2017/11/03

ホオリ

火折尊(ほのおりのみこと)、火遠理命(ほおりのみこと)、あるいは彦火火出見尊(ひこほほでみのみこと)は、日本神話に登場する神。瓊瓊杵尊と木花開耶姫の子であり、神武天皇(初代天皇)の祖父。「山幸彦」として知られる。

 

概要

『古事記』では、瓊瓊杵尊と木花開耶姫の子は、第一子が火照命(ホデリ=海幸彦)、第二子が火須勢理命(ホスセリ)、第三子が火遠理命(ホオリ=山幸彦)である。

 

『日本書紀』の本文では、瓊瓊杵尊と木花開耶姫の子は、第一子が火闌降命(ホスソリ=海幸彦)、第二子が彦火火出見尊(ヒコホホデミ=山幸彦)、第三子が火明命(ホアカリ)となっている。一書では海幸彦が火酢芹命(ホスセリ)、山幸彦が彦火火出見尊(もしくは火折尊)となっている。

 

「彦火火出見尊」は神武天皇の諱でもあり、祖父と孫が同一名ということになる。海神の助けを得て兄の海幸彦を征し、海神の娘である豊玉姫との間に彦波瀲武鸕鶿草葺不合尊(神武天皇の父)を得た。

 

『古事記』では、高千穂宮に580年居住し、高千穂山の西に葬られたとされる。一方『日本書紀』では、久しくして崩じ日向の高屋山上陵に葬られたとされる。

 

彦火火出見尊(ひこほほでみ の みこと) - 『日本書紀』

火折尊(ほのおり の みこと) - 『日本書紀』第九段第一の一書、第十段第四の一書

火折彦火火出見尊(ほのおりひこほほでみ の みこと) - 『日本書紀』第九段第三の一書

 

火遠理命(ほおり の みこと) - 『古事記』

天津日高日子穂穂手見命(あまつひこ ひこほほでみ の みこと) - 『古事記』

神話での記述

※ 史料は、特記のない限り『日本書紀』本文に拠る。

 

彦火火出見尊は、天津彦彦火瓊瓊杵尊の第二子である。別名は火折尊。母は大山祇神の娘の木花開耶姫。火中出産の時に「熱を避りて居たるときに生り出ずる児」であるという。『日本書紀』に拠れば兄に火闌降命、弟に火明命がいる。ただし火明命は一書では、兄とも伯父ともされ『古事記』には登場しない。

 

兄の火闌降命と弟の彦火火出見尊は、生まれながらに各々釣針と弓矢という「幸」を持っていた。そこで火闌降命は海幸彦、彦火火出見尊は山幸彦と呼ばれるようになった(『古事記』での海幸彦は火照命という神であり、火闌降命は何の事績もない系譜だけの神となっている)。

 

あるとき海幸彦と山幸彦は試しに「幸」を交換してみたが、どちらもうまくいかなかった。そこで「幸」をお互いに返すことにしたが、弟は兄の釣針を無くしてしまっていた。激怒した兄は、弟がいくら代わりの釣針を作っても許さなかった。

 

困った山幸彦は、塩土老翁と出会い海神の宮に送ってもらった。宮はとても立派なものだった。門の前の井戸のそばにあった湯津杜(ゆつかつら)の樹の下でさまよっていると、一人の美人(おとめ)が扉を開けて出て来た。海神の娘の豊玉姫である。豊玉姫は、ただちに父母に相談して山幸彦を招き入れ、海に来た理由を尋ねた。海神が大小の魚を集めて問いただすと、赤女(鯛)がこのごろ口の中が痛いと言っているので、その口を探すと失った釣針が見つかった。しかし海神は釣針をすぐには山幸彦に渡さず、豊玉姫を娶らせて海に留めた。

 

山幸彦が海の宮に住んで三年が経った。そこは安らかで楽しかったが故郷が懐かしく、たまにひどくため息をつくことがあった。豊玉姫は、それを聞いて父に「もうかわいそうなので返してあげましょう」と語った。海神は、山幸彦に釣針を渡して身を守るための呪文と玉を授けた。帰る時になって豊玉姫は自分が妊娠していることを告げ、産屋を建てて待っているように言った。山幸彦は地上の本宮(もとのみや)に帰り、海神の教えの通りに海幸彦を征した。海幸彦は吾田君の小橋などの隼人の祖とされる。

 

豊玉姫は妹の玉依姫を連れて、約束通りに陸にやってきた。産屋にこもった豊玉姫は、絶対に中を覗かないよう言った。しかし我慢できない山幸彦がこっそり覗くと、豊玉姫は龍に姿を変えていた(『古事記』では八尋和邇)。姫は覗き見られたことを恥じて海に去った。遺された子の名を彦波瀲武鸕鶿草葺不合尊(ひこなぎさたけうがやふきあえずのみこと)と言う。久しくして山幸彦こと彦火火出見尊は崩じ、日向の高屋山上陵に葬られた。『古事記』では高千穂宮に580年居住し、高千穂山の西に葬られたとする。

 

『日本書紀』の一書によれば、豊玉姫は鸕鶿草葺不合尊を養うために、自らの妹の玉依姫を派遣したという。『先代旧事本紀』によれば、火折尊と玉依姫の間には武位起命がうまれたというが、記紀にはこの記載はなく、武位起命を玉依姫の甥とする系図[1]もある。なお、玉依姫はのちに自らの甥にあたる鸕鶿草葺不合尊の妃となり、神武天皇(初代天皇)などを産んでいる(後述)。

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