村上春樹『1Q84』で、この作品が重要な要素として登場するらしい。
そんな影響もあって、世間では『シンフォニエッタ』を収録したCDが、クラシックとしては異例なほど売れているとか。一般的には、どう考えても売れるような作品ではないので、作曲者のヤナーチェクもきっと驚いていることだろう。
大オーケストラのための『シンフォニエッタ』は、当初は「軍隊シンフォニエッタ」や「ソコルの祭典」と呼ばれていた。ヤナーチェクがソコル体育協会の参事会員であったことから、この協会のためのファンファーレとして作曲された、とも言われている。
ヤナーチェクは
「勝利を目指して戦う現代の自由人の精神的な美や歓喜、勇気や決意といったもの」
を表現する目論見から本作を作曲し「チェコスロバキア陸軍」に献呈する意向を持っていた。ヤナーチェクは、友人カミラ・ストスロヴァーとともに野外コンサートで吹奏楽を聴き、それによって自作の『シンフォニエッタ』の開始楽章の霊感を得たのである。
ソコル体育祭の実行委員が依嘱作品を打診してきた時、ヤナーチェクは『シンフォニエッタ』の素材を展開しているところであった。その後、ヤナーチェクは「軍隊シンフォニエッタ」の題名から「軍隊」の文字を削ぎ落とした。
プラハ初演は《グラゴル・ミサ》と同じくヴァーツラフ・ターリヒの指揮により、1926年6月26日に行われた。作品は結局、イギリスにおけるチェコスロバキア音楽の紹介者で、ヤナーチェクの擁護者であったローザ・ニューマーチに献呈された。
シンフォニエッタは、元来「小交響曲」といったほどの意味があるが、本作は元々軍楽として構想されたためもあり、伝統的なソナタ形式やロンド形式は斥けられており、交響曲としての性格は失われている。しかしながら、本作はヤナーチェク独自の堅固な構成の典型例となっており、各楽章の素材は冒頭の動機から導き出されていく。
ヤナーチェクの『シンフォニエッタ』で目立っているのは、金管楽器のみで演奏される最初のファンファーレを基礎とした、いくつかのヴァリアンテである。
●各楽章と副題
以下の5つの楽章から成り、全曲を通して演奏すると20~25分程度を要する。各楽章には、当初は描写的な副題が添えられていたことから、標題的な意図のあったことが察せられる。
「ファンファーレ」:アレグレット Allegretto、変ニ長調、4分の2拍子
「城(ブルノのシュピルベルク城)」:アンダンテ Andante、変イ短調、8分の4拍子
「修道院(ブルノの王妃の修道院)」:モデラート
Moderato、変ホ短調、2分の2拍子
「街頭(古城に至る道)」:アレグレット Allegretto、変ニ長調、4分の2拍子
「市役所(ブルノ市役所)」:アンダンテ・コン・モート~アレグレット Andante con moto — Allegretto、変ニ長調、4分の2拍子
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