弦による優雅な主題に乗りテノールが歌う。中間部では聖体拝領唱(Communio)から「Lux aeterna」の部分が挿入され、幻惑的な転調をみせる。クライマックスでは、第1曲『入祭唱』の冒頭部分が再現される。
「アニュス・デイ」はラテン語で「神の小羊」の意味で、平和を祈る賛歌。ヨハネ福音書1:29に基づき、これを拡充した。
こんなにも天国的に美しい音楽を作曲した作曲家は教会のオルガニストもしていたと聞けば、信心深い敬虔なクリスチャンだったと誰しもが思うかもしれない。ところが現実は大違いで、若い頃のフォーレは夜遊び大好き、酒、タバコ大好き、さらには女性も大好きという、とても現世的な男だった。件のオルガニストの仕事も、夜遊びが過ぎて朝の勤めに着替えが間に合わず、エナメルの靴と白いネクタイのままオルガンを演奏してクビになった、というエピソードも残っているくらいである。
また女性遍歴も華やかなもので、極めつけはドビュッシーの奥さんに子供を産ませた挙句、ドビュッシーはフォーレの隠し子とは知らず、ずっと自分の子と信じて育てていた、などという信じがたいようなエピソードまで残っている。
かくも世俗的な人間の手から、このような天国的な音楽が生み出されたのというところが、芸術の不思議さと言えるのかもしれない。
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