茜、まさかの転倒 ガ━━━━━━('Д`;)━━━━━━ ン
気丈にも、直ぐに起き上り走り出した茜だったが、この時点で8チーム中7位に沈んでしまったF組。あの可愛らしい顔を歪めながら、なんとか挽回しようと必死の茜ではあったが、最早その傷ついた体では追い上げも効かず、F組生からは諦めのため息が漏れ始めていた。
しかしながらF組にとって幸いしたのが、次のランナーがゴトーだった事である。これだけ想定外のミスが重なっては、普通であれば最早アホらしくてやってられんという状況だったが、稀代の目立ちたがり屋のゴトーは
(こうなりゃ奇跡のゴボー抜きで、オレだけでも皆をアッと言わせたるわ)
とばかり、異常なまでに張り切っていた。
「ゴトー、ゴメン」
「いいから、早く寄越せ!」
実際、茜からバトンを受けるや驚異的な追い上げを見せたゴトーである。最下位手前の7位から、あっという間に4位まで順位を上げる大爆走で、一気に表彰台の3位も射程圏に入れてきたから、皆ア然ボー然としてしまった。
「よし、にゃべー!
後は、頼んだ。死んでも、3位以内に入りやがれ」
「オッシャー!」
ゴトーからバトンを受けたアンカーのにゃべ。ゴトーと同じ100m11秒台の俊足とはいえ、アンカーはさすがに体育会系揃いだから、そう簡単にはゴボウ抜きは出来るものではないが、それでもゴトーの雄姿に鼓舞され、なんとか1人を抜いて3位でゴールイン ヽ( 'ー`)ノ
さて皆が教室に戻りしばらくすると、負傷した茜と付き添いのマザーの2人が、意気消沈して医務室から帰って来た。
「私ってホント、バカなの!
みんな、ゴメンね!」
と、いきなり茜が号泣しながら謝罪をしたから、みな驚いた。日頃は、何事もテキパキとこなして凛々しい茜だったから、この時の大きな瞳を真っ赤に泣き腫らしたような、妙にあどけない表情は皆の胸にグッと迫るものがあった。
女生徒は皆しんみりとしてしまったし、男子生徒からも文句の一つも出ようはずはない。
「違うんだよ。あれは、100パーセント私のせいなんだ。私のミスをなんとかカバーしてくれようとして、焦ったんだわ。それで無理をして、あんなことになっちゃって・・・茜、みんな、本当にゴメン・・・」
こちらも、いつもの磊落なマザーとは打って変わった、打ち萎れた態度だけに誰しも返す言葉がない。いずれにしろ、これだけ逃げも隠れもない堂々たるこの責任の取り方に対し、誰がケチをつけられよう(自分やゴトーならば、間違いなく言い訳に終始したろうに ( ´艸`)ムププ
「いいじゃない、茜もマザーも。結果的には3位に入ったんだから、結局は元通りって事だしね」
と女学生を中心に、ようやく慰めの言葉があちこちから飛んできた。
「ホント、そうよ。人間だから、ミスは誰にだってあるわ・・・」
「そうそう、こうやってちゃんと表彰されたんだからさー」
「でも、ゴトーとにゃべのあの速さだったら、私たちが居なければ優勝してたかもね・・・」
「ホント、あんなにぶち壊した後に、一生懸命走ってくれて・・・2人を見直した・・・いや、尊敬するわ」
と、AMコンビから賞賛されたのは嬉しかった(実際には、2人ともただ自分が目立ちたい一心だったのだが)
「確かに、最後のあの2人は化け物みたいに早かったけど・・・でもこのイベントの準備は、茜とマザーが殆んど2人でやったようなものなんだし。誰も、文句は言えないよ」
「でもさ・・・2人は単に生まれつき速いってだけで別に何の努力もしてないのに、それでこれまでのサボりが全部帳消しになるなんて、ずるいよな・・・」
と余計なことを言うバカ女子に、すかさずマザーが
「それが「才能」ってもんさ。才能ある2人に、最後は助けられた。だから、もうそれは帳消しでいいんじゃん?」
と、さすが「女傑」らしいセリフに、みな沈黙。慰める言葉も見つからず、さりとて文句も言い難いヘンな状況に戸惑っていると、すかさず口の巧いゴトーが
「泣くなよなー、茜!
所詮、あんなものはお祭りなんだから、別にどーってことねーだろ」
「ゴメンね、ゴトー。にゃべも・・・2人とも、ホントは優勝したかったんでしょ?」
「そりゃ、まあそうだけど・・・いや、別に優勝なんてどーでもいいよ。なあ、にゃべ?」
「そりゃ、まあ・・・なんちゅーか、ホンチューカ・・・」
(なんだ・・・天才マザーもスーパー美少女も、案外普通っぽいところがあるんじゃないか・・・)
これまで密かに憧れていた稀代の女怪とスーパー美少女が、あたかも天照大御神とコノハナサクヤヒメが自分と同じレベルに降りてきたようなハプニングが、嬉しいような悲しいような複雑な心境であった ( ̄_ ̄;) うーん
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