これで騒音が納まってくれれば良いが、という淡い期待も多少はあったものの、静かだったのはたった1日の事で、また元の木阿弥。
例の
ド~ン、ドーン!
という騒音はまたしても復活し、昼夜を問わずこの音に悩まされる事になる。とはいえ、クレームを入れに行ったところで、あの「大魔神」のような気の強い女が立ちはだかっていては、暖簾に腕押しであった。
そうして、数日が経過した。
X大のラウンジで、例によってニシモト、ホソノとバカ話で盛り上がっていた時のこと。
向こうの席でバカ笑いに興じている女どものデカい声を耳にした。
(ん?
どっかで聞いたような声・・・確かに、最近あの声を聞いた気がするのだが・・・)
と、記憶を探っていた。
ラウンジと言えば学生の溜まり場だから、いつであろうと賑やかなことこの上ないが、この時の
ぎゃははは・・・
というバカ笑いは、異様なまでにラウンジ中に響き渡っていた。
(一体、どこのバカ女だ。あのバカ笑いは・・・?)
と声の方を見透かしてみると、見覚えのない3人組の女子がバカ笑いに興じているではないか。
(あんなの、いたかな?)
と、多少は目を奪われつつも、楽しい3人の会話に戻っていった。
すると、その時
「えーっ、嘘やろ!
マジか!!!」
ラウンジの皆が、思わず振り返って見られずにいられないような素っ頓狂な悲鳴(?)が響き渡った。
「ん?
何事じゃい?」
物見高いホソノが、我先にと身を乗り出したのは言うまでもない。
「え~~~、マジかよ?」
「信じられへんわ」
その「異様に盛り上がっている席」は、この際ラウンジの注目を一身に集めていた?
ぎゃははは
再び、爆発的な哄笑が沸き起こるに及び
「なんやねん、あれ?」
と、呆れながらも、人一倍、いや人の十倍は好奇心旺盛なホソノだけに、今しも立ち上がって件の席に赴いて
「キミら、どーしたちゅーの?」
とでも掛け合いそうな勢いだ。
こんなそそっかしいホソノの手綱を締めるのが、ニシモトの役どころか。
「まあまあ、ちーっと落ち着きなはれや・・・」
などと窘めていると、例の3人組がどうやらこちらを振り返って見ているようだ。
観察したところ、3人のウチこちら向きのメガネ女子と、横向きの男か女かわからないような人物にはサッパリ心当たりはないが、向こう向きの姿勢から太めの体を捻じ曲げてこっちを見ている図体のデカい女だけは、微かに我が記憶中枢を刺激するものがあった。
「にゃべのお知り合いいな?
地元の同級生とか?」
というニシモトの言葉が終わらぬうち、向こう向きになっていた女が立ち上がるや、ズカズカとこっちへ向かってくるではないか。
これが、やたらと丸々として図体がデカかった。
(なんか、どっかで見た気がする・・・?)
「オーッス!
久しぶりー」
と、まるで男のように声を掛けて来たのは、その太目の女だ。
「先日はどーも!
あんた、X大生だったんやねー。ビックリー」
かく言う女こそは、あのクレームを入れた上の階にいた女だった!
ただし、この前とは別人のような、こぼれんばかりの笑顔である。
前回は警戒心からか終始しかめっ面をしていたためか、その巨体もあって「大魔神」のイメージしかなかったが、こうして柔らかい笑顔を見せると学生らしい若やいだ顔で、満更ではないかもしれない。
さらには大魔神の巨体の後ろに隠れるように、小柄な女が2人立っていた。
「ねえねえ、アンタってX大生やったん?
マジで? 超賢いやん」
どうにも手に負えない厚かましい性格らしい。また先日とは違い、警戒心は露ほどもなく好奇心丸出しの表情から見ても、かなりの「お天気屋」の女のようだった。
「ちょっと、ケーコっ・・・」
と小柄な連れの方は、ケーコの非常識を嗜める役回りか。
「なんか結構賢そないに見えたから、もしや国立かやっては思たけど、まさかX大生やってはなー?
ちゅーこっては、こないだ喧しーってかゆーっとった時も、勉強してはったっってか?」
「こないだ喧しーちゅーんは、なんんこっちゃゃ?」
と男か女かわからない中性的な人物に、ケーコなるデカ女が先日の顛末を話して聞かせたのだが、とにかく体同様に声もデカく目立って仕方がなかった。
(こりゃ、えらい女に捕まったかも?
にしても肝心カナメのボディコン嬢は、後ろの子だっけか?
どうも、ちとイメージが違う・・・)
というのも、最初はケーコの後ろに隠れるように立っていたのが、てっきり最初に見たボディコン嬢かと期待したのだったが、一人は小柄でお世辞にも美形とは言い難く、もの一人の方は中性的な顔立ちだから、実のところ顔はしっかり見ていないとは言え、あのスラっとしたモデル体型からだけでも、シルエットからしてどう見ても別人だった。
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