ブルックナーほど、不思議な作曲家はいないかも知れない。日本では「超」が付くほど有名ではないブルックナーだが、欧米では日本よりは遥かに知られた大作曲家の一人であり、また産まれ故郷のオーストリアではブラームスを押しのけて大バッハ、ベートーヴェンとともに「三大B」に数え上げられるくらいまで、神格化された存在らしい。日本でもようやく、最近になって少しずつその真価が認められて来ているようだが、まだまだ本家「三大B」辺りとはまったく比較にもならない存在だ。
Classicのファンの間でも、ブルックナーに関しては好き嫌いが二分しており、ブルックナー好きの人はほぼ例外なくと云ってもいいくらいに、ファンというよりは「信者」といった方が正しいような熱の入れようで
「ブル様の良さがわかってからは、他の作曲家が聴けなくなってしまった」
という声を聞く事すら、珍しくはない。
オタクファンの多いClassic界の中でも、ワーグナーなどと並ぶ「カリスマ教祖」として、一部の熱烈なファンからは神のように崇められているのである。
逆に、嫌いな人たちは
「一体、何を云いたいのかがサッパリわからない・・・聴いているのが苦痛だ」
と、拒絶反応を示す人も少なくないようである。
こうした一般的な音楽ファンの比較的醒めた視線と、一部熱狂的な「信者」とのギャップは何に起因するのかと言えば、偏にブルックナーの音楽の特異性にある事は疑いない。
聴き慣れるまでは非常にとっつき難く、理解の困難な印象の強いブルックナーの音楽。元々、ブルックナーは形式を重んじる人だけに、総ての曲が同じような独特の形式を持っている。したがって、そうしたブルックナー独特の「お約束」を覚えてしまうと、逆に案外と理解が進み易いのかもしれない。というわけでブルックナー理解の一助として、総ての交響曲に見られる独特の手法をご紹介しておこう。
出典 http://www.kurumeshiminorchestra.jp/
《まず、ブルックナーの曲を演奏中の弦楽器群に注目。右手に持つ弓をいっぱいに使って、朗々と旋律を奏でる事の多い弦楽器奏者が、ブルックナーでは曲の大半を右手を小刻みに使う「刻み」で、ハーモニーを作っています。
次に、金管楽器群。普段はリズムの強調、和声の補強など裏方の仕事に使われる事の多いトランペットやトロンボーンが、今日ばかりは朗々と響き渡ります。オルガン奏者、ブルックナーは旋律でなく「響き」で自らの想いを、我々に伝えているのです。
ですからブルックナーの音楽を聴く時、耳で旋律を追いかけてはいけません。お世辞にも「一流のメロディーメーカー」とは言えない不器用な作曲家のゴツゴツとした組み立てに、5分間で退屈しきってしまうこと請け合いです》
《あなたは今、コンサートホールではなく、石造りの教会の中にいると想像して下さい。目の前にいるのは指揮者とオーケストラでなく、パイプオルガンとオルガニスト。そして天井(天上)から降ってくる、パイプオルガンの響きに身を浸すように。そう・・・・それが「ブルックナーの聴き方」です》
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