異常なまでにデリケートな体質で、熱いものが飲めない食べられない「猫舌」は言うに及ばず、肌の方も「猫肌」だったにゃべ。熱い温泉や冷たいプールなど、かなり時間を掛けないと体に馴染まない体質なのだ。さらには電気剃刀で髭を剃ると、数時間はアゴの剃り跡が真っ赤になるくらい、重度な「猫肌」でもあった。
たまたまシゲオとの会話で、そんな話題が出た折りのこと。
「ホーホー、ひ弱な体質だなー。オレは熱いのには、滅法強い『犬舌』だぞー。 『どん兵衛』なんかは、30秒で食えるからなー」
「ウソつけー、バカヤロ。30秒で食えるわきゃねーだろ」
と、くだらない口論となり
「よっしゃー。じゃあ、今度のキャンプの時に、実演して見せたるわ。もし30秒で全部食ったら、1000円よこすか?」
「おう、本当に30秒で食えたら1000円くれたるわ。無理に決まっとるしな」
「よーし、1000円のことは忘れるなよ」
「じゃあ、ダメだった場合は?」
「ありえんが・・・まあ、もし30秒以上かかったら、500円払ったろーじゃねーか」
と、自信たっぷりだった。
この派手な口論はクラス中に波紋を呼び、今キャンプでの男子生徒たちの最大の楽しみとなってしまった。
さて、運命の(?)キャンプ当日を迎えた。公約通り『どん兵衛』を持ってきたシゲオを、10人近い男子学生らが興味深く取り囲んで「メインイベント」の幕開けだ。お湯を注いで3分の待ち時間、俄かに緊張してきた空気を嫌ったか、シゲオが沈黙を破った。
「オイ、にゃべよ!
本当に、1000円よこすんだろーな・・・?」
「30秒なんて、絶対に無理だからな。ツユも一滴残らず飲み干したら、ちゃんと進呈するぜ。なんなら、1分で500円でもえーぞ」
「ツユも全部かよ・・・よし、じゃあ1分にしてくれ」
「絶対、ありえんし。1分で食えない場合は、オマエが500円を払うんだったよな?」
「よかろう」
と、シゲオが言うと
「1分でつゆまで飲み干すって、絶対無理じゃん。もしできたら、オレも500円出すぞ・・・」
と外野からも数人が便乗して来て、この「珍イベント」は思わぬ盛り上がりとなった。
「さあ、3分だ。出来たぞー。じゃあ、今からストップウォッチで測るからなー」
「よし、スタートだ!」
確かに、異常に早い!
いや、驚くべきスピードだった (;゚ロ゚)ヒイイイィィィィ
湯気が濛々と湧き上がるカップの中に顔を突っ込むや、メンもツユも吹かずにそのまま口へ運んでいくその早さには、みなア然ボー然だ。しかしながら、いかに早いとはいえ元々、1分というのは無謀な設定だから、ツユまで飲み干せるわけはなかった。それでも、およそ1分半程度で食してしまったから、これは大したものだ。
「うーむ・・・確かにスゲーわ。こんなのを見せられては、500円の取りようがねーな」
勿論「ダメなら500円」というのは、最初から売り言葉に買い言葉で言葉だけのつもりだったが、当のシゲオ本人は
「チクショー!
普段なら絶対、1分で食えるのに!」
と、悔しさありあり (ノ∀`)アヒャヒャヒャヒャ
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