「この前の、うちの上の階の・・・?」
「そやそや。よーやっと思い出したんやね」
「で、オマエらもこの大学生?」
「ちょっとぉ。その『オマエラ』とかちゅーの、やめてんか!」
「んじゃ、アンタら・・・いや、キミらもX大生だった?」
「アホ抜かせや!
こんな大学に入れるわけないっちゅーの!
うちらは、近くの女子大やわ」
「へー。で、この前の上の階の子は、どっちだっけ?」
とカマをかけると
「ぎゃはは・・・
アンタ、この子たちがアスカに見えるちゅーたら、目ぇ相当悪ぅない?」
どうやら、この前の白衣ボディコンの美女は「アスカ」という名前らしい。憎まれ口は腹立たしいが、あのボディコン嬢の名前だけでもわかったのは収穫だ。苗字は、恐らく表札か郵便受けを見ればわかる。
「いや、はっきり覚えてねーが・・・もっと背が高かったかな・・・」
「全然、似てへんでしょ!
ここには来てへんよ、あの子は」
と、独りでまくしたてる。
なにしろ、のっけからこのテンションだから、温厚なニシモトは言うに及ばすのこと、かなりの社交家と思われたホソノも、この勢いにすっかり圧倒されたか無言の行だ。
こうしてラウンジで駄弁った結果、判明したのは以下の通りだ。
いかにも「関西のおばちゃん」のイメージがピッタリのケーコだが、実は「モリゾノ」という苗字が示すように、九州は鹿児島の産だ。
「うろ覚えやけど、自宅から桜島が見えとった」ということだったが、子供のころに奈良と大阪の境の生駒に引っ越して幼少期を過ごした。中学の時に親の転勤で二度目の引っ越しをすることになり大阪に転居。
そのまま大阪の高校を出て、A女子大に通っているらしい。
関西の名門と言われる国立女子大やら、私立トップのA大など難関を落ちまくって、A女子大落ち着いたという大学受験でのトラウマがあったせいか、殊に『X大』に対して異常な反応を示した。
「にしても、アンタが『X大』やったとはな。どんだけ賢い頭しとんねん・・・」
を大声で繰り返すため、周囲の学生の好奇な視線を集めたのには辟易とさせられた Ψ(ーωー)Ψ
「高校時代は、やり投げで鳴らした」
という通り、はち切れんばかりに鍛えられた肉体。柔道部出身と言っても違和感がなさそうなその体は、縦にも横にも面積が広いだけに、かなりの迫力があった。
加えて、あの爆発的な性格だ。体育会系のサンプルのように、大きな声でまくし立て良く笑う。明るい性格であることは認めないわけにはいかぬが、二言も三言も多いタイプである。
(こんなのが、同じマンションの上の階に居たんでは堪らん)
と恐怖感すら覚えたが、実際には上の階の「主」は彼女ではなく、例の白衣ボディコン嬢ということで、大いに安心した (*´ー`) フッ
「その子は、今日は来てねーの?」
と探りを入れると
「まあね・・・あの子は、看護学生やから忙しいてな・・・」
ということだ。
「ほー。A女子大って看護科もあるの?」
「うちやないない。うちに看護なんてあるかいなっしょ。」
と顔をしかめると
「まあ、うちらも大阪からやから通学がエライんやて。ウチは2時間近くかかるし、同じ中学卒業のアスカもうちの近所やし。ヒロミも実家が滋賀やし。マドカだけぇは地元でメッチャ近いけどな。ま、そーゆーうちらみたいな遠距離通学の学生が、京都に幾つか『ルームシェア』しっとんのやわ」
ということだ。
「じゃあ、(うちのマンションの)あの部屋も、シェアしてると?」
「まっさかー。シェアルームゆーたら、もっとえーとこやわ。こうゆーたらあかんけど、あん程度の部屋わざわざシェアなんてせーへんやろ、フツーは?」
イチイチ憎たらしい奴だ!
恥じらいなどは爪の先ほどもなさげに、ケーコと称するおばさんのような女子大生は豪快にケーキに齧りついた。
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