下宿先の物件は3階建てで、自分の部屋は2階の角部屋だ。
都会に生きるものの常として、居住者同士の付き合いはないため、どんな人間が住んでいるのかはさっぱり詳らかではなかったが、京都といえばさすが学生の占める割合が高い土地柄と言われるだけに、時折チラリと見かける居住者も、学生風の若者が多いようだった。
さて、真上に当たる305号室には、以前に見かけた例の白衣コスプレ紛いの綺麗なお姉さんが住んでいるはずなわけだが、残念ながらというか当然ながらと言うべきか、なんの接触の機会もないまま、しばらくの時が経過していたのだったが・・・
ある日、部屋に帰るところで、少し前を女子大生風の女が歩いているではないか。
後ろ向きだから顔はまったく見えなかったが、白衣の看護婦めいたボディコンのミニスカからスラリと伸びた足が綺麗で、そのまま、なんとなく見惚れたようになっていると、階段を登っていくではないか (; ̄ー ̄)...ン?
(ありゃりゃ?
あんなスタイルの良いのが、同じ物件にいたんだ?)
という好奇心が勝ち、さりげない風を装いながら目の端で観察していると、3階まで階段を上った彼女は、奥へと歩を進めて行った。そしてテラスで首から下は隠されてはいたが、紛れもなく見届けたのは真上に当たる、305号室だった ( ゜ ▽ ゜ ;)エッ!!
(あんなキレイなコが、上の部屋にいた?)
と、胸をドギマギさせたのは少し前のことだった。
顔を見たわけではないから、必ずしも「美女」とは決めつけられないが、後ろから見たあのミニスカからスラリと伸びた脚線美と、ボディコンが絵になる長身でスリムなスタイルの良さから考えると
(間違いなく、かなりの美形に違いない!)
と、すっかり嬉しさを隠せなくなったもので、これで日常生活の楽しみが一つ増えたような浮かれた気分になっていた (*Φ皿Φ*)ニシシシシ
ところが、である・・・その女子大生風の彼女を見かけてから、ちょうど1週間くらい後のことだ。
例の上の部屋から
ド~ン、ドーン!
と異様に大きな音と振動が、断続的に聞こえて来るではないか。
最初こそ
「ん?
何なんだ?」
くらいに思っていたのが、それからというもの昼夜を問わず、思い出したように騒音が聞こえてくる。
いかに安普請とはいえ、一応は鉄筋コンクリートの物件だから、そう酷い物音が聞こえるはずはないのだが、この上からの音は酷い時には深夜にも聞こえて来ていただけに、なんとも始末が悪かった。
しかも、何をやったらあんな物凄い音が出るのか、まったく想像もつかないようなものだっただけに、ここに至って遂に痺れを切らしたとしても無理はない。
(一体、あんなキレイな女が、こんな夜中に何をしているんだ?)
という好奇心と若気の至りから、翌朝ついに思い切って305号室のドアを叩いた ||“o ( ̄。 ̄)
あのキレイな後姿の女と、いよいよご対面となるという好奇心と、一方では(恐らく)綺麗な顔立ちをした女が出て来た際に、どう切り出そううかと考えもないままの、出たとこ勝負であった。
この日も上の部屋からは、朝から例の大きな「騒音」が聞こえていた。
「ハーイ、誰?
どなたですかー?」
という、若い女性の健康そうな大声が誰何してきたので
「下の階の者だけど、なにか異様に大きな音がして煩いんだが・・・」
というと、意外にもあっけなくドアが細く開いた。
ドアチェーン越しに空いたドアの向こうには、かつて見かけたあの「美形(のハズである)」の女子大生風の後ろ姿からは、まったくイメージのかけ離れすぎる太めの女が、胡散臭げに眉を顰めてこちらを睨んでいるではないか。
以前に外で見かけた、白衣コスプレのようなボディコンを来た綺麗な脚線美の女学生が出てくるものとの期待で待ち構えていたこちらとしては、肩透かしを食らった格好で
(ありゃりゃ?
こんなにデカい女だったっけ?)
と面食らっていると
「下の人って・・・?
そんで、何の用なん?」
チェーン越しに、細目に開けたドアの向こうには、縦にも横にも逞しくも大柄な女が仁王立ちとなっている (/||| ̄▽)/ゲッ!!!
やけに高飛車な感じの物言いで、恰も不意の訪問を咎めるかのような、キツイ口調と表情である。
「何の用かって・・・さっきも言ったけど異様な騒音がするから、あんな夜中に何やってんだろうかと思って・・・」
「えー?
ここ、鉄筋コンクリートなんでしょ?
そないに音なんて響かへんやろ」
丸々とした太目のその女は、不満げに口を尖らせた。
理由はサッパリ不明だが、とにかくその女は以前に見た「白衣コスプレの美女(?)」とは、どう見ても確実に別人であることは間違いがなかった。予想外の展開にうろたえつつも
「それが物凄い音がするからさ・・・一体、何をすればあんな音がするんだろー、というくらいなものさ」
「そんなに、せーへんでしょ?
オーバーやな・・・オタク、細い事、気にしすぎなんちゃうの?」
「ケンモホロロ」とはまさにこのことで、それだけならまだ許せるが、少しも悪びれた様子がないどころか、露骨に舌打ちをして鼻に皺まで寄せたその「悪態」に、ブチ切れてしまった。
「細かい事じゃねーって。
ゴジラがダンスでもしてるのか?
ってくらいの騒音だぞ、ありゃ!」
「ゴジラがダンスって・・・
ギャハハハ!!☆ミヾ(∇≦((ヾ(≧∇≦)〃))≧∇)ノ彡☆
それまで眉間と鼻に皺を寄せて思いっきり顔を顰めていたその女は、突然大口を開けて狂ったように爆発し始めたから、益々わけがわからなくなった ( ゜ ▽ ゜ ;)エッ!!
しばらく呆気に取られていると、ようやく笑い止んだ女は、さっきまでよりは幾分かは和らいだ表情で
「ゴジラのダンスって・・・せやけど口悪い男やねー、オタクも。
もうわかったから、精々用心すればえーんでしょ。
で、用件は、そんだけ?」
「それだけって・・・もちろん、そうだが・・・」
このわけのわからない状況からなんとか立ち直った頭に、冒頭に感じた疑惑への好奇心が復活し
「それはそーと・・・ここの住人の人と違うんじゃ?」
あの先日見かけた白衣コスプレ美女が、今まさに目の前に仁王立ちしている「大魔神」のような逞しい女に変身した、このわけのわからない謎解きを試みようとしたが
「用が済んだんやったら、もうえーでしょ?
オンナの住居のこと、探らんといてや」
と、再び険悪な表情に戻った「大魔神」に、思いっきり派手にドアを閉められ、あわや挟まれそうに Ψ(ーωー)Ψ
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