圧倒的な点数の上位3人に続く4位には『D中』の出身の麻衣子が入った。非常に大人しく存在感はまったく希薄であるが、にゃべが「最優秀賞」を射止めた「A市作文コンクール(小学校高学年の部)」で「優良賞」、翌年は「銀賞(主席)」、そして「中学生読書感想文コンクール」では、見事「金賞」に輝いた、筋金入りの文学少女だ。
この作品は全国審査に送られた結果、見事「全国入選」を果たしていただけに
(一体、どんな天才が、これを書いたのか?)
と、授賞式を待ち望んでいたのだったが、肝心の授賞式には姿を見せなかったことが物語っているように、非常に控えめというか気の小さい女子である。
あまりの出来栄えに「代筆疑惑」も囁かれたが、御三家に次ぐ4位に食い込んでいるところは「本物」の証明と言えた。
そしてC市のヒルカワという、これまた一癖ありげな男がにゃべとともに5位に並び、続く7位には奇人変人の代表格に挙げられるD市のコンドー、そしてなおも目を転じていくと、8位でようやくあの「ヒムロ」の名が。
(ナヌッ?
ヤツは『東海』へ行ったんじゃなかったのか・・・)
と何度か目を擦ってはみたものの、何度見てもやはり見間違いではなかった。
9位には、同じサトー姓で名前も同じ淳子と順子という、二人の「サトー・ジュンコ」が並んでいたが、同じ名前とはいえこれほど対照的な2人も珍しい。片や、ドモリとオオボケで常に冷やかしの対象とされたデカブツのイカツイ順子であり、一方の淳子は茜とナンバーワンを争う美少女でかつ医者の娘という、スマートで颯爽とした令嬢なのであった。
しかしながら問題はやはり、なんといってもヒムロである・・・
それにしても、この第一期定期考査の結果は「三重の意味での驚き」を齎した。まず第一には言うまでもなく、まったく勉強しなかったのに「学年5位」という高順位に自分が付けたことだ。
これを以て
(なんだ・・・『A高』と言っても、まったく大したことないじゃないか・・・)
と結論付けてしまうのは簡単だが、しかしあの「天才」と思われたヒムロがまさかの「8位」なのである。
『B中』では、6割以上の確率でトップに立ち、残りも殆どが2位という圧倒的な学力を見せつけてきた、あの天才がいきなり「8位」だ。ということは当たり前だが、あのヒムロの上に7人も居る(そのうちの一人は自分だが)と言うことになるし、なによりトップの3人との得点差を見る限り、著しい「格の違い」を実感せざるを得なかった (;-_-;) ウーム
『A高』の例年の進学実績から見ると、東大京大合格者が毎年平均して10~15人前後と言われたが、それに当てはめるとこの時点では
「にゃべも、東大ラインかよ・・・」
などと、ゴトー辺りからジョーク交じりに冷やかされたものである。
(全然、勉強しなかったのにな・・・やっぱりオレって、天才なんじゃねーか?)
などと、すっかり己惚れに酔いしれながら再度目を転じていくと、そこに本来あるべきはずのない名前を見つけ、思わず我が目を疑った。
(ナヌッ?
ヒムロだと?
ヤツは『東海』に行ったんじゃなかったのか?)
真昼の亡霊にでも出会ったように、成績表の前に固まったまま動かなくなった、にゃべの肩を背後からポンと叩く手が (/||| ̄▽)/ゲッ!!!
「ようよう、久しぶりじゃねーか!!」
振り返るまでもなく、忘れもしないあの独特の関西弁の主がそこに立っているのは明らかだったが、果たしてそこには亡霊ならぬ紛れもないヒムロの実体が、あの唇を歪めたようなお得意のシニカルな表情を浮かべながらも、それでも微かに笑っていた!
「なんや?
そないビックリした顔して」
というご本尊自身の方も、この男にしては珍しく幾らか引き攣ったような表情である。
「ありゃりゃ?
一瞬、亡霊が出てきたのかと思ったぜ・・・オマエは『東海』へ行ったんじゃなかったのか・・・」
突然の事態に、つい思っていた事がそのまま、口をついて出てしまった。
「亡霊とは、相変わらずひでーな。折角、声を掛けてやったっちゅうのに・・・なんや、オレがここにおったらあかんみたいやな・・・」
「いや・・・正直だから、つい本音が出ちゃうんだよな・・・」
と皮肉を返してやると、歪めた唇を一層オーバーに歪めてみせたヒムロ。
「いや、オマエの事だから、てっきり『東海』に行ったものだと思っていてな・・・別に悪気も深い意味もないが・・・」
「なんで、オレが『東海』なんや?
オマエの言う理由を、訊かせて貰いてーもんやが。そんなら、そういうオマエ自身は、なんで『東海』とやらへ入らへんかったんや?」
「オレは、元々『東海』なんぞへ行く気は、なかったからな・・・あくまでも受かるかどうか、試してみただけだし」
「なんや、入る気もねーのに受けたんかい。ま、それはえーが・・・ともかく、オレは『東海』なんぞは受けてもおらんし、受けるといった記憶も一度もなかったんやがな・・・そそっかしい連中が、勝手に決めつけとったたらしいな」
かつて経験のない「8位」に大いにショックを受けるどころか、順位などはどこ吹く風と言う表情である。相変わらずどこにホンネがあるのやら、いつもながら喰えない男だ ヽ(´―`)ノ
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