2009/07/26

大恐慌(東京劇場・第8章part3)

200年に一度の大不況」の影響をもろに受けて、まったく仕事が決まらないという事態に直面していた。まだIT技術者になった駆け出しの頃は、半年以上、酷い時は1年近く仕事が決まらないということもあったが、上京してきてからは最悪のケースだ。

 

数ヶ月の間には、事実上決まりかけたものもあった。まだ在籍している時に、知り合いのS社営業U氏の紹介で東証一部の大手SIerのN社の面接に行った。事前面接で単価も提示され、いよいよN本社での面接前には、間に入っているM社の営業からも、単価について

 

「Uさんからは月額x万くらいと聞いていますが、面接前なので再度確認しておきたい」

 

との確認があった。

 

面接は滞りなく済み、当日の夜に

 

「まだ正式ではありませんが、ほぼ決定ということらしいです・・・」

 

という回答が来て

 

「こんなに早くに決まるとは・・・」

 

と、世間の「200年に一度の大不況」を尻目に、安堵していたところだった。

 

ところがその後の数日、待てど暮らせど連絡が途絶えた。

 

「どうなっているんだ?」

 

と突付こうかという矢先に、ようやくU氏から

 

「その後、社内で調整中とかで、正式な連絡はもう少し時間がかかりそうです・・・今から引っくり返るということは、ないだろうとのことです・・・」

 

との連絡があった。

 

ところが、それから数日後

 

「実は・・・大変申し上げ難いことですが・・・N社で社内調整した結果、当初想定していた予算が下りなくてですね・・・10万ほど下げた単金で受けていただけるかどうか、確認してほしいと連絡がありまして・・・」

 

という、詐欺紛いのトンデモナイ話になっているではないか。元々、当初提示された単価が相場価格だったのだから、そこから10万も下がってはまったく話にならないし、なによりそもそもこんなインチキ話が許されるはずはない。相手が以前からの知り合いのU氏ででもなければ、思いっきり怒鳴りつけるところだ。

 

「N社の面接前、わざわざM社の営業から『月額x万くらいで問題ないか?』と聞かれて、それを前提とした面接だったのに、この期に及んで10万も下げるなんて、サギみたいな話じゃないか」

 

「その通りで、本当に申し訳ないですが・・・ただ現実として、N社としては先ほどお話した10万下げた金額しか出ないそうなので、それが無理だったら断るしかない、ということのようです・・・」

 

「無論、断る。金額も合わないが、そんないい加減な相手とは付き合えない・・・」

 

と、即座に断ったことは言うまでもない (-o-)オリャ

 

N社くらいの企業であれば、間違いなくあちこちの下請けに声を掛けてコンペしているだろうから、大方若くて安く叩けるのが見つかったというのが真相であったろう。常識的に考えるなら、N社のような東証一部の大手企業がこのようないい加減なことをするとは、かつてなら信じがたいところだ。が、同じような大手のC社系列のシステムインテグレーターの例や、大手企業の内定取り消しブームを見るまでもなく、この大恐慌を生き抜くためには企業側ももはや形振り構わってはいられない、というのが実情のようだった。

 

また、こちら側からはM社から先は見えなかったから、或いはM社が勝手な見込みで見積もったところが、いざ蓋を開けたら思いもよらず低かった・・・というのが真相かもしれず、真相は闇の中に埋もれていた。

 

この時は、まだ現場に入っている1月だっただけに、腹は立ったもののまだそれほどに深刻さなかった。無論この時点で、この後半年近くも決まらないなどは想像の外である。ところが2月に入って現場を離れ、いよいよ本格的な活動だとなった矢先に、めっきり案件が少なくなった。

 

そうした中、2月後半に久しぶりにU氏からの紹介で、今度はNTT某社の話が舞い込んできた。一時面接をクリア、元請の面接も好感触で進み、ここでもN社の面接の時と同様

 

「どうやら、ほぼ決定のようです」

 

と内定通知が来た。

 

「この後、エンドユーザーのNTT某との顔合わせがありますが、あくまで形式的なもので、ユーザー面接というわけではありません。昨日の元請面接で決まりということで、単金についてはこれから詳細の詰めに入ります」

 

とのことだ。

 

前回の経緯があるため、まだ100%安心はできないが、面接の感触などからしても前回以上の手応えがあっただけに、やはり安心する気持ちもあった。ところが・・・結果は、これも前回と同じように「プロジェクトが延期になった」という、またしてもわけのわからない理由で、消滅してしまったのである。これがケチのつきはじめか、その後は案件そのものがガタ減りとなっていった・・・

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