http://noexit.jp/tn/index.html 引用
いきなり、なんの脈絡もなく。
自分が世界に存在していることに気付き、わけもわからず生き続ける人間。
「この世界って、いったいなんなの?」
驚き、疑問、猜疑、不安・・・この不安定な人間の精神に答えを与えてきたのが「神話」であり「宗教」である。
けれど、世界中の「神話」を集めてみたら
「みんな言ってること違うじゃん!
嘘つき、ウソツキ!」
ということに人間は気付いてしまった。
なので仕方なく、自分の頭で考え悩み始めたのが、哲学の始まりである。とはいうものの・・・人類史上、最初の哲学なのだから、歴史もなんにもありゃしない。何をどうやって考えるべきか、それすらわからない。じゃあ最初の哲学者たちは、どうやって物を考え始めたのか・・・ちょっと、当時の人の気持ちになってみよう。
取りあえず見渡せば空があって、山があって、森があって、動物がいて・・・とにかく「果てしなく自然ばっかり」である。なんで、そんなものがあるのか、さっぱりわからない。でも、なんだかわからないと言いつつも、よくよく観察すると、何かしらの規則があるように思える。太陽が昇れば暖かくなるし雲が増えれば雨が降るし、一定期間で作物は育つ。
「作物がなぜ育つのか?」なんてことも、さっぱりわからない。一応「作物の神様がやっているから」と「神話」では言っているが、どうやら水を与えなければ作物は枯れてしまうようだ。なんで、作物に水をやらなきゃだめなのか・・・なんてことは知らないが、やらないと枯れてしまい、枯れたら食いっぱぐれて死んでしまう。
要するに「作物は水で成り立っている」という自然の知識ひとつとってみても、その知識のあるなしが生死に直結してしまう。当時の人にとって自然は脅威的な存在であり、死活問題だった。だから、当時の人たちの一番の関心事は「自然」であると言えた。そんなわけで最初の哲学者たちは、まず自然を観察するところから始めた。
「自然って、一体、どんな仕組みで成り立っているの?」
という問いかけをしたわけだ。こうした哲学者を「自然哲学者」と呼ぶ。
歴史上、一番初めの哲学者たちは、まず身の回りの自然をしっかり観察した上で「万物(自然)の根源」を見つけ出そうとした。そして、色々な人がこの問題に挑み「水だ」、「いや、空気だ」「いや、数だ」と言ってきたわけだが、その中で「火だ」と言ったのがヘラクレイトスという哲学者であった。
B.C.600年、タレスの「万物の根源は水である」から始まった哲学史。それから、100年もの間、色々な哲学者が「万物の根源は何か?」と問いかけ続けてきた。
そして、B.C.500年。ついに、哲学史において、偉大な巨人が現れる。それが、ヘラクレイトスである。
万物は流れ去る
と、ヘラクレイトスは高らかに宣言した。
彼の洞察は、本質を突いている。国がある、人間がある、木がある、石がある・・・が、そんなものは、何百年も経てば消え去ってしまう。
「全ては変化し続け、永遠に不変の存在などありはしない」
諸行無常・・・
それこそが「万物の絶対の法則」であると、ヘラクレイトスは考えた。
ヘラクレイトスによれば「人間が見ているものは、変化しているうちの一瞬にすぎない」のに「人間は、その一瞬を固定的で不変的なものと見なしている」として「人間は愚かだ」と厳しく指摘する。そして、ヘラクレイトスはさらに深く考える。
「上り坂も下り坂も、1本の同じ道である」
「生と死は同じである」
そもそも、それまでの世界観では「光」と「闇」は別々の存在だった。「光」という存在「闇」という、相反する存在の戦い・・・だが、ヘラクレイトスの洞察によって、初めて「光と闇は同じ現象」だと見抜かれる。
「光が減れば闇になる。闇とは、光が少ない状態にすぎぬ」
なにも『闇』が『光』を押しのけて、そこに『闇』を作り出しているわけではないのだ。だから『光と対立する闇』なんてものは、本当は存在しないのである。光と闇とは、ひとつの現象が変化した状態に過ぎず、元々は同じもので区別するのは人間の勝手な解釈だ。だから「昼と夜」、「生と死」、「神と悪魔」、「愛と憎しみ」、「善と悪」・・・そういったものも、別々の存在ではなく同じものが変化した姿だとヘラクレイトスは考えた。だから愛のみを選んで憎しみを捨てようとか、善だ悪だと大騒ぎする、そういう人間たちをヘラクレイトスは「愚か者」と見下していた。
では、そういう変化を起こしているものは、一体なんだろうか?
ヘラクレイトスは「変化を引き起こしているのは『ロゴス(摂理、法則)』である」と述べている。ヘラクレイトスの洞察はどれも重要だが、哲学史において最も重要なのは「ロゴス(法則)」という概念を打ち出し「神による世界説明を完全に捨て去った」ことである。
「世界は神が創ったものでもなければ、誰が創ったものでもない。
世界とは、ロゴス(法則)によって決まったぶんだけ燃え、ロゴス(法則)によって決まったぶんだけ消える。永遠に変化しつづける『生きる火』なのだ」
ところで、このヘラクレイトス。実は、王族の出身で支配階級の人だったらしいが「民衆がバカで嫌い」だったため、兄弟に地位を譲ったという逸話がある。真偽のほどはわからないが、とにかく彼が人間嫌いで山で隠者のように暮らしていたことは確かだ。そして彼に言わせれば、他の哲学者の考えなんて「幼稚で子供騙し」にすぎなかった。彼は徹底的に他人をバカにし、見下していた。だからこそ、当時の世界観を打ち砕くような斬新な哲学が生まれたのかもしれない。
ちなみに、彼は病気になっても医者までバカにして追い払っていたので、
最後はxxxまみれという惨めな死体で発見される。この偉大なるひねくれモノの洞察は、後世の哲学者たちに大きな影響を与えた。
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