ギリシア語:アポロン(Apollon)、ラテン語:アポロ(Apollo) 、英語:アポロ(Apollo)
「ポイボス(輝きの)アポロン」と呼ばれ、女神アテネと共に古代ギリシャ人に最も愛された神。ホメロスの叙事詩『イリアス』では、疫病の矢をギリシャ軍に雨あられと射掛けてくる「恐ろしい神」として登場するが、これはトロイにあったアポロンの神官の願いに応じたものである。ギリシャ軍にとっては恐ろしかっただろうが、トロイ勢にとっては信義に厚い頼もしい神であった。「信義」という面では、神々の中でもっとも強い面を見せているが、冷静・沈着であることも傑出し、引かなければならないところでは決断も早い。
アポロンは、戦場にあって存分の働きを見せる一方、天上の神々のパーティーにあっては竪琴を奏で、皆を楽しませる好男子として描かれている。彼には「文芸の女神ムサイ姉妹」が付き従い、彼の竪琴に合わせて美しい歌声を響かせている。
一般にアポロンというと「予言の神」という性格が強く語られ、彼の聖地「デルポイ(現代発音でデルフィ)」は、古代にあって最も栄えた場所の一つであった。ギリシャ悲劇では『オイディプス王』で知られ、歴史時代に入って哲学の世界ではソクラテスに哲学の道に入らせた神として知られ、歴史的にはサラミスの海戦でギリシャに勝利をもたらした神託は、重要かつ有名となっている。
逸話として有名なものは、彼の聖なる樹木となっている「月桂樹」のいわれがある。その物語は、アポロンが河の神の娘であった妖精ダフネに恋をして彼女を追うが、純朴な彼女はそれを避けて逃げる。とうとう河のほとりまで追い詰められたところで、彼女は父なる河の神に必死で願いをかけた。アポロンは、恋するダフネをその腕に抱けるものと抱き締めるが、彼の抱いたものは一本の樹木であったという。ダフネは、月桂樹に身を変えられていたのだった。それ以来、アポロンは、その月桂樹を自分のシンボルの木とした。それゆえ、アポロンの聖地デルポイでの競技会の勝者は、月桂樹の冠を頂くことになった。
彼には、もう一つデロス島という重要な聖地があった。ここもデルポイ同様、古代ギリシャの歴史的最重要地となっている。この島は彼の生誕に関わっており、彼の母女神レトがアポロンとアルテミス女神を身ごもった時、ヘラに憎まれて「出産の地」を奪われて苦しんでいた時、当時浮き島であったデロス島がその出産のための土地を提供したおかげで、レトは子供を産むことができた。それ以来、この島は大地とつながり、アポロンの聖地として敬われることになったという。
アポロンのシンボルは「竪琴」であるが、使い鳥として「鴉」がおり、この鴉はもともと白かったのに黒くなってしまった所以が、コロニスの伝承において語られている。
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