2017/03/15

ギリシャ神話(1)



古代ギリシア人は他の民族と同様に、世界は原初の時代より存在したものであるとの素朴な思考を持っていた。

しかし、ゼウスを主神とするコスモス(秩序宇宙)の観念が成立するにつれ、おのずと哲学的な構想を持つ世界の始原神話が語られるようになった。

それらは代表的に、四種類のものが知られる(ただし、23は同じ起源を持つことが想定される)

神々の系譜や、人間の起源などを系統的な神話に纏めあげたヘーシオドスは『神統記』において、二つの主要な起源説を伝えている。

ヘーシオドスは、古代オリエントなどの神話の影響を受けたと考えられ「最初にカオスが存在した」としている。

ただし、彼はカオスを「混沌」の意味では使っていない。

それは「空隙」であり、カズムとも呼ばれる。

その後、大地(ガイア)が万物の初源としてカオスのなかに存在を現し、天(ウーラノス)との交わりによって様々な神々を生み出したとされる。

ここからウーラノス、クロノス、ゼウスに渡る三代の王権の遷移が語られることになる。

他方、ヘーシオドスは、上記とは起源が異なると考えられる、自然哲学的構想を備えた世界の始源神話を同じ『神統記』においてうたっている。

胸広きガイアが存在し、それと共に地下の幽冥タルタロスと、何よりも美しいエロース(愛)が生まれたとする。

原初にエロースが生まれたとするのは、オルペウス教の始原神話に通じている。

エロースは生殖にあって大きな役割を果たし、それ故、愛が最初に存在したとする。

第三の宇宙観は哲学的・宗教的に体系化されていたと考えられ、オルペウス教が基盤を置いた、あるいはこの宗教が提唱した世界の初源神話である。

オルペウス教は多様な神話を持っており、断片的な複数の文書が伝える内容には異同がある。

その特徴としては、原初に水や泥があり大地(ガイア)も存在し、クロノス=時 Chronos(ウーラノスの子のクロノス Kronos とは異なる)やエロースが原初にあった。

そして「原初の卵」が語られ、他のギリシア神話では語られないパネース(Φανης)あるいはプロートゴノス(Πρωτογονος)が存在したとする。

以上に挙げた世界の始原神話以外に、第四のものとしてホメーロスが『イーリアス』でうたっている、より古く単純とも言える始原についての神話がある。

それは、万物の初めにオーケアノス(海洋・外洋の流れ)が存在したという神話で、彼と共に妻テーテュースが存在したとされる。

この両神の交わりより、多数の神や世界の要素が生み出されて来たとする。

これは素朴な神話で、海岸部の住民が信じていた始原神話と考えられる。

●自然哲学的な始原の神々 
 ヘーシオドスがうたう第二の自然哲学的な世界創造と諸々の神の誕生は、自然現象や人間における定めや矛盾・困難を擬人的に表現したものとも言える。

このような形の神々の誕生の系譜は、例えば日本神話(『古事記』)にも見られ、世界の文化で広く認められる始原伝承である。

『神統記』に従うと、次のような始原の神々が誕生したことになる。

まず既に述べた通りカオス(空隙)と、そのうちに存在する胸広きガイア(大地)、そして暗冥のタルタロスと最も美しい神エロースである。

ガイアより更に、幽冥のエレボス(暗黒)と暗きニュクス(夜)が生じた。

ガイアはまた海の神ポントスを生み、ポントスから海の老人ネーレウスが生まれた。

またポントスの息子タウマースより、イーリス(虹)、ハルピュイアイ、そしてゴルゴーン三姉妹等が生まれた。

一方、ニュクスよりはアイテール(高天の気)とヘーメラー(昼)が生じた。

またニュクスはタナトス(死)、ヒュプノス(睡眠)、オネイロス(夢)、そして西方の黄金の林檎で著名なヘスペリデス(ヘスペリス=夕刻・黄昏の複数形)を生み出した。

更に、モイライ(運命)、ネメシス(応報)、エリス(闘争・不和)なども生みだし、この最後のエリスからは、アーテー(破滅)を含む様々な忌まわしい神々が生まれたとされる。

●神話2:オリュンポス以前 
ゼウスの王権が確立し、やがてオリュンポス十二神を中心としたコスモス(秩序)が世界に成立する。

しかし、このゼウスの王権確立は紆余曲折しており、ゼウスは神々の王朝の第三代の王である。

最初に星鏤めるウーラノス(天)がガイア(大地)の夫であり、原初の神々の父であり、神々の王であった。

しかしガイアは、生まれてくる子らの醜さを嫌ってタルタロスに幽閉した夫、ウーラノスに恨みを持った。

ウーラノスの末息子であるクロノスが、ガイアの使嗾によって巨大な鎌を揮って父親のシンボルを切り落とし、その王権を簒奪したとされる。

このことはヘーシオドスがすでに記述していることであり、先代の王者の去勢による王権の簒奪は神話としては珍しい

これはヒッタイトのフルリ人の神話に類例が見いだされ、この神話の影響があるとも考えられる。

●クロノスとティーターン神
 
ウーラノスより世界の支配権を奪ったクロノスは、第二代の王権を持つことになる。

クロノスはウーラノスとガイアが生んだ子供たちのなかの末弟であり、彼の兄と姉に当たる神々は、クロノスの王権の下で世界を支配・管掌する神々となる。

とはいえ、この時代にはまだ神々の役割分担は明確でなかった。

クロノスの兄弟姉妹たちはティーターンの神々と呼ばれ、オリュンポス十二神に似て主要な神々は「ティーターンの十二の神」と呼ばれる。

これらのティーターンの十二の神としては、通常、次の神々が挙げられる。

1)主神たるクロノス、2)その妻である女神レアー、3)長子オーケアノス、4)コイオス、5)ヒュペリーオーン、6)クレイオス、7)イーアペトス、8)女神テーテュース、9)女神テミス(法)、10)女神ムネーモシュネー(記憶)、11)女神ポイベー、12)女神テイアーである。

アポロドーロスは女神ディオーネーをクロノスの姉妹に挙げているが、この名はゼウスの女性形であり、女神の性格には諸説がある。

ティーターンにはこれ以外にも、子孫が多数存在した。

後にティーターンはオリュンポス神族に敗れ、タルタロスに落とされるが、全員が罰を受けた訳ではない。

広義のティーターンの一族には、イーアペトスの子であるアトラース、プロメーテウス、エピメーテウスや、ヒュペリーオーンの子であるエーオース(暁)、セレーネー(月)、ヘーリオス(太陽)などがいた。

神々の王クロノスは、母ガイアと父ウーラノスから呪いの予言を受ける。

クロノス自身も、やがて王権をその息子に簒奪されるだろうというもので、クロノスはこれを怖れて、レアーとのあいだに生まれてくる子供をすべて飲み込む。

レアーはこれに怒り、密かに末子ゼウスを身籠もり出産、石を産着にくるんで赤子と偽りクロノスに渡した。
wikipediaより引用

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