スメタナと並び、チェコを代表する作曲家のドヴォルザーク。交響曲第9番『新世界より』やピアノ曲『ユーモレスク』など、素朴で郷愁を誘う音楽で親しまれている、このボヘミア国民楽派の巨匠は、熱狂的な鉄道オタクだった。
ドヴォルザークは、1日40小節を作曲することを日課としていたが、それ以外の時は蒸気機関車の模型を作っているか、町の操車場に出かけ何時間も機関車を眺めていたらしい。ある時などは
「本物の機関車が手に入るのだったら、これまで自分が作った曲の全てと取り替えても良いのに・・・」
と、溜め息交じりに友人に語ったと言いうくらいで、そのオタクぶりは相当のものだった。
また、こんな話も残っている。
彼は娘の恋人だったヨゼフ・スーク(ドヴォルザークの弟子で、後のプラハ音楽院院長。ヴァイオリニストのスークは彼の孫)に、新しい機関車の製造番号を調べてくるよう頼んだが、機関車に詳しくないスークは間違った番号を報告してしまった。
ドヴォルザークは真剣に怒り、娘に
「お前は、こんなウスノロと本当に結婚するつもりか?」
と、本気で結婚を反対したらしい。有名な「ユーモレスク」の楽想も、汽車に揺られている時に思いついたと言われるくらいで、鉄道に対する思い入れは並々ならぬものだった。
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