「これをお部屋の壁のモジュラーに、差し込んでいただけないでしょうか?」
と、小さなテスターのような機器を差し出した。
「え?
もう直ったんじゃないの?」
「まだ確実とは言えませんので、念のためお願いします」
作業者から手渡された、モジュラーを検査する器具のような物を差し込む。そうこうしているうちに、いつの間にか枝豆が茹で上がり、ザルに空けたタイミングで管理会社から電話が掛かって来た。
「先ほどXに確認をいたしましたところ、にゃべ様のおっしゃるように、私どもの機器が故障している事がわかりました。先にも申し上げましたように、Xからは故障の連絡などは来ておらず、私どもの方ではにゃべ様からお聞きして初めて知ったような次第でして、それでXの方には直ぐにも機器を交換するよう指示をいたしました」
「それで・・・いつ交換するの?」
「それに関してですが、機器を交換するに当たって同じ機種のものがあるかどうかまず在庫を確認し、在庫があれば直ぐにでも交換する手筈となっております・・・ただ申し訳ありませんが、万一在庫がない場合は取り寄せとなりますので、しばらくお時間をいただく事になりますが・・・」
「まだ、そんな寝惚けた事を言ってるのか。機種など何でもよくて、一番大切なのはネットに繋がるようにする事じゃないのか?
どうしても同じ機種で揃えたいなら、手配できるまでの間だけ暫定的に別の物を代用するとか、ちゃんとユーザーの事を考えて対応してくれなきゃあ困るよ」
「仰る通りですが、取り急ぎ今の状況をご説明しておきますと・・・先に、にゃべ様から状況をお聞きしまして、今すぐに機器の手配が出来ない現状でして、なんとか回線が繋がるように出来ないものかと検討した結果、今の故障したハブに繋がった配線を一時的に別のものに付け替えるという・・・」
「その話は今、ここに来ている作業者に訊いてるし、やって貰ってるよ。それが上手く行けば、暫定的には問題ないわけだが・・・」
取り敢えずは今の作業の様子を見て、改めて連絡すると言う事になったが、こうしたやり取りをしている間に、またしても接続が切れていた。
ムカムカしながら枝豆を食べていると、またしてもインターホンが鳴った。
「また切れてるじゃん・・・一体、何やってんだ?」
「え?
もう切れてますか・・・?
申し訳ございません・・・今、色々と切り分けをしているところでして・・・」
ところで家の冷蔵庫には、いつものように保冷パックに入れて仕事場に持っていくために、ペットボトルのお茶が冷やしてあった。
(折角だから、汗ビッショリになって頑張っている、あの作業員の帰りに持たせよう。ただし、あくまで上手く直したらだが・・・)
などと考えていたが、いつの間にかもう一人増えていたので、慌ててもう一本を冷凍室に入れて冷やし始めたのが、少し前だった。またその頃、関東地方に上陸すると言われていた台風がいよいよ迫って来たか、突如として猛烈な大雨が降って来ており
(この雨の中を、昨日みたいに自転車でネットカフェに通うのは、冗談じゃねーぞ・・・こうなりゃ、直すまでは帰すものか・・・)
という気持ちにもなっていた。そうしてまたしばらく、時折繋がったかと思うとまた切れたりという繰り返しが何度か続き、その度にインターホンから
「今、どんな状況でしょうか?」
という確認が入った。
(あれだけ配線を切り替えたりした結果、繋がったり繋がらなかったりというのは変だな・・・なにか実験をしているのか、或いはやはりモジュラーが逝かれているのか・・・)
などと考えながら、コンビニで買ってきた弁当を温め、さあ食べようという段になって、あたかもタイミングを見計らったかのように、インターホンが鳴った。
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