同じようなパターンが何度も重なると
「またか・・・」
と、イライラは募る一方となる。
面接にH氏が同席した場合は、面接が終わると大抵はH氏は残って担当者と打ち合わせをしていくのが常で
「(ビルの)下で待っていてください・・・」
というのがいつものパターンだったが、不毛な面接が三回くらい続いた頃からは、自分だけさっさと引き上げる事にしていた。
怒りを噛み殺しながらしばらく歩いていると、H氏から電話が掛かってくる。
「今、どちらに居ますか?」(なぜ、下で待っていなかったんだ・・・)
と、暗に咎めるような口調にも取れた。
「取り敢えず、結果が出るまで2、3日掛かるという事なので、またご連絡しますが・・・にゃべさんとしては、いかがでしたか?」
「いかがもなにも・・・この前から、何度も私の方向性は伝えていますが、今回もNW系ではなくサーバ系の案件だったし・・・毎回同じパターンなので、正直またかという気がしていますよ」
「うーん・・・この前から、その辺りはにゃべさんからも再三指摘されていたので、何度も確認はしたんですけどね・・・」
実際、H氏には、しつこいくらいに何度も念を押しながら確認してきていたのだ。といっても、必ずしもこのH氏が頭が悪いというわけでは決してなく、また営業マンとして無能というわけでもない。むしろ、よくやってくれていた思うし、理解力も人並み以下という事はあり得なかった。
当初は、あの面接した専務の命に従い仕方なくやっているのかと考えていたが、その後のH氏の働きを見ていると専務に尻を叩かれている部分はあったとしても、彼自身が
(なんとしても、自分の手で決めてみせる)
という強い意識を持って動いているのは疑いがなく、その限りでは感謝する部分は大いにあったのだが・・・
E氏の熱意に疑いを差し挟む余地はなかったが、上手くいかない最大の原因はE氏の業界経験の浅さであることは、明白にわかってきていた。
元々、この業界の面接(特に、技術レベルが上がるほどに)は、非常にシビアな技術の応酬である。要件のヒアリングにしても、場合によっては現場のリーダーや、それに匹敵する知識を持つ技術担当の管理者が相手だけに、営業マンとして相手のニーズを正確に吸い上げて人選をしていくには、かなりのキャリアと知識が必要となるケースが多い。
その意味で元々PC販売の営業だったE氏だけに、PC全般に関する知識は相当なものを持っていたが、NWやサーバ系に関する業界知識や人材の選定には、正直追いついていない印象は拭えなかった。その部分が、クライアントの求めるニーズと、ワタクシの求めるニーズの間で調整が上手くいかず、毎度幾分かのギャップを生んでいる最大の原因だった。
「また、にゃべさんに合ったよい案件があれば、ご紹介しますよ・・・」
いつもと同じセリフを繰り返すE氏に、どこまでそうした自覚があるのかは窺い知れないだけに、この辺りでハッキリと釘を刺しておく必要を感じ
「それですが・・・前から言っているように、どうもニーズにずれがあって・・・正直、面接依頼は他からも色々と来ているので、このように最初から無駄とわかっている面接は、ハッキリ言って時間と金の浪費でしかないと思ってます。まあワタクシは、どうせ暇な身分だからいいですけど、忙しいEさんのような営業さんに無駄足を踏ませるのは本意ではないし、方向違いのワタクシなんぞが面接に行って、折角の良い話をブチ壊してしまうよりは、サーバ技術者や希望する者を連れて行った方が、貴社にとっても遥かに有益なのでは」
たとえ気が進まぬとて、主張すべき意見は正しく伝える必要があった。
「つまりワタクシが言いたい事は、こちらが乗り気でない方向性のずれた案件の面接に行くのは、本来もっと相応しい他の技術者のチャンスの芽を摘み取るばかりでなく、貴社の利益を阻害しEさんの無駄足ばかりを増やす結果にしかならないのであって、これ以上続ける事は心苦しいというのが結論であると・・・」
「うーん・・・それはどうかな・・・私は、決してそうは思っていません。どんな結果であっても、決して無駄という事はないと思っています。どこが、どういう風にずれているのかがわかったというのも、実際にこうして先方の話を聞いてみて、初めてわかる事ですからね。
また他の人のチャンスを潰すとか、私や弊社の心配をしてくださるのは感謝しますが、そこはにゃべさんはお考えにならなくても、いいんじゃないですか? にゃべさんが最も適任だと判断して動いているのは私ですし、また結果的に無駄に終わるのは、にゃべさんにはご迷惑をかける事になりますが、やはり実際に現場レベルの話を聞いてみないと、わからないというところはあります。
私や弊社としては、元々これが仕事なわけですから、どんな結果になろうと無駄足という事はないと思ってますし、先方のニーズを正しく汲み上げていくためには、こういったやり方でやっていくしかないかなと思っています・・・」
また他の人のチャンスを潰すとか、私や弊社の心配をしてくださるのは感謝しますが、そこはにゃべさんはお考えにならなくても、いいんじゃないですか? にゃべさんが最も適任だと判断して動いているのは私ですし、また結果的に無駄に終わるのは、にゃべさんにはご迷惑をかける事になりますが、やはり実際に現場レベルの話を聞いてみないと、わからないというところはあります。
私や弊社としては、元々これが仕事なわけですから、どんな結果になろうと無駄足という事はないと思ってますし、先方のニーズを正しく汲み上げていくためには、こういったやり方でやっていくしかないかなと思っています・・・」
「いや、これなどメールベースの情報だけで、はっきりサーバ寄りの内容である事は明らかでしたが。それぞれ考え方はあるだろうけど、ワタクシの方ではそのような悠長な事をやっている時期ではないのです。今後は、より方向性に近いものを優先して対応していくので、今後はNW系の案件だけに絞って紹介いただくのがワタクシの希望ですな。もちろん、貴社としては私になんの義理も何もないわけだし、ワタクシは自分の方向性を追及するために勝手な事を言っている自覚はあるので
(こんなヤツは、もう面倒みていられん)
といって手を引かれる事があっても、それは仕方がないと思っていますよ」
正直、一生懸命に頑張っているE氏に感謝の念は持っていたが、度重なるズレに付き合わされた結果から
(こんな調子では、いつまで経っても決まらんだろうな・・・)
という諦めで、かなり気持ちの重荷となっていた事実は否めなかっただけでなく、時間的にも資金的にも圧迫され始めてきていた・・・
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