2018/05/17

デーメーテール(ギリシャ神話36)

ペルセポネーの略奪
デーメーテールの娘コレー(ペルセポネー)は、行方が分からなくなる。何か悪いことに巻き込まれたのではないかと考えたデーメーテールは、犯罪に詳しい神と言われるヘカテーに問い掛ける。ヘカテーは「ペルセポネーはハーデースに冥界に連れ去られた」と答えた。女神は、ハーデースがペルセポネーを誘拐した事を知る。しかし、ゼウス達他の兄弟と違い純真で心優しい性格であるハーデースがそんなことをするはずがないと考えたデーメーテールは、地上の事は何でも知っているとされるヘーリオスに確認を求めた。


ヘーリオスは「ゼウスが、ペルセポネーを后に迎えたいと言ったハーデースを唆し拉致させた」と女神に教える。デーメーテールはゼウスがこの誘拐に加担したことを知る。デーメーテールはゼウスに抗議するが、ゼウスは「冥界の王であるハーデースならば、夫として不釣合いではないだろう」と言い訳する。デーメーテールはこれに激怒し、天界を捨て老女に変身しアッティカのエレウシースに下った。この放浪の間のデーメーテールの行動についての伝説が各所に残されている。

ペルセポネーの帰還
デーメーテールが地を放浪する間、大地は荒廃した。ゼウスは虹の女神イーリスを遣わしデーメーテールを説得したが、女神は怒りを解かず、コレー(ペルセポネー)の帰還を求め、それを条件として大地の豊穣神としての管掌を果たすことを答える。

ゼウスはハーデースに女神の意向を伝え、ペルセポネーを地上に帰還させた。ペルセポネーの帰還はデーメーテールに喜びをもたらし、それによって大地は再び豊穣と実りを取り戻した。これは穀物が地下に播かれ、再び芽吹いて現れることを象徴する神話とされる。

季節の起源
ペルセポネーは地上に帰還したが、冥府においてザクロの実を幾つか口にしてしまった。冥府の食物を食べたものは、冥府の住民となる定めがあったが、デーメーテールはこれにも抗議した。ペルセポネーが、どのような経緯で冥府の食物を食べたのか、自発的にか、ハーデースなどの策略によってか諸説ある。ザクロを食べた説でも、何粒食べたかについて複数の説がある。

オリュンポスの秩序は守らねばならないが、デーメーテールの抗議も考慮せねばならないとして、ゼウスあるいは神々は、1年(12ヶ月)を食べてしまったザクロの実の数(4粒又は6粒)で割り、1/3(又は1/2)を冥府で、残りをデーメーテールの元で暮らすことで決着を付けた。デーメーテールはペルセポネーがハーデースの元で暮らしている間は、実りを齎すのをやめるようになった。これは季節・四季の起源譚である。

オウィディウスやアポロドーロスの主張によると、ペルセポネーがザクロを食べたことが明らかになったのは、冥府の庭園の庭師アスカラポスの告げ口が原因であるという。これを恨んだデーメーテールは、冥府の入り口付近でアスカラポスの上に巨岩を置いたという。アスカラポスはヘーラクレースによって助けられたが、デーメーテールは彼をフクロウに変えた。

秘儀の二柱女神
デーメーテールの祭儀の中心はアッティカのエレウシースにあり、その秘儀は有名であった。他に「二柱の女神」の名で、ギリシア各地でコレー(ペルセポネー)と共に祀られた。アテーナイには、テスモポリア祭というデーメーテールのための祭があり、豊穣を祈るために、秋(ピュアネプシオン月11日から13日)に女達が祝った。アリストパネースの『女だけの祭』は、このテスモポリア祭を題材とする。

デーメーテールとポセイドーン
アルカディアに伝わる神話では、デーメーテールは娘を捜して地上を放浪していた際、ポセイドーンに迫られた。デーメーテールは、彼を避けて牝馬の姿となり、オンコス王の馬群の中に紛れ込んだ。しかし、ポセイドーンは彼女を発見し、自分も牡馬の姿となって女神と交わった。

この結果、デーメーテールは一人の娘と名馬アレイオーンを生んだ。娘の名はデスポイナと呼ばれるが、これは単に「女主人」の意に過ぎず、実際の名は密儀の参加者以外には明らかにされていない。この時のポセイドーンに対するデーメーテールの怒りはすさまじく、怒りの女神エリーニュスと呼ばれたほどであった。風光明媚で名高いラードーン川の流れで沐浴するまで女神の怒りは続いたとされる。

馬の誕生の神話
別の話では、自らに求愛してくるポセイドーンに、最も美しい陸上の生物を贈るように女神は伝えた。今まで、海のニュンペーを驚かせるためのタコやイソギンチャクのような奇怪な姿の海の生物しか作らなかったポセイドーンにとっては難しい話であったが、苦労を重ね一体の動物を完成させた。これによってできあがったのが馬だとされる。馬が完成するまでにラクダ、キリン、カバ、シマウマのような数多くの失敗作が生まれることとなった。この後、馬の仕上がりに満足したポセイドーンはデーメーテールのことを忘れたとも、馬のできばえに感心したデーメーテールはポセイドーンと打ち解け、不仲だった二人の関係が改善したともされる。

その他
アルカディアのピガリアには、デーメーテールとポセイドーンの婚姻が伝わる洞窟があり、そこには黒衣を纏い、馬の頭を持つデーメーテール像があったと伝えられている。これに依れば神話確立以前のデーメーテールは、馬の頭をした女神だったとされる。暗緑色の衣を纏った姿で描かれ、その象徴は小麦、芥子、水仙、豊穣の角で、聖獣は豚である。ローマ神話ではケレースと同一視された。比較神話学的には、地母神として東方由来の神ではないかとも考えられている。
出典 Wikipedia

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