この店の旨いコーヒーの味を知ってからというもの、一時的にだがすっかりコーヒーの味に拘りを持つようになった。こうして、しばらくせっせと通っていたものの、マスコミ業界からIT業界へ転身してからは、現場が大きく離れた事もあってすっかり足が遠のいていた。
その当時、勤めていたN社のIDCはIT技術者駆け出しの頃の24時間三交代勤務だったため、夜勤明けの時に久々に名駅から地上へ出て、ブラブラと歩くうちに思い出したのである。
半年ぶりに、あの旨いコーヒーの味を思い出したのだから、向かう足取りもイソイソとしたものになった。このころは、まだJR名古屋駅のツインタワーが出来る前の話だったが、既に建設中のタワーズばかりでなく駅前の開発が加速し半年ほどの間に、随分と真新しいビルなどが目に付いた。
(少しの間に、随分と町並みが変わっていくものなんだな・・・)
そんな思いで、変貌を遂げている街を尻目に、目的の店に到着・・・のハズだったが・・・当然そこにあるはずだった、あの店の特徴ある古ぼけた構えの店が、いつの間にやら無機質なビルに変わっているではないか。
何度見ても、そこには無機質なサラ金のビルが当然のような感じで建っており、かつてそこにあったはずの喫茶店は、キレイサッパリと消え去っていたのだ。
「ありゃりゃ・・?
なんじゃ、こりゃ」
当たり前の事だが、何事もなかったような顔で素通りしていく幾多の通行人を尻目に、嘆いてみたところで始まらない。こうなっては気持ちを新たに、あの店に匹敵するような旨いコーヒーを飲ませる店を探すしかない。
(名古屋は広く、日本一喫茶店の多い土地柄といわれるくらいだから、まだまだ旨い店もあるはずだ)
と、しばらくは手当たり次第に有名店、無名店を問わず当たり捲くったが、あれだけのコクのある香り高いコーヒーに匹敵するものには、今なお巡り合う事が出来ないでいるのだった。
0 件のコメント:
コメントを投稿