2004/10/07

海鮮グルメ


 魚貝類が大好物である。

 普段は料理などは滅多にしないのに、酒の肴にとしばしばスーパーでサザエや大アサリ買って来ては、コンロで焼いて食べる事もあるくらいである。しかしながら魚と違って分厚い殻に蓋われた貝類は、コンロの火加減では焼き具合がとても難しい。どう考えても生でツルリと食べてしまうのが一番旨そうだが、さすがに生き物だけに火を通さないと菌が心配である。

かつて郊外の現場に出向していた頃、近くの公園にバーベキューを出来るスペースがあり、気の合う仲間同士で近所のスーパーへ行ってサザエと大アサリ、それ に備長炭を買って来て桜を眺めながら食べたのは、やはりガスコンロとは火力が段違いだけに、同じ食べ物と思えないくらいに旨かった。

生といえば「生カキ」が美味い。まだ駆け出しの記者の頃、時折職場の先輩らに連れられ45人で大衆居酒屋へ行ったものだったが、この時に食べた「宮島産天然生カキ」の喉越しの素晴らしさは、まさに筆舌に尽くしがたかった。呑み会は編集長の提唱する「千円会」というシステムで、全メンバーがそれぞれの飲食の量に関係なく1000円ずつ出し合い、足りない分を編集長が負担するという方式である。当時20歳そこそこのワタクシを除いては、いずれも30代から40代、そして50代後半の編集長というオッサンメンバーばかりだから

「オレは若いんだし他のヤツラよりギャラも少ないんだから、せめて500円にまけてくれ~!」

と不満を漏らすと

「バカヤロー!
オマエにも、プロのマスコミ人としてのプライドがあるだろーて。そんなら、そーせこい事ばっか言うもんじゃねーがー」

などと、逆に怒鳴りつけられた。酒豪揃いのオッサンたちとは違い、当時食べ盛りだったワタクシは専ら食い気の方で

(こうなりゃ、意地でも3000円分は喰ったるわい)

この時とばかり栄養を付けようと刺し盛や串盛といった、普段はなかなか食べられない高価なところばかりをオーダーしていくと

「オめーはどーせよーけ喰うんだで、まっと安くてボリュームのあるヤツを頼まなかんてー!
たっかいもんばっか注文しとったら、あかんがやー!」

と、最初に鯖寿司やらチャーハンやらとラーメンといった、腹の張るようなものばかりを勝手にオーダーされてしまう事になった  (;´д` )トホホ

 とはいえ、目の前に並ぶと旨そうなのでついついこれらを平らげてしまうと、忽ちのうちに胃袋には空きスペースがなくなってしまう。しばらく時間の経過を待って、そろそろ皆の酒が進んで激論が戦わされている頃を見計らった、ドサクサに紛れて「生カキ」(2500円)をオーダーすると、大ぶりの「宮島産天然生カキ」が登場だ。

これが実に旨い旨い。酒で気持ち良く温まった体内に、あの冷んやりツルリと滑り込んでくるような喉越しが、得もいわれぬ快感だった。更に、オッサンたちの酒が進んで座が乱れてきた頃合を見計らって、再度

「生カキ一丁!」

とオーダーすると、さすがに一座から

「このバカヤロー!
誰がカキなんか頼んでいいと言ったかー!
ちっとは分を弁えろヤー、このたーけが!」

などと口汚いお叱りの言葉が、方々から降ってきた事は言うまでもない。
 
 アサリといえば、焼いたのも然ることながら「アサリの味噌汁」がこれまた旨い。定食などでは「しじみの味噌汁」がちょいちょい出る事はあるが、汁自体の旨さはともかく身が細かすぎるのに対し、アサリの方は身とだし汁の両方を楽しめるのが大きな魅力だ。

スーパーでアサリを買って来たり、潮干狩りに行った友人から沢山貰った時などは、勿体無いので珍しくも手間も厭わず「アサリの味噌汁」を自作していた。普段は「ひるげ」や「料亭赤だし」などインスタントで済ませているが、ある時永谷園の「アサリ汁」というのを発見して早速買ってくると、やや小ぶりのアサリが5つばかり真空パックされて入っており、これがインスタントにしては期待以上に結構いける。本当はだしが染み込むまで、じっくりと煮込んだ「アサリ赤だし」を食したいところだが。

 さらに海産物が大好物だからエビ、カニ、イカ、タコなどには目がない。高価なエビやカニはともかくとして、イカとタコは日常の食卓に欠かせない食材なので、外食ばかりで飽きが来た時などは、スーパーで買ってきて食す機会も少なくない。鮨ネタとしても、あの粘々とした歯応えが堪えられないイカに、サクサクとした歯応れの良いエビにタコは、どっちも幾つでも食べられるほどに好きだが、普段はスーパーで蒸しタコなどを買って来て食べている。

100g100200円程度のヤツを「刺身だまり」を付けて食べる。イカは、ボイルの輪切りをそのまま刺身だまりとカラシをブレンドして食べたり、元々ネギなどで味付けのしてあるものをフライパンで炒めたりだが、和風のネギ焼きが特に好みである。当初は、このネギ焼きだけをフライパンで炒めて食べていたのが「野菜と一緒に炒めると一層美味しく・・・」と書いてあるのにしたがってキャベツと一緒に炒めてみると、これが確かに旨かった。

かつてNHKの「地球・ふしぎ大自然」という、ワタクシが観る数少ないTV番組で「イカがタコになったわけ」という非常に面白い番組をやっていた。それによれば、イカが様々な環境に適応して行く間に身に付けた超能力で、ある時そのイカからタコの祖先が生まれて来たという物語であり「イカの進化したものがタコである」という結論だった。が、自分としては、タコよりはイカの方が旨いのだが。

イカ墨はご存じの通りパスタなどで食べて美味しくだけでなく、ガン抑制や免疫強化などの効果もよく知られていたり、果てはドラクロワの絵画にも効果的に使われるなど、驚くほどに用途が広い。絵画に使われる「セピア色」のセピア(sepia)の原語はラテン語の「コウイカ」の事で、今では「イカの墨から作る暗褐色の絵の具」を指したものを言うらしい。実際にイカ墨で書いた絵や文字などが日光などで色褪せ、薄い褐色に変化した後の色を「セピア色」と呼び「セピア」とは区別しているとのことである。

0 件のコメント:

コメントを投稿