析すると、クレムリンの場を扇の要として、誰に光を当てるかにより、オペラ全体がシンメトリックな構造となっていることがわかる。これはムソルグスキーの次作『ホヴァーンシチナ』にも継承されている。 

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