2004/09/10

ゴトーの悲劇 (ノ∀`)アヒャヒャヒャヒャ

 我がF組の前期クラス委員長は、男子がゴトー、女子がマザーである。

(なぜ、神童にゃべを差し置いてゴトーが?)

と疑問に思われるだろうが、答えは簡単で立候補者がゴトー1人しかいなかったからだ。

ゴトーがクラス委員長」というところに大いに不満はあったが、委員長などはやりたくない自分が立候補するわけもなく、他に立候補者がいないことであっさりゴトーに決まってしまった。

一方、女子は立候補者がいないため投票となったが、当初から「天才少女」の誉高かったマザーに票が集まり、女子委員長に選出された。

ところで「生徒の自主性」を重んじる『A高』のシステムでは、書記、会計といったクラス委員の顔ぶれは、内閣と同じく委員長が指名して「組閣」をすることになっていた。で、当然ながら「ゴトー委員長」から真っ先に指名されることになった、にゃべが書記である。

「オマエが委員長でオレが書記など、悪いジョークはやめろ!」

と憤慨したのもつかの間、ゲンキンにも女子委員長のマザーから茜が書記に指名を受けた途端、心の中で快哉を叫んだ。

かつて『B小』では、にゃべらに喰い物にされながらも『C小』に転校し『C中』で別人のように変身を遂げて来たゴトーは、遥かに仰ぎ見ていた「神童にゃべ」を差し置いて「大役」に着いたことで、大いに溜飲を下げたことだったろう。

ゴトーにとっては、恨み重なる憎っくきにゃべ(?)を押し退けての「大任」とあって、すっかり有頂天になったとして無理からぬところではある。が、世の中とはうまく出来たもので、そんなお調子者のゴトーの歓びが哀れ、とんだ糠喜びに変わるまでは、まことにあっという間であった ( '艸`)ムププ

稀代の女誑しのゴトーにしてみれば、にゃべと同じように目を付けていた茜をにゃべに「奪われた」ような形(それも自ら立候補したせいで!)になったことも、ハラワタが煮えくり返るほどに許しがたかったろうが、それ以上の不幸はパートナーがマザーだったことに尽きる

女好きでは人後に落ちないゴトーにとっても、この「稀代の怪女」だけは勝手が違ったことだろう。このマザーというのが、茜のような目の覚めるよう美貌と才気とは正反対の、あか抜けない普通の田舎女学生にしか見えないのが曲者で、この外見に騙されて嘗めてかかるとトンデモないことになる。実際には、稀に見る天才的な頭脳と男勝りの気の強さという、空恐ろしい「女怪」というのが彼女の正体だった。

 普段は大らかでさっぱりとした気性の、典型的な姉御肌の気さくな性格のマザーではあったが、事に当たってはその図抜けた頭脳をフル回転させ、強力なリーダーシップを発揮した。マザーが、なにやらゴトーを説得しようとしているが、納得いかないゴトーが反論する。

「だから、そーじゃないって言ってるだろ。なんで、こんな簡単なことがわからんのかなー?」

と苛立って、ややヒステリー気味のマザーは足踏みを繰り返した。

「いや、ちょっと待てよ・・・オマエの話が複雑すぎて、なかなかついて行けん・・・」

と、引き攣った顔のゴトーは冷や汗を掻いていた。

「オマエこそ、オレの意図を理解しようとしてねーだろーが!」

「アンタの破綻した意図なんて、理解以前の問題よ。いいかい・・・モニョモニョ・・・」

と快刀乱麻を断つが如き理路整然とした説明を黒板に書きながら、ゴトーの混乱を明快に説き解していくマザーの頭脳や恐るべし。

「ん・・・ちょい、待てよ?」

と頭を抱えたゴトーが、ようやっと高度な重層構造からなるマザーの意図を理解しかけた。

「あ・・・もしかして、そーゆーこと?
なんとなく、わかってきたぞ。もしや、オマエの言いたいのは・・・つまるところ、そーゆーことだったのか?」

「あー、もう!
頼むから、ちっとは頭を働かせてよね・・・ホント、時間の無駄だわ」

(▼皿▼)アホちゃうん?

といった調子ですっかり容赦なく見下され、なにかと能力差の違いを見せ付けられる形のゴトーにとっては、まことに針の筵で過ごす拷問のような思いもよらぬ日々を迎えることに。

かくて、偉大な女房の尻に敷かれた髪結いの亭主もかくや、といったテイタラクに落ちぶれたゴトーは、やけくそ気味に

「オイ、にゃべー!
この役、オレと代われ!」

「オイオイ、オマエは、やりたくて立候補したんだろ!
最後まで、責任を全うしろ!」

「アイツと渡り合えるのは、やっぱ口達者のオマエしかいねーってば・・・」

としばしば泣きを入れていたのは、あながち得意のオフザケばかりとは言えなかった。

当初は

「そもそも、このオレが書記でアイツが委員長とは断じて許せん!」

などと、歯軋りしていたにゃべも

「頼むから、そろそろまじめにやってよねー」

とマザーから、気の効かぬ執事の如くこき下ろされ続ける友を見るに及び

「委員長になど、ならんでよかった・・・」

と密かに胸撫で下ろすのであった。

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