学園祭、第2日は大運動会だ。
『A高』大運動会といえば昔から呼び物は騎馬戦だったが、にゃべが密かに燃えていたのがクラス対抗リレーだ。ゴトーにじゃんけんで勝って、アンカーを射止めたにゃべ。そして誰が決めたか、アンカーのにゃべとゴトーの前を走る事になったのが、茜&マザーのAMコンビであった。
小太りのマザーは、その体型からどう見ても俊足には見えないが、何の因果か「クラス委員長はリレー参加必須」のルールで選ばれた。
「アンタら2人は、準備をサボってばかりいてちっとも役に立たなかったんだから、せめてリレーでは私の分まで、目の醒めるような大活躍してみせてよねー」
と、女子委員長マザーからのキツ~イお達しがあり、皆の失笑を買ってしまった。
「チキショー!
こうなりゃ、リレーでアイツらに目にモノ見せたるわ」
とサッカー部の空いた時間を見計らい、2人でバトンパスの特訓を始める。これまでは、常に「因縁のライバル」として激しく争って来たにゃべとゴトーが「スーパーAMコンビ」の出現により、遂にチームメートとして共闘するというヘンテコな図式となった。
元々、サッカーだけでなくスポーツ万能の2人だから、ともに100m走は11秒台の俊足である。さらに日頃からクラブで行動をともにしているだけに、バトンパスの技術は見る見るうちに上達していった。
「しかしなぁ・・・オレたちの前が、例のAMコンビだろ。茜はともかく、マザーは、あの体型で走れるんかいな?」
スリムな茜は見るからに速そうだったが、小太りなマザーはどうみても俊足とは思えないだけに、ゴトーの心配もあながち杞憂とは思えない。
「まあ、そうだが・・・しかし考えてみろよ。8人が200mずつを走るわけだから、アンカー前のAMコンビの頃には、とっくに決着はついとるだろーて。そもそもウチのクラスのメンバーでは、優勝の可能性はあり得んから、余計な心配はいらん」
「そーだろーな。しかしそうなると、オレたちにもたいした見せ場はなさそうだな。なんだか、つまらんなー」
と、ゴトーが急に目を輝かせた。
「なあ、にゃべよ。どうせ優勝がダメでビリ近くで来やがったら、オレたちは後ろ向きに走るってのはどうだ?」
「うむ・・・それは、おもろいかもしれん・・・」
といった調子でハナから緊張感に欠ける中で、いずれ劣らぬ目立ちたがり屋の2人だけに、すでに自分だけが大活躍して目立つことしか頭になかった (*Φ皿Φ*)ニシシシシ
ところが、いざ蓋を開けてみれば、そこがリレー競技の面白さで大して抜きん出たメンバーのいなかったにゃべのクラスが、不思議に息の合ったバトンパスを続け、アンカー前のAMコンビまで襷をつないで来た時は、堂々3位につける健闘を演じていた!
トップも充分に狙えるような、好位置に
「オイオイ・・・嬉しい誤算と言うべきか。こりゃ満更、優勝も夢じゃねーかも?」
「オーオー、案外やるじゃねーかよー。よーし、こうなりゃ、オレとにゃべでトップを抜いてゴールだ。こりゃ最高のシュチュエーションだぜ
(*`▽´*) ウヒョヒョヒョ
にゃべにも劣らぬ目立ちたがり屋のゴトーは、こういう時は人一倍張り切り普段以上の力を発揮するタイプだけに、その小さい目は異様な輝きに底光りしていた
(ノ∀`)アヒャヒャヒャヒャ
さて、3位でバトンを受けたマザー。やや太り気味の体型はどうみても速そうには見えず、案の定早々に1人に交されてあっという間に4位に後退したが、持ち前の根性で食い下がり思いのほか粘りを見せていた。そのまま何とか4位をキープし、最後はしぶとく3位にも接近して来ていた。
(これは・・・案外オレのところで、チャンスが転がり込んでくるかも・・・)
と常に良い事しかイメージしない、楽天的なにゃべとゴトーの二人が、すっかり身を乗り出しかけた。
そこで、信じられないパプニングが・・・ バトンパス失敗!
キャーッ!
という、いつもは冷静なマザーの悲鳴と、さらに一オクターブも高い茜の悲鳴が大きくコダマした。意外にオッチョコチョイなところのあるマザーとは誰しも知っていたが、よもや肝心なところでこんな派手なミスをしようとは・・・
「茜、ゴメン!」
「それよりマザー、早く早く!!」
しゃがみ込んでバトンを拾っている間にも、後続ランナーたちは容赦なく迫って来ていた。ようやくバトンを拾ったマザーがオロオロするのに対し、こんな状況の中でも可愛らしい顔に似合わず肝の座った茜は、さすがに冷静だ。巧妙な足踏みでラインを跨いで失格するリスクを回避し、バトンを受けるやマザーを一顧だにせず脱兎の如く駆け抜けていった。
バトンが渡った時点では全8クラス中6位にまで後退していたが、茜のカモシカのような追い上げで、たちまち4位に浮上。ここまではよかったが、続いて魔のハプニングが・・・
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