2006/03/16

フォーレ レクイエム(サンクトゥス(Sanctus)&ピエ・イェズ(Pie Jesu))

 


フォーレは

「私のレクイエムは、特定の人物や事柄を意識して書いたものではありません。あえていえば、楽しみのためでしょうか」

 

と書いている。またマドレーヌ寺院での初演では、寺院の司祭から斬新過ぎると叱責されたらしい。このほか、当時から「死の恐ろしさが表現されていない」、「異教徒的」などとの批判が出された。

 

弦とハープの分散和音、ヴァイオリンのオブリガートに伴われ、ソプラノとテノールが互いに歌い交わしながら、感動的なオザンナの部分に達する。

 

3曲『サンクトゥス』(Sanctus)は、ラテン語で「聖なる」の意味。

「聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな、万軍の主よ。天と地はあなたの光栄にあまねく満ち渡る。天のいと高きところにホザンナ」

 

神への感謝を捧げ、その栄光を称える賛歌。東方教会に起源をもつ祈祷で、典礼文はイザヤ書から取られる。冒頭でサンクトゥスを三回唱えるので、和訳では「三聖頌」とも言う。ちなみに「Hosanna (ホサンナ)」はヘブライ語の音訳で、原義は「救いたまえと(我らは)祈る」



4曲『ピエ・イェズ(Pie Jesu)』

ソプラノ独唱。オーケストラは独唱の余韻のように寄り添う。

「愛にあふれたイエスよ、彼らにやすらぎを与えてください」という意味の祈り。

 

この作品は、よく聞くと音楽の雰囲気はとても天国的だが、そのスタイルはカソリックのお約束からはかなり逸脱していることに気づく。まず誰でも分かるのは、レクイエムの核とも言うべき「怒りの日」が含まれていないこと。さらに、これに続いて最後の審判が描かれ、涙の日へとなだれ込んで行く部分もバッサリとカットされていまる。

 

楽曲構成は、第4曲「ピエ・イェス」を中心とした対称的な配置が認められる。「ピエ・イェス」は、残されているスケッチの最も早い段階から姿を見せており、構成的にも音楽的にも全曲の核と見てよい。また各曲では、幾つかの「動機」が共通して使用され関連づけられている。

 

演奏にあたっては、どの稿を使用するかということと同時に「ピエ・イェス」の独唱について、女声ソプラノにするかボーイソプラノにするか、あるいは合唱については、女声合唱と少年合唱のいずれかという選択がある。当時のマドレーヌ寺院の合唱団には女性が加わることが許されていなかったため、合唱は男声合唱と少年合唱で歌われ「ピエ・イェス」もボーイソプラノを意識した音域で書かれた。しかし、演奏面からボーイソプラノには難しいという指摘もあり、フォーレ存命時の演奏会でもソプラノ独唱が「ピエ・イェス」を歌っていたことから、どちらが「正しい」という決着は困難となっている。教会風の雰囲気を尊重する場合には、ボーイソプラノ及び少年合唱、演奏会での表現性を重視する場合は女声ソプラノ及び女声合唱という選択になる。

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