2018/05/03

アテナイの貴族政治

出典 http://www.geocities.jp/timeway/index.html

 ギリシアの代表的なポリスであるアテネを通して、ギリシアの歴史を見てゆきましょう。大きく分けて、アテネの政治は貴族政治、財産政治、僭主政治、民主政治という順番に進んでいきます。

まず、貴族政治。前8世紀頃、記録に定かな段階では、すでに王はいなくて貴 族が政治を担っています。ところが、海外貿易が盛んになって貨幣経済が進展 するにつれて、平民の中に非常に豊かな者達があらわれてきます。この豊かになった平民達が、やがて重装歩兵となってポリス防衛戦争に出陣するようになります。

 この重装歩兵というのが重要です。当時のギリシア人にとって、ポリスを守るために戦争に出るというのは非常に名誉な事だった、というのを頭に入れておいてください。この時代は、戦争に行くのは貴族でした。貴族は騎兵。馬というのは維持費がかかるからね。しかし金持ちになった平民も、名誉ある戦に出陣するようになる。その時の兵種が重装歩兵です。青銅の兜に丸い盾、足にはすね当てをはめています。鎧は革製のようです。

武器は鉄の穂先の付いた槍です。鉄はまだまだ高価なモノですし、もちろん全部オーダーメードだから、よほど金持ちでないとこんな装備を手に入れることは出来ない。装備のない者は戦争にいっても何もできませんから、戦争に行く権利がないわけです。ここのところを教科書は「武器自弁の原則」なんて難しい言い方をしています。

さて、金持ち平民達が武具を揃えて出陣し、貴族と対等にポリス防衛に活躍す るようになる。

「貴族と同様に市民の義務を果たしているのだから、参政権も与えよ」

と、要求するようになります。これが、民主政治始まりの第一歩です。戦争の仕方も貴族の騎兵から、重装歩兵に比重が移ってきます。貴族も重装歩兵を頼りにするようになるわけだ。

重装歩兵の戦闘方法はこんなふうです。歩兵は一列8人が8列で方陣を組みます。彼らは、ぎゅっと密集して隊列を組む。これを密集隊ファランクスといいます。それで2メートル以上ある槍を前に突きだして、敵の部隊に向かって突進する。敵も同じように突っ込んでくるから、 槍ぶすま同士がぶつかるわけだね。前の列の兵士が倒れたら、後ろの列の兵が前に詰めてその穴を埋めた。こんなふうにして何度も突撃を繰り返す。恐ろしいと思うよ。だけど、密集隊の中の兵士がびびってしまって歩調を乱したり、列から逃げてしまったら隊列が崩れる。そこを突撃されたら負けてしまうわけ。だから、兵士一人ひとりが

「ここで自分が怖じ気づいたら負ける、共に隊列を組んでる仲間が死んでしまう、だから逃げられない」

という意識を持っている方が強い。連帯感、団結力、共同体意識、そういうモノが強い方が勝つわけだ。兵力が同じならね。こういう重装歩兵、平民の集団が参政権を要求するんだから、貴族も扱いに困るね。兵力は多い方がいいから平民には従軍して欲しいが、政治の独占を崩されたくもない。ついでに言っておくと、貴族の騎兵も実は戦場に行くまで馬に乗っているだけで、戦場に着いたら馬から下りて密集隊を組むんです。これが騎兵かと思うけどね。だから平民と貴族が、同じ隊を組むことがあったかも知れないです。同じ隊を組んでいて貴族だ平民だと喧嘩してたら負けるからね。

 密集隊を組むのは、密度が高い方が攻撃力が増すということもありますが、防御力も増すんです。兵士は左手に丸い盾を持っています。盾の裏側の真ん中に皮 の輪が付いていて、ここに肘を通す。端に握りがあって、ここをぐっと握る。肘全体で盾を支える感じです。これで左半身を守って、右手で槍を持ちます。自分の右半身は、ぴったりくっついて並んでいる右横の兵士の盾の左半分がカバーしてくれるわけです。だから、くっついていればいるほど自分が安全。そのままの隊形で走っていくんだ。常日頃から訓練している必要があるね。

この隊形の弱点は、一番右側の列。右端の兵士は自分の右半身はさらけ出している。だから、最前列の最右翼は一番危険な位置で、死亡率も高いはずです。重装歩兵達は、この最前列最右翼に立つのを嫌がったかというと、それが逆なんです。ここに立てるということは、心身共に最強だと誰もが認める人物なわけで、栄誉ある位置だからみんな立ちたい。俺はあの戦の時、最右翼だったんだ、なん て子や孫に自慢できるのね。自分の命よりもポリスのために尽くすことを大切 に考える、そんな世界だったのです。

 話を戻しますが、重装歩兵で活躍する平民の参政権要求を認める前に、貴族達 は政治改革を行って平民の不満を鎮めようとしました。これがドラコンの法(前621)です。「慣習法の成文化により貴族の横暴を防止」しようとしたという説明ですが、今風にいえば情報公開ですね。貴族が独占していた政治、法律情報を平民に公開したということ。

0 件のコメント:

コメントを投稿