子供の頃から、美しいものには異常なまでの拘りを見せていたにゃべだったが、思春期に差し掛かるとともに益々その傾向に拍車がかかり、病的なほどにその「症状」は進行していた。
思春期の男の子が、美しい異性に憧れるのは当たり前だが、自分の場合は異性は勿論の事、同性にまで「美」を求めた。勿論、同性に「美」を求めるとはいっても、決して変な意味ではなく「純粋な憧れ」である。つまり、いい男を見ると
(あー、オレもあんな風にカッコよくなりたいなー)
という、まことに健全な憧憬心だ。
とはいえ、にゃべ自身、この頃は己の美貌にはある程度以上に頼むところがあったし、また周囲からも「オトコマエ」などと賞賛されていたから、その憧れの対象となるのは、かなりのオトコマエに限られた。一例を挙げれば、ジェームス・ディーンなど。もう少し後では、有名なロックミュージシャンというように、とてつもない色男だけが対象である。
凝り性のにゃべは、写真で見たJ.ディーンが着用していたのと同じセーターを求め、ブティックを半日かけて徘徊したりした。どうにか、似たようなデザインのそれを着てはみたものの
(うーむ、やっぱりなんか違うなー。そうか・・・ヘアスタイルが全然、違うからか・・・)
と思いつくや、早速学校帰りに床屋へ行き、オヤジにJ.ディーンの写真を示し
「こういう髪型にして欲しいんだけど・・・」
と、無謀なリクエストをしてしまった。
唐突にJ.ディーンの写真を突きつけられた、床屋のオヤジは目を白黒させ
「えっ?
こりゃあアンタ、ジェームズ・デーンじゃないの?
こんなん、顔が違うんだから無理だよ・・・」
これには、思わずムカッとしたにゃべ。
「髪型を同じようにしてくれと言っただけで、顔まで変えてくれとは言ってないよ。プロなんだから、出来なくはないでしょ?」
「といってもねー。外人サンのは天然のクセっ毛だしねー・・・学生さんの髪では、幾らプロでもこんな具合にはならんよ・・・」
結局、髪型自体も、イメージとかけ離れた中途半端な仕上がりとなり
「(`Д´)y-~~ち
ヘタクソめ!
あんなシケタた田舎の床屋じゃなく、ちゃんとした美容院に行くべきだったか」
と、激怒したのであった Ψ(ーωー)Ψ
悪友シゲオの魔手が伸びてきたのは、そんな時期である。
入学3ヶ月で、この頃はすっかり仲の良くなったシゲオに
「中学では、オレはA市のジェームズ・ディーンと言われてたんだぜ」
と、大ボラを吹いてみせると
「アホぬかせ!」
と大笑いされた。
「オマエがA市のジェームズ・ディーンなら、オレはA市のマックィーンと言われてたんだぜ」
と切り返され
「なんだよ?
そのマックなんとかってのは?
(ポール)マッカートニー?」
「なんだ・・・オマエ、マックィーンも知らんとは、無知なヤローだ」
と、頭からバカにされるハメに。その後、話し上手のシゲオから、マックィーンがいかに男っぽい痺れるようなキャラかを懇々と力説されるにつれ、俄然マックィーンに興味が湧き出して来た、にゃべ。
そうして、しばらく日が経った或る日、シゲオから
「オイ、にゃべ!
今夜、テレビでマックィーンの『パピヨン』をやるから観てみな」
「えっ?
そりゃ、一体なんだ?」
「いいから、とにかく観てみる事だな・・・」
と言い渡され、興味半分でテレビに向かった。そこでブラウン管越しに初めて見た、あのマックィーンの男らしさにすっかり嵌ってしまうことに。
以後「大脱走」を始め「シンシナティ・キッド」、「ネバダ・スミス」、「華麗なる賭け」、「ブリット」、「タワーリング・インフェルノ」、「ゲッタウェイ」、「華麗なる週末」等々、すっかりテレビに齧り付く日々。
「シゲオ!
オマエがA市のマックィーンなどは、とんでもねーぞ。オレこそは、A市のマックィーンと言われた男だ」
「バカやロ!
ついこの前オレが教えるまでは、マックィーンの『マ』の字も知らんかった無知なヤローが、なにヌカシてんだ」
と「A市のマックィーン」の称号を巡る争いが続いた (*^m^*)ぶはは
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