発表された五輪代表は村主、荒川、安藤の三人である。前述した渡部絵美の予想に便乗するわけではないが、実はワタクシもこの代表の顔触れは、ズバリ予想済みであった。
まず村主はシーズン前半の不調はあったものの、この大会で見せた地力と観客をあれだけ熱狂させた「氷上の女優」と言われる表現力が光る。元々、演技派だけに、ジャンプを売り物にする選手のような転倒のリスクがないのに加え、他の選手に真似の出来ない独特の武器になっている。また過去の実績や精神面を含めても、やはり現時点ではナンバーワンであるのは、衆目の一致するところだろう。
二人目の荒川も、まあ頷けない事はない。以前に紹介したように、国際大会の成績では出場した四大会総てにおいて浅田選手に負けているとはいえ、浅田、村主を除く四人の中ではミスの少ない安定度は、やはり一番だろう。この時点でのワタクシの意見としては、浅田選手を含めたこの三人が妥当なところだったが、浅田選手は規約もあって出られないのだから仕方がない。
問題は、三人目である。言うまでもなく浅田選手に資格があれば、真っ先に選びたいところだ。何と言っても、恨めしいのは年齢制限である。表現力はまだまだ乏しいとはいえ、技術的には素人目にも他の五選手が及ぶところではない。さらに、あれだけ騒がれながらケロリとして楽しんでいるような、プレッシャーを微塵も感じさせない勝負度胸を見ても、やはりタダモノではないのは明らかだ。次に期待するといっても、果たして四年後にはどうなっているか?
今の浅田選手の強みは「まだ大人の体になっていない」からに尽きるだろう。女性の体というのは、成長するに従い脂肪が付いてくるのは避けられないものなのだ。15歳の浅田選手が、いとも軽々とジャンプを飛んでみせるのは天賦の才能に加え、まだ脂肪の殆ど付いていない全身がバネのような、少女の体の齎す恩恵によるものなのであろう。同じように、2年くらい前までは三回転半を苦もなく決めていた安藤選手が、ここへ来て三回転にすら四苦八苦しているのも、18歳という成熟期を迎えて女性らしい体型を得た事と引き換えの代償なのである。
浅田選手は、これから精神的にも肉体的にも大人へと成長していくのであり、大人の体型に変化していくとともに、他の選手と同じようなダイエット地獄に苦しまなければいけなくなってくるのだろう事を考えれば、やはり今がピークと言えるのかもしれない。ただし同年代のライバルに比べれば、その天賦の才は圧倒的に図抜けているのは間違いないのだから、これからさらに技術に加え確実性や表現力を磨き、新たな変身を遂げる可能性は充分にあるだろう。願わくば安藤選手のように、一流になる前にマスコミから持て囃されてつぶれてしまうような、あの二の舞だけは勘弁願いたいものだ。
そうした事情も踏まえ、残る三人の中から選ぶしかないのであるが、どう考えてもドングリの背比べである。これまでのマスコミへの露出度やスター性を考えても、安藤選手が選ばれるのは100%近くわかってはいたが、多くのファンが不満を言う気持ちはワタクシも同じなのである。安藤ファンからは
「世界で唯一、四回転ジャンプをやったのが安藤だ!」
と言う声をよく訊くが、ズバリ言って「あれはマグレだった」としか言いようがない。本番で四回転をやったのは一回だけ。何度もトライして、成功が一回だけでは「マグレ」と言われても仕方がない。もとより三回転半はおろか、三回転さえ転んでばかりいる最近の安藤を観ているワタクシには
「四回転もいいが、その前に三回転をキッチリ飛んでくれ」
と言いたくなってくる。三回転すら満足に飛べない選手に、誰も出来ない四回転など絶対に成功するわけはない。安藤選手に対しては、ワタクシ的には不満だらけだから、ファンの方はここから先は読まない方がいいだろう。
そもそも、マスコミの大騒ぎに嫌気がさしてアメリカへ「逃げた」時点で、既に選手として失格だと思う。ワタクシには、マスコミがなぜあれだけのバカ騒ぎをするのかがわからない。それほど取り立てて騒ぐような美形だとは思えないが、それはともかくとして確かにあのマスコミのバカ騒ぎ(それも、五輪や世界選手権で金メダルでも獲ったわけでも全然ないのに)は異常であり、若い本人には気の毒だと大いに同情はするが、なんとしてもそこから逃げてしまってはダメなのだ。土台、そんなヤワな神経では、世界の強豪と戦って勝てるわけがない。
この時点で既に失格なのだが、百歩譲って修行のための留学だとしても気に喰わないのが、アメリカへ行ったという事で、何でアメリカなの?
と言いたくもなる。フィギュアスケートの王国と言えばロシアであり、またフィギュアスケートに必要かつ重要な要素となるバレエの王国もロシアである。
(要するに、アメリカで遊びたかっただけなんじゃないのか?)
と、下種の勘ぐりもしたくなろうというものだ。
さらに言えば、選曲もよろしくない。曲の良し悪しはさておき、あのどこまでも一本調子の盛り上がりのなさは、フリースケーティング向きの曲とはまったく思えない。ましてや表現力不足の選手にとっては、明らかな選曲ミスと言うしかないだろう。それでなくとも大学を卒業して、すっかり大人の雰囲気を持つ村主、荒川、また15歳で怖いもの知らずのような浅田と比べ、元々安藤の場合は微妙な年齢だ。浅田のように先物買いで多少の荒さに目を瞑って貰えるという年齢は過ぎたが、さりとて大人のムードを醸し出すには稚拙さや中途半端な幼さを拭いきれないというところばかりが目に付いてしまった。本人は、あのスローテンポな曲を使って大人のムードを醸し出そうと腐心していたようだが、とても成功していたとはいい難い。
安藤よ、アナタは「人より優れた高いジャンプを決めて、ナンボという選手なのだ」という現実と、まずは対峙すべきだ。勿論、これから表現力を磨いていく事は大事ではあるが、それにはまず自分の持ち味を確実にマスターする事が先決ではないのか? モノには順序というものがあるのだから、正しくステップを踏んでいかなければ成長はないと思う。
マスコミや専門家は、安藤の才能を非常に高く買っているようだ。素人のワタクシの目には(本当に、それほどの才能があるのかいな?)と疑問に感じてしまうくらいで、今のところ浅田選手のような格別な輝きを感じる事はない。浅田のところでも書いたように、まだ大人の体型になる前の数年前まではジャンプを軽々と跳べていたようだが、それでもジュニア時代の成績は中野とともに常に太田由希奈の後塵を拝していたにすぎない。
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