2017/05/09

ゾロアスター教(3)


●終末論と三徳
ゾロアスター教の歴史観では、宇宙の始まりから終わりまでの期間は12千年とされ、3千年ずつ4つに区切られ「(霊的+物質的)創造(ブンダヒシュン)」、「混合(グメーズィシュン)」、「分離(ウィザーリシュン)」の3期に分けられ、現在は「混合の時代」とされる。

アフラ・マズダーによる「創造」によって始まった「創造の時代」は完璧な世界であったが、アンラ・マンユの攻撃後は「混合の時代」に入り、善悪が入り混じって互いに闘争する時代となる。

ゾロアスター教では、善神群と悪神たちとの闘争ののち、最後の審判で善の勢力が勝利すると考えられており、その後、新しい理想世界への転生が説かれている。

その中で、人は生涯において善思、善語、善行の3つの徳(三徳)の実践を求められている。

人はその実践に応じ臨終に裁きを受け、死後は天国か地獄のいずれかへか旅立つと信じられた。

この来世観は、のちの後期ユダヤ教やキリスト教、さらにはイスラームへも引き継がれた

世界の終末には、総審判(「最後の審判」)がなされる。

そこでは死者も生者も改めて選別され、全ての悪が滅したのちの新世界で、最後の救世主によって永遠の生命を与えられる。

こうした最後の審判や救世主の登場などの教義も、また数多くの宗教に引き継がれた

●自然崇拝的要素
ゾロアスター教は、古代のアーリア人が古くから信仰してきた自然崇拝の宗教を母体としていると考えられ、それを体系化していったのがザラスシュトラであると考えられる。

古代アーリア人の天の神ヴァルナの信仰は、ザラスシュトラらによって道徳的意味を付与され、アフラ・マズダーという宇宙創造の至高神の地位を与えられた

ゾロアスター教においては、火のみならず、水、空気、土もまた神聖なものと捉えられている。

アヴェスター』は、アケメネス朝時代の古代ペルシア語とは異なる言語(ガーサー語、古代アヴェスター語)によって、1,200枚の牛の皮に筆録されていたという。

大部分がアケメネス朝滅亡の際にいったん失われ、後のパルティアの時代とサーサーン朝の時代に補修と復元が試みられた。

3世紀のサーサーン朝時代、当時の中世ペルシア語(パフラヴィー語)への翻訳がなされ、以後、正典として『ゼンダ・アヴェスタ』と称された。

『アヴェスター』は、イスラーム時代にその約4分の3が失われたと伝えられており、教義の詳細や教団組織の全容を解明することは難事である。

ただし「ガーサー」に示された最後の審判天国と地獄などの終末論的世界観が、後期ユダヤ教やキリスト教に影響を与えたことは確かであり、さらに死者にとって最後の結界の場である「チンワト橋(英語版)」を教義のなかで設定していることは、仏教における「転生」思想の形成プロセスを考慮する上でも、非常に示唆に富むできごとといえる。

総じて、創造神であり最高の善神であるアフラ・マズダーへの信仰に基づく、究極の善悪二元論としての神義論の思想で首尾一貫している啓典であるといえる。

また、古代メソポタミアや古代エジプト、古代ギリシャの信仰が失われてしまっている今日、ゾロアスター教はヒンドゥー教とともに、現存する世界最古の体系的宗教、経典宗教ということができる。

●歴史
ゾロアスター教の開祖といわれるザラスシュトラの活動やゾロアスター教の成立に関しては、今なお不明なところが少なくない。

イラン高原北東部に生まれたザラスシュトラは、従来インド・イラン語派のなかで信じられてきた信仰に、善と悪との対立を基盤に置いた世界観を提供し、極めて倫理的な性格をもつ宗教に改革したといわれる。

ザラスシュトラ以前のアーリア人(インド・イラン語派)の信仰においても、すでに「三大アフラ」として叡智の神アフラ・マズダー、火の神ミスラ、水の神ヴァルナが存在していた。

そのため、単にアフラ・マズダー、またはミスラを信仰しているというだけでは、厳密にいえばゾロアスター教徒とはいえない。

異教時代」と呼ばれる過去のイラン人と区別するための判断基準は、ゾロアスター教の信仰告白であるフラワラーネに表れている。

そこでは、次の5つの条件が挙げられる。

  (1)アフラ・マズダーを礼拝すること
  (2)ゾロアスターの信奉者であること
  (3)好戦的で不道徳な神ダエーワと敵対すること
  (4)アフラ・マズダーが創造した、偉大な7つ(ないし6つ)の存在アムシャ・スプンタ(「聖なる不死者」)を礼拝すること
  (5)全ての善をアフラ・マズダーに帰すること

この5つに加え、さらにアフラ・マズダーを創造主と捉えたことが、従来のインド・イランの信仰と著しく異なる。

ゾロアスター教は紀元前1千年紀の前半、イラン東部からアフガニスタンを含む中央アジアの西部で成立し、その後、アケメネス朝の時代にはイラン高原にも浸透するようになっていたと推測される。


ゾロアスター教においては、世界は光明をつかさどる善神のアフラ・マズダーと闇の世界を支配する悪神アンラ・マンユの闘争の場と見なされ、火はアフラ・マズダーの象徴として特に重視された。
Wikipedia引用

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