2018/06/30
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2018/06/29
兄猾と弟猾(1)
古事記
8月、莵田の地を支配する兄猾(えうかし)と弟猾(おとうかし)を呼んだ。兄猾は来なかったが、弟猾は参上し、兄が磐余彦を暗殺しようとする姦計を告げた。磐余彦は道臣命を送って、これを討たせた。磐余彦は軽兵を率いて吉野の地を巡り、住人達はみな従った。
9月、磐余彦は高倉山に登ると、八十梟帥(やそたける)や兄磯城(えしき)の軍が充満しているのが見えた。磐余彦は深く憎んだ。高皇産霊尊(たかみむすひのみこと)が夢に現れ、その言葉に従って天平瓦と御神酒をの器をつくって天神地祇を祀り、勝利を祈願した。
10月、磐余彦は軍を発して国見岳で八十梟帥を討った。
11月、磯城に攻め入り、八咫烏に遣いさせ弟磯城は降参したが、兄磯城が兄倉下、弟倉下とともになおも逆らったため、椎根津彦が奇策を用いてこれを破り、兄磯城を斬り殺した。
この宇陀には、兄宇迦斯
自宇以下三字以音 下效此也(えうかし)と弟宇迦斯(おとうかし)と云う兄弟が住んでいた。まず兄宇迦斯に八咫烏を遣いに出し
「今、天神御子がお着きになられた。あなたたちはお仕えするか」
と尋ねさせた。
兄宇迦斯は、鳴鏑(かぶらや)で遣いの八咫烏を追い返した。その鳴鏑が落ちた所を訶夫羅前(かぶらさき)と云う。更に、待ち伏せて天神御子を攻撃しようと考え、兵士を集めたが、十分に集めることができなかったので、「お仕えいたします」と嘘をつき、大殿(立派な屋敷)を建て、その中に押機(おし)を作って待ち構えた。
それより先に、弟宇迦斯が神倭伊波禮毘古命の処に参上し
「私の兄の兄宇迦斯は、天神御子の使いを追い返し、待ち伏せして攻撃しようと考え、兵士を集めようとしましたが集まりませんでした。そこで、殿(迎えの館)を建て、そこに押機を作り、取り殺そうとしております。そのことを正直に申し上げるために参上いたしました」
と申し上げた。
そこで、大伴連等之祖(おほとものむらじらのおや)の道臣命(みちのおみのみこと)と久米直等之祖(くめのあたひらのおや)の大久米命(おほくめのみこと)の二人が、兄宇迦斯を呼び出し、罵声をあびせて
「伊賀 此二字以音(いが、おまえ)がお仕えすると云って立てた立派な屋敷に、意禮
此二字以音(おれ、おまえ)が先に入り、お仕えすると云うことの始末を明らかにせよ」
と言って、握横刀之手上(たちのたかみをとり、太刀の柄に手を掛け)、矛由氣
此二字以音(ほこゆけ、矛(ほこ)を突きつけ)、矢刺而(やさして、矢を向けて)、大殿に追いやると、兄宇迦斯は自分が作った押機に打たれて死んだ。そこで、この地を宇陀之血原(うだのちはら)と云う。
日本書紀
・八月二日 天皇は、兄猾(えうかし)と弟猾(おとうかし)を呼び出された。猾、これを字介志(うかし)と云う。二人は菟田縣の魁帥、これを比登誤廼伽弥(ひとごのかみ)と云う(首領・主)であった。兄猾の方は来ないで、弟猾だけが帰順した。弟猾は「兄猾が反逆を企てている」と申し上げたので、道臣が状況を偵察したところ、弟猾の言が眞実だったことが判り、道臣が兄猾を誅殺した。その時、兄猾の血が踝(くるぶし)をひたしたので、その地を血原(ちはら)と云う
弟猾は、勝利を祝って、牛(肉)・酒を準備して宴会を催した。天皇は、牛・酒を皆に分け与えて、御謡(みうたをよまれた)
謡、これを宇多預瀰(うたよみ)と云う。
莬田の 高城に 鴫罠張る 我が待つや 鴫は障らず いすくはし くぢら障り 前妻が 肴乞はさば 立そばの 実の無けくを こきしひゑね 後妻が 肴乞はさば いちさかき 実の多けくを こきだひゑね
莬田の高城で鴫を捕る罠を仕掛けた。待っていると、鴫が掛からず勇ましい鷹が掛かった(鯨が掛かった。)。古女房がおかずをねだったら、ソバのような実の少ないところをいっぱい削り取って渡せ。若い後妻がおかずをねだったら、イチイガシのドングリのような実の詰まったところをいっぱい削り取って渡せ
その後、天皇は吉野の様子を知るために、自ら兵を率いて見て廻られると、井戸から光り輝き尾のある人が現れた。天皇が「あなたは誰」と尋ねると
「私は、この地の國神である井光(ゐひか=吉野郡吉野町飯貝)という」
と言った。この國神が吉野首部(よしののおびとら)の始祖(はじめのおや)である。
更に少し進むと、磐石(いは)を押し分けて尾のある人が現れた。天皇が「あなたは誰」と尋ねると「私は磐排別(いはおしわく)の子です」と言った
排別、これを飫時和句(おしわく)と云う。これが國樔部(くずら)の始祖である
次に川に沿って西に行かれると梁、これを揶奈(やな)と云うを使って漁をしている人がいた。天皇が問われると、「私は苞苴擔
これを珥倍毛菟(にへもつ)と云うの子です」と言った。これが阿太(あた=奈良県五條市)の養鸕部(うかひら)の始祖である。