アポローン(古希: ΑΠΟΛΛΩΝ, Ἀπόλλων, Apollōn)は、ギリシア神話に登場する男神。オリュンポス十二神の一人であり、ゼウスの息子である。詩歌や音楽などの芸能・芸術の神として名高いが、羊飼いの守護神にして光明の神でもあり、イーリアスにおいてはギリシア兵を次々と倒した「遠矢の神」であり、疫病の矢を放ち男を頓死させる神であるとともに病を払う治療神でもあり、神託を授ける予言の神としての側面も持つなど、付与された性格は多岐に亘る。
もとは小アジアに起源をもつ神格で、本来は繁茂する植物の精霊神から転じて牧畜を司る神となったという説や、北方の遊牧民に起源を求める説など、アポローンの出自については諸説あり、複数の神格の習合を経て成立したものとも考えられている。古典期のギリシアにおいては理想の青年像と考えられ、また、ヘーリオス(太陽)と同一視されるようにもなった。
推定される原音に近づけて、その名をカナ転写すればアポルローンとなるが、日本語のカタカナ表記ではアポローン、または長母音を省略してアポロンとするのが通例である。
古典期のアポローンは主神ゼウスとレートーとの息子であり、アルテミスとは双生児である(ギリシャ神話では姉、ローマ神話では妹とする説もある)。オリュンポス十二神には、(諸説があるが)ほぼ確実に名を連ねる。古くから牧畜と予言の神、また、竪琴を手に執る音楽と詩歌文芸の神であった。光明神の性格を持つことから、前5世紀には時としてヘーリオスと混同されて太陽神とされ、ローマ時代にはすっかり太陽神と化した。聖獣は狼および蛇、鹿で、聖鳥はヒュペルボレオイの国から飛来する白鳥および、鴉、雄鶏、鷹、禿鷹で、蝉もアポローンの使いとされる。聖樹は月桂樹、オリーブ、棕櫚、御柳。また、イルカ(デルピス)との関係も深く、イルカの姿に変身したという神話からデルピニオスとも呼ばれ、「デルポイ」という地名はここから来ているともいわれる。(デルポイは「子宮」を意味するデルピュスが語源という説もある)
また、あらゆる知的文化的活動の守護神とされ、詩神ムーサイを主宰するとともに、オルペウス教の伝説的開祖である詩人オルペウスの父親ともされる。一方、人間に当たれば苦痛なく一瞬で即死する金の矢を武器とし、姉(妹)神アルテミスとともに「遠矢射るアポローン」として疫病神の性格を持ち、転じて医術の神としても信仰された。医神アスクレーピオスがアポローンの子とされるのは、そのためである。このように、アポローンの性格は理性的であると同時に、人間を地上に向かって放った矢から広がる疫病で虐殺したり、音楽の腕を競う賭けでサテュロスの1人マルシュアースを生きたまま全身の皮膚を剥いで殺すなどの冷酷さ、残忍さをも併せ持っている。腕力も強く、イリアスではアカイア勢の築いた頑強な城壁を素手で軽々と打ち砕いて崩壊させている。ボクシングを創始した神としても知られる。
中道や節度を重んじる神でもあったが、その言動は節度を守っているとは言いがたい点が多く、アルテミスにその点を指摘されたこともある。が、アポロンは「私は万事に節度を守って控えるようにしている。「節度を守って控えること」それ自体も節度を守って控えるようにしている」と機転というより詭弁で返している(この規律にとらわれない柔軟性も、アポロンが好かれる一因であった)。
フリードリヒ・ニーチェは、理性をつかさどる神として、ディオニューソスと対照的な存在と考えた(『悲劇の誕生』)。
アスクレーピオス
アスクレーピオスは、テッサリアのラーリッサ領主の娘コローニスとアポローンの子。アポローンとコローニスの伝令であった鴉の讒言によって、アポローンは嫉妬に駆られ彼女を射殺した。しかしすぐに後悔し、彼女の胎児を取り出してケンタウロス族の賢者ケイローンにアスクレーピオスを預けた。医術の神の血を引く彼は、やがてすぐれた医術を獲得するに至り、人を救うことに熱心だったが、やがて死者をも蘇らせることになったので、冥府の神ハーデースはゼウスに、この不条理を訴えた。そのためアスクレーピオスは、ゼウスの雷霆に撃たれて死に、天の神とされて神格化されたとされる。そして、アスクレーピオスと鴉は、共にへびつかい座とからす座として天に掲げられた。
ダプネー
ダプネー (Daphnē) は、テッサリアの河神ペーネイオスの娘である。大蛇ピュートーンを矢で射殺したアポローンが、帰途偶然出会ったエロースと彼の持つ小さな弓を馬鹿にしたことから、エロースはアポローンへの仕返しに、黄金の矢(愛情を芽生えさせる矢)でアポローンを撃ち、鉛の矢(愛情を拒絶させる矢)でダプネーを射た。このため、アポローンはダプネーに愛情を抱いたが、ダプネーはアポローンの愛を拒絶した。
エロースの悪戯によって、アポローンは彼女を奪おうと追いかけ続け、ダプネーも必死に逃げ続けた。しかしダプネーの体力が限界に近づき、ついにはペーネイオス河畔に追いつめられたため、ダプネーは父ペーネイオスに祈って助けを求めた。追いつめたアポローンがダプネーの腕に触れかけた時、娘の苦痛を聞き入れたペーネイオスにより、ダプネーは月桂樹に身を変じた。失意のアポローンは「せめて私の聖樹になって欲しい」と頼むと、ダプネーは枝を揺らしてうなずき、月桂樹の葉をアポローンの頭に落とした。この故事により、デルポイのピューティア大祭で行われる競技の優勝者には、月桂冠が与えられることになった(ダプネー Δάφνη は「月桂樹」という意味の普通名詞)。
※Wikipedia引用
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