http://www.geocities.jp/timeway/index.html
クレタ文明は前15世紀には滅びた。理由はよくわからないがアカイア人の南下が原因ともいわれている。遅れて南下してきたドーリア人と合わせて、彼らがギリシア人となった。クレタ文明の滅亡と前後して、アカイア人がミケーネ文明をつくった。この文明は、辺境国家といった方がいいくらい規模は小さい。ギリシア本土のミケーネ、ティリンスという町が中心である。まだ青銅器文明の段階で、国家は後のギリシア文明のような民主的なものではなく、専制的だったと言われる。
トロヤ文明は、前2600年位から存在しており、小アジアのトロヤが中心。これも青銅器段階で国家は専制的、民族系統は不明。ミケーネ文明もトロヤ文明も、前1200年頃滅んだ。同じ頃、ヒッタイトが滅び、エジプト新王国も「海の民」という謎の集団に襲われ弱体化している。民族移動など、大規模な変動があったのだろう。
この二つの文明は文明そのものよりも、発掘した人によって有名となった。それがドイツ人のシュリーマン。1870年代に、この二つとも発掘した。彼は幼い頃から、寝物語にいつもギリシア神話を読んでいて、大好きなのがトロヤ戦争の話。大人になったら絶対にトロヤの町を見つけようと子供心に決意した。当時はギリシア神話はあくまで神話であって、ホントにトロヤ戦争があったとか、トロヤの町があったなんて誰も考えていなかったが、シュリーマンは若いころから働きに働いて商売で大成功して資金を貯め、50歳近くなってから私財を投じて自力で発掘を始めた。
周囲の人たちは馬鹿だねえと思っていたろう。浦島太郎の話を信じて、竜宮城を探すようなものですな。ところが、彼は発掘してしまった。トロヤの遺跡だけではなく、トロヤ戦争の物語でトロヤに攻め込んだことになっている、ギリシア本土のミケーネの遺跡まで見つけてしまった。そのシュリーマンは『古代への情熱』という自伝を出している。
トロヤ戦争
シュリーマンが信じた、トロヤ戦争の話の発端が面白い。テティスという女神がペーレウスという人間の男、ギリシアの王の一人と結婚するところから始まる。女神と人間の結婚だから、披露宴は大賑わい。神々も出席するし、ギリシアの主だった王様たちもやってくる。大いに盛り上がっていたが、一人だけ宴会に呼ばれなかった女神がいた。嫉妬と争いの女神エリスであった。エリス女神は、披露宴に呼ばれないことに嫉妬してしまった。
腹を立てた彼女は、披露宴に争いを持ち込んだ。何をするかというと、宴会場に黄金のリンゴを投げ込む。突然、宴会場に転がり込んできた黄金のリンゴを取り上げてみると、そこにはこんなふうに書いてある。
腹を立てた彼女は、披露宴に争いを持ち込んだ。何をするかというと、宴会場に黄金のリンゴを投げ込む。突然、宴会場に転がり込んできた黄金のリンゴを取り上げてみると、そこにはこんなふうに書いてある。
「最も美しい女神へ」
「そのリンゴは、私が貰う権利がある」と、三人の女神が名乗りをあげる。「私が一番美しい」と三人の女神は大喧嘩を始めてしまい、宴会は滅茶苦茶になってしまった。
三人の女神は、こんな顔ぶれだ。まずは女神ヘーラー。主神ゼウスの妻で、女神の中では一番偉い。世界の支配を司りる。次がアテナ、戦いの女神、最後がアフロディーテー、美の女神。
「私は美しい」と、喧嘩するが決着がつかない。そこで三人はゼウスのところに行って「誰が一番きれい?」と聞くが、ゼウスも困った。思ったことを言って、残りの二人に恨まれたら堪らない。そこで、ゼウスは「美の判定者」を指名し、その人物に最も美しい女神を決めさせることにした。「美の判定者」とされたのは羊飼いの少年パリス、これは人間。ここまで来ると、女神たちは意地でも「美しい」といわれて、黄金のリンゴを手に入れたい。女神たちはパリスのところに行き、買収工作をした。
「私は美しい」と、喧嘩するが決着がつかない。そこで三人はゼウスのところに行って「誰が一番きれい?」と聞くが、ゼウスも困った。思ったことを言って、残りの二人に恨まれたら堪らない。そこで、ゼウスは「美の判定者」を指名し、その人物に最も美しい女神を決めさせることにした。「美の判定者」とされたのは羊飼いの少年パリス、これは人間。ここまで来ると、女神たちは意地でも「美しい」といわれて、黄金のリンゴを手に入れたい。女神たちはパリスのところに行き、買収工作をした。
ヘーラーは、一番にしてくれたら「世界の支配者にしてあげる」
アテナは「あらゆる戦での勝利があなたのものに」
アフロディーテーは「人間の中で一番の美女をあなたの妻に」
この辺り、ギリシア人の人生観が垣間見え最高に面白い。そして、パリスは美女を選択した。世界の支配よりも、勝利よりも「美」というのが、ギリシア人らしい。彼らの残した彫刻を見ると、つくづくそう思う。
さて、最も美しい女神はアフロディーテーで決着。彼女は、約束通り最高の美女をパリスに与える、それが人妻だった。ギリシアはスパルタ王メネラーオスの妻ヘレネーだ。パリスはアフロディーテーの手引きで、彼女を攫って自分の妻とした。パリスは、実はトロヤの王子だった。妻を攫われたメネラーオスは怒り、妻を取り返すため、兄のミケーネ王アガメムノーンに助力を頼んだ。アガメムノーンは全ギリシアの盟主。彼の号令で、全ギリシア軍が出動する。海を渡ってヘレネーを奪い返すため、トロヤに攻め込んだ。これがトロヤ戦争。
ギリシア軍の中には、ギリシア随一の戦士アキレウスもいた。アキレウスは戦争の発端となった宴会の主役女神テティスが、人間との間に生んだ子である。テティスは死すべき定めにある人間の息子を不死身にするために、生まれたばかりのアキレウスを不死の泉に浸けた。その時、テティスはアキレウスの足首を掴んでいたため、そこだけが不死の泉に浸からず、彼の唯一の弱点となる。これがアキレス腱。そのアキレウスも、すっかり成長してこの戦争に参加した。
こんな話を信じ、トロヤを発掘しようとするしたシュリーマン。ミケーネの遺跡からは黄金の仮面が出土していて、これは「アガメムノーンのマスク」と呼ばれている。このトロヤ戦争が始まって10年目、戦争の最終段階をアキレウスを主人公に描いたのが、ホメロスの叙事詩『イーリアス』である。『オデュッセイアー』という叙事詩もホメロスの作。これは、ギリシア随一の知恵者オデュセイウスが、トロヤから故郷へ帰る長い旅を描いた物語だ。
トロヤ戦争の最終段階でトロヤをうち破る作戦を考えたのが、オデュッセイウスだった。両軍とも名だたる英雄、勇士は次々に死んでいき、それでも決着はつかず、オデュッセイウスは有名な「木馬の計」というのを提案する。全ギリシア軍は撤退するふりをしてトロヤの海岸から引きあげ、浜辺には大きな木馬だけが残っている。木馬には、ギリシアの戦士が百何人か隠れている。トロヤ側は今日も戦だ、と海岸に来てみるとギリシア軍がいないため、到頭あきらめて撤退したと思いんだ。
海岸に残された木馬を戦利品として、トロヤ城内に持ち込んで、夜になったらどんちゃん騒ぎの勝利の宴会だ。トロヤの兵士たちが飲み潰れたのを見計らい、隠れていたギリシア兵が木馬から出てくる。そして内側から城門を開き、外の兵と合流しトロヤ人を殺しまった。トロヤは炎上して滅んだという。このトロヤの陥落炎上を描いた絵本が、シュリーマンに強烈な印象を与えた。
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