WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)で、日本がメジャー選手を要する国々を抑えて、見事な優勝を果たした。
日本代表にとって、優勝まではまさに茨の道のりだった。1次リーグプールAの最終戦となった韓国戦では、2-1とリードしながら8回に石井が逆転2ランを浴び、まさかの敗戦。続く2次リーグ1組の初戦では「疑惑の判定」でアメリカに敗れ、さらに最終戦ではまたもや韓国自慢の投手陣に抑え込まれた上、頼みの藤川が打たれ2-1で敗れた。
特に「格下」の韓国には、一次リーグで敗れ
(よもや連敗する事はないだろうし、それは絶対に許されない)
と信じていただけに、この連敗のショックは日本にとっては途轍もなく大きかった。代表チームのリーダー・イチローも
「我が野球人生最大の屈辱・・・」
と吐き捨てたと言われた。
結局2次リーグは1勝2敗となったこの時点で、日本の決勝ラウンド進出は絶望的・・・と、誰しもが思ったのは無理からぬところところだったが、アメリカがメキシコに敗れるという波瀾が起こり、予想外のタナボタでなんとか準決勝に進む道が拓かれる。
そして準決勝の相手は、またしても因縁の韓国だ。バリバリのメジャーリーガーを揃えた韓国チームとはいえ、考えもしなかったよもやの二連敗を喫しているだけに、ここで負けてさらに恥の上塗りをするような事であれば、全選手が切腹モノである。
そんな重苦しい状況の中で、これまで二試合同様に息の詰まるような投手戦が続く。6回まで両チーム無得点のまま緊迫した展開が続いたが、そんな嫌なムードを断ち切ったのが、これまで不振に喘いでスタメン落ちしていた福留だった。
ゲームが動いたのは7回。二塁打の松中を置いて、代打で登場した福留が追い込まれながら、ライトスタンドに見事なまでに美しい放物線を描いた。
この一発で完全に目が覚めた日本は、里崎のツーベース、代打・宮本のタイムリー、そしてイチローにもダメ押しのタイムリーが生まれるなど、これまでの鬱憤を一気に晴らすかのように打線が大爆発し、大量5点を一挙に捥ぎ取る。さらに8回にも多村のソロが飛び出し、仇敵韓国に6-0と快勝した。
この間の経過は得点ばかりでなく、非常にドラマティックであった。
0-0の緊迫した場面で、バントに失敗した多村を代打で登場した福留が2ランで救うと、HRで頭に血が昇った韓国投手が明らかに意図的な小笠原へのデッドボールを見舞い、騒然となったところで里崎が冷静にツーベースでホームに還す。さらに長年に渡り、代表チームを引っ張って来た功労者の宮本を代打で起用する王采配に応え、見事なタームリーで宮本がダメを押せば、続いて千両役者のイチローがあたかも精密機械で計ったような、ダメ押しのダメ押しとなる芸術的な流し打ちのタイムリーを放つなど、どれもが絵に描いたような惚れ惚れとする攻撃の展開だった。
この攻撃の総仕上として圧巻だったのは、バント失敗で一旦は「A級戦犯」になりかかった多村の、右中間最深部へ放り込んだ豪快なホームランである。しかしながら何と言ってもこの勝利の立役者は、先発した上原に尽きるだろう。7回を投げて3安打、8奪三振、無四球とまったく危なげのない投球で、86球中68ストライクという驚異的なコントロールの良さと千切っては投げというテンポの良さが、待望久しかったジャパン打線爆発の呼び水となったのは間違いない。
イチローも言っていた通り、日本が韓国に勝つのは当たり前の事で歓んでいる場合ではないし、ましてや予選で2連敗をした事実は消えるものではない。
日本のプロ野球と韓国のプロ野球を比較して、全体として見れば日本のプロ野球の方がまだまだ数段レベルが高いのは間違いないが、代表レベルのトップ層だけに限れば韓国だけでなく、メジャーに選手を送り込んでいるような国であれば、どこもそれほどの差はないと見るべきだろう。それは日本を始めキューバやドミニカ、アメリカ、韓国、ベネズエラ、メキシコなどの絡んだ、どの試合もがどちらに転んでもおかしくないような接戦ばかりだった事からも明らかである。
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