2004/10/19

熾烈なセンターフォワード争い(高校生図鑑part8)

 「ウヌ・・・オマエか・・・」


にゃべとゴトーが声をあげたのも道理で、このドージマこそはかつて『B中』のライバルとして、2人の前に大きく立ちはだかっていた『A中』のキャプテンであり、またCFとして忘れもしない宿敵だった。

中学最後の地区大会決勝では、ヘディングでの競り合いでイモの頭と衝突し瞼を切るという、不運のアクシデントに見舞われたシーンは、にゃべらの記憶にもまだ新しい。結局、ドクターストップのかかったドージマの抜けた後の『A中』から、にゃべが終了間際の劇的な決勝ゴールをもぎ取り、大会は『B中』の優勝で幕を閉じたのである。

とはいえ、にゃべにとっては2年生の時の悪夢と、またゴトーにとっても念願のにゃべとの決勝戦への道を阻まれた、憎い強敵であったことに変わりはない。あの中学時代最大の宿敵と、今度はチームメイトとして同じCFの座を争って相まみえる運命になろうとは、なんとも皮肉なものである ( _)--*--(_ )バチバチ

 「あの時は、やられた・・・だからこそ、なおさらこの争いには負けられん!」

と不敵な笑みとともに、ダイナミックに走り出したドージマ。186cmの大男で典型的な加速型だけに、50mのタイムは「66」とにゃべ、ゴトーのライバル2人には及ばず。

「やっぱ、トップはオレとにゃべか・・・」

「まあ、順当なところだな・・・ヒロよ、わりーな」

と、皮肉をかますと

「なーに、50で後れを取るのは折込済みよ。本当の勝負は、これからだ」

と、あくまで自信たっぷりのドージマ。サッカー選手にとって、ダッシュ力とともに最も重要視されるのがスタミナである。続いて、5kmランが始まる。

長距離が苦手のにゃべは5人中4位と振るわず、2年生2人もそれぞれ3位と5位に終わる。2位のゴトーは速かったが、それでもだた一人14分台を記録したドージマの速さこそは、誰もが目を瞠った。マラソン大会でもトップ争いの常連であり、14分台は陸上部の大会に出ても戦えるようなタイムだけに、この中では群を抜いていた。

翌日は、実技を中心とした争いが続く。シュート力と正確性、ドリブル技術、さらにはゲーム形式で状況判断能力など、審査は多岐にわたって行われた。一瞬の瞬発力と反射神経の鋭さにかけては、誰にも負けないにゃべ。一方、180cm近い体格にも恵まれ、華麗なドリブルテクニックと状況判断に優れるゴトー。1年生の3人は、各自が誰にも負けぬようなそれぞれの長所はあったが、なんと言っても総合力で一歩抜きん出ていたのがドージマだ。

なにしろ体格だけでも186cm85kgと圧倒的だけに、入学時にはあっと言う間に柔道部員に囲まれ、サッカー部員と柔道部員の綱引きで大揉めに揉めたほどの逸材である。特にフィジカルの強さ、またシュートの破壊力と正確性は誰もが舌を巻かざるを得なかった。

こうして3日間に渡る戦いの結果、新メンバーはエースのCFにドージマが抜擢され、両ウィングににゃべとゴトーという、2年生を押し退けて夢の1年生トリオが実現した。

(チクショー。オレが引き立て役なんぞに、なってたまるか)

という思いは、おそらくゴトーとて同じだったろう。が、キャプテンであり、司令塔に回った3年生のニイミから

「オイ、オマエら2人!
攻撃の中心は、あくまでもドージマだからな。オマエら、勝手なスタンドプレーに走るんじゃねーぞ。オレが後ろから、いつも監視してることを忘れるな・・・」

と早くも心の内を見透かされ、しっかりとクギを刺されてしまった (;´д` )トホホ

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