2004/10/09

高嶺の花(高校生図鑑part6)

 『A高』入学以来、同じクラスにいた茜に、すっかり電撃的な一目惚れをしたにゃべは

(彼女こそ、間違いなく『A高』ナンバーワンの美少女だ!!
という以上に、あれだけカワイイのは、世間にだってそうはいない・・・)

と、密かに恋心を寄せていた。

天の配剤か、後期クラス委員長をともに務める幸運に恵まれ、すっかり逆上せ上っていたにゃべだけに、よもやこの茜に匹敵するような美少女がもう一人いたとは、想像だにしていなかったのは無理もない。それだけに茜のふっくらとした、下膨れの典型的なアイドル顔とは対照的な、細面の美形のルックスに加え「深窓の令嬢」といったお上品なおっとりムードを醸し、優雅に振舞うこの女学生を目にした時は、茜ショックにも負けない衝撃を受けた。

艶々とした、綺麗なポニーテールの髪を靡かせながら、学園内を颯爽と歩くその姿はさながら「春の涼風」といった風情であった。

「サトー・ジュンコ」という彼女の名前だけは、成績上位者として毎回目にしていたからすっかりお馴染みではあったし、学校近くにある「サトー医院」の箱入り娘だという噂も、耳にはしていたが

(どっちにしろ、茜以上ということはなかろう・・・)

と、決め付けていたのだった。

ところが実物の淳子は、茜と比べてもまったく甲乙つけがたいほど美形だった

全体的に、派手目な造作の個性派タイプが茜なら、恋愛映画や少女マンガにでも描かれそうな典型的なサラリ系の美少女タイプが淳子である。性格的にも、高く美しいソプラノでエネルギッシュな口調で捲くし立てる社交性と、衆に抜きん出た行動派の茜に対し、淳子の方はいかにも育ちの良い令嬢らしく、万事につけておっとりと構えているところが魅力だった。喩えていうなら、茜の方が目に鮮やかな大ぶりの枝垂桜なら、淳子の方は少し控えめに咲くソメイヨシノといったところか。

得てして、こういった清楚なお嬢様タイプに限って、性格が案外なガラッパチであったりして幻滅させられるものだが、淳子の場合は家庭での教育がしっかりしていたか、はたまたもって生まれた性質からか、どこから突付いても絵に描いたようなお嬢様なのである。

淳子はシゲオやカトーと同じ『A中』の出身だが、ある時シゲオにさりげなく中学時代の様子を聞いてみた。

「オレは、小学校の時から一緒だったけどな。中学でもカトーと淳子だけは、あらゆる点で別格だった」(この年の「読書感想文コンクール(高学年の部)」は、カトーが最高の栄誉である「金賞」に輝いている)

と、あの人を扱き下ろしてばかりのシゲオをして、手放しで褒め上げるほど、皆から信奉された存在であったらしい。

「そういや『A中』には「ナカノ外科」とかいう、デカイ病院の娘もいたんじゃねーか?」

と何気なく問うたところ、シゲオが途端に顔色を変えた。

「バカタレ!
あんなアバズレなんぞは論外だわ、たーけ!」

淳子とは対照的に「医者の娘」をハナにかけ、外見通り気の強い性質で男を男とも思わぬエリの方は、淳子とは対照的に皆から煙たがられていた存在だった。

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