2004/10/18

サッカー部レギュラーに抜擢される

 3年生がクラブ活動から退いた事で、中学時代同様に1年生にしてサッカー部レギュラーに抜擢されたにゃべ。地区最大のライバルとして、二度の死闘を繰り広げた宿敵『A中』の大エース・ドージマと、同じくライバル校『C中』のエースでもあり、にゃべとは何かと因縁の付きまとうゴトーと、中学サッカーの地区大会を盛り上げた主役3人が揃ってレギュラーに抜擢されるという、まさに夢のような最強の陣容が誕生した。

(あのドージマとゴトーが味方とは、こんなに心強いことがあろうか)

という感慨は、恐らくゴトーとドージマにしても同じだったろう。

県下有数の進学校である『A高』では、国体にも数度の出場経験のあるヨット部を始め体操部、ハンドボール部などとともにサッカー部も強豪としての伝統があり、県大会では上位の常連だけに目指すは全国大会である。

スカウト活動が盛んな私立校には、青田買いで優秀な少年を集めたような強豪チームが幾つもありそうだったが

(少なくとも、この「黄金トリオ」の揃ったFW陣に関してだけは、決してどのチームにもヒケを取らないはずだ)

と、自負していた。

ただし

(ドージマとゴトーが味方だから、こんなに心強いものはない・・・)

とはいうものの、裏を返せば3人ともにエースストライカーのCFという同じポジションである。と言うことは、これから熾烈なポジション争いが待ち受けているという厳しい現実もあった。

(果たして、ヤツラに勝てるか・・・?
いや・・・何としても勝ってみせなければ・・・)

他校との対戦以前に、まずこれから始まるライバルたちとのし烈な戦いに、期待と不安に武者震いをしていた。

 3年生の引退とともに、サッカー部では数人の1年生部員がレギュラーに抜擢された。

「今年は1年生のトップに、やけに活きのいいのが揃ってるじゃねーか」

と監督も目を細めたように、にゃべ、ゴトー、ドージマらトップ候補が新たにレギュラーに加わった事で、2年生部員らもウカウカできる状況ではなくなった。 中でも、最大の激戦区はセンターフォワード(以下CF)だ。

昨年までのサブから最上級生生となり、この花形ポジションの座を虎視眈々と狙うスギウラ、ニイミの2人と、中学ではそれぞれエースとして活躍したにゃべとゴトー、ドージマの1年生トリオ。「実力主義」を標榜する監督のもと、CFの座をめぐる争いが火蓋を切った。

まずは50m走。サッカー選手は、ダッシュ力が命だ。最初に走った3年生2人は、ともに6秒台後半のタイム。次いで、2年生トップを切ったゴトーが「61」を叩き出したところで、一気に盛り上がる。

ここで満を持して登場は、にゃべだ。冷やかしと声援を背に受けながら、得意のロケットスタートで飛び出していったタイムは、奇しくもゴトーと同じ「61

「ウヌヌ・・・ヤツと同タイムとは、不本意な・・・」

「チクショー、並ばれたか・・・勝負は次に持ち越しだぜ」

と、悔しがるライバル2人。一座の盛り上がりは、今や最高潮に達しようという、その時だ。

「まだ1人残っているぜ」

というドスの利いた声とともに、山が動き出すように大男が登場した。

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