2004/10/10

ドビュッシー『2つのアラベスク(Deux Arabesques)』




ドビュッシーの初期作品で、最も有名な作品の一つ。1888年に作曲され、1891年に改訂されたとされる。ドビュッシーの2手用のピアノ曲としては、ロシア時代の《ボヘミア風舞曲 Danse bohémienne 》(1880年)以来の楽曲である。

1884年、ローマ大賞を得てイタリアに留学し87年に帰国したドビュッシーは、前作のボヘミア風舞曲の作曲から10年を経て、1888年にこの作品を作曲する。この作品の題名「アラベスク」は、当時の流行であるアール・ヌーヴォーの影響から、その装飾的な音の動きをアラビア模様に準えて命名された。また、190151日付のルヴュ・ブランシュ誌に、ドビュッシー自身が寄稿した評論文の中にバッハの協奏曲を「聖なるアラベスク」と記述したことに、その命名の由来を求める説も存在する。

2曲のアラベスクは、いずれもロマン派音楽に典型的な三部形式による小品で、和声法にグリーグやフォーレ、マスネの影響が顕著であるものの、抒情性と軽やかに運動するリズムの共存はシューマンの着想に似ていなくもない。ことに〈第1番〉においては、分散和音の多用と右手と左手のポリリズムの組み合わせが「アラベスク」たるゆえんであろう。

この作品は第1曲と第2曲からなり、前曲からは新たな試みも見られる。作品は彼独自の手法の確立にまでは至っていないものの、和声の非機能的な扱いやペダルの使用法などに、後年のドビュッシーらしい個性の魁も現れている。

1
冒頭はホ長調にもかかわらず、下属調イ長調の主和音。平行短調の後、漸く本来の調性が現れる。またこの序奏は使い回されており、調性の不安定さを演出する大きな要素である。中間部は、イ長調の静寂な部分。ハ長調のrisorutoでは「決然と」と指示するように、楽曲の統一を図っている。再現部では序奏の再現の後、簡単に主題が回想されている。

2
1番と比べ表向きの和声進行は常套句的だが、伴奏部分に平行五度を伴って動く楽句が多々あるほか、中間部で鮮やかな転調を次々と見せ、後の作風における機能和声の崩壊を既に予感させる。
出典Wikipedia

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