「よろしくー」
ぞくぞくするような微笑を浮かべて、愛想よく声をかけて来た千佳のエギソティックな美貌は、確かににゃべの気憶の襞を刺激した。
「なあ・・・確か面識があるよなー」
人の顔や名前は直ぐに忘れるにゃべだったが、ことカワイ子ちゃんとなると話は別。2年以上も前に1度見たきりの千佳の事は、しっかりと覚えていたから、我ながら実にゲンキンなものである。
「推薦面接?」
千佳の方も、しっかりと覚えていたようだ。
「そうそう・・・あの時、オーミヤと一緒だったって事は、ナカジマも『C中』だったんだ?」
「そうだけど・・・アンタ、あの時は真紀と随分と親しくて相性も良さそうに見えたからさ・・・あの後で、真紀をちょっとイジってやったんだ。
『今のは、アンタの彼氏?』
ってね」
「(* ̄m ̄)ブッ
で、オーミヤは、なんと言った?」
「『全然、そんなんじゃないよー。あの子、すっごく賢いんだ』
「って、真紀ほどじゃないでしょ?」
「トンデモナイ!
私なんかと比較にならないよ・・・(C中で真紀とトップを争った)ナカムラやゴトーよりも、もっと天才の域だな・・・」
とか言ってたっけ」
「ほー」
「実はねー、私も1年の時は『B中』にいたでしょ。で、アンタの名前は、よく聞こえてきてたかよ・・・」
「ほー」
「まあね・・・だから、あの時は
『へぇー。あれが有名な、にゃべって子か・・・』
なーんて遠見からでも、興味津々だったな・・・」
思い起こせばあの時、真紀との会話中に突き刺さるように感じた、好奇に満ちた千佳の視線を思い出した。当時は、千佳の眩しい視線を受けて感じた気持ちを隠すため、務めて千佳の方を意識しないようにしたものだったが、さすがにそんな事に気付かぬほどに勘の鈍い真紀ではなかったらしい・・・
前年は、ともにA組で委員長を務めたにゃべと真紀だったが、ある時
「にゃべって、タカ(千春)とか千佳みたいな、色白のセクシー系が好みなんじゃない?」
と、ズバリと切り込まれた事があった。
「ん?
なんでだ・・・?」
「だって・・・あの(推薦面接の)時、彼女の視線をかなり意識してたみたいだから・・・」
と迂闊にも、しっかりと見抜かれていた (* ̄m ̄)ブッ
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千佳との邂逅は、中学卒業前の時だから2年少々前となる。それぞれが『B中』、『C中』か『A高』に推薦され、面接に訪れた時の事だった。
『C中』の女学生といえば唯一の顔見知りで、かつそれなりに親しかった真紀との2年ぶりの再会を密かに楽しみにしていた。運命の悪戯とでも言おうか、その時に再会した真紀の親友として影のようにピッタリと寄り添っていたのが千佳であった。千春に似た雰囲気、色白の肌と涼しげな風貌は、真紀もすっかり霞んで見えたほどだった。
それだけ強烈な意識があっただけに、真紀にもつい訊きそびれてしまったが
(まあ、どうせ『A高』に行けば、居るんだろうからな)
と、密かなる楽しみとしていた。が、運悪く同じクラスになるチャンスに恵まれぬまますっかり忘れていたところで、最後の年を迎えてようやく同クラスとなったばかりか委員長を一緒に務めるという縁に恵まれるところは、やはりラッキーボーイ健在と言うべきか ( ´艸`)ムププ
日本人離れした色の白さといい、サラサラとした艶やかな髪の美しさといい、またいわゆるセクシー系なところなども、やはり当初の印象通り千春に良く似ていた。
2人の違いは千春の切れ長の目に対し、千佳の方は猫のように黒目のパッチリとした大きな瞳というところか。或いは千春の歌うようなソプラノの美しさに対し、千佳の方は声にはあまり特徴はなく、またストレートな黒髪ロングヘアの千春に対し、ボーイッシュな茶髪のショートヘアが千佳であった。
両者の違いはこんな感じだが「美しさ」という点にかけては、やはり千佳の方がをかなり凌駕していた。
淳子と茜の2人は、誰に聞いても共通の「美形」の評価で一致していたが、これに続く3番手となると様々意見が分かれるところだったが、個人的にこの2人に続くのは千佳ではないか、と密かに買っていた。それまで『B中』を代表する美少女と思っていた香や千春、或いは小夜子らといえど、千佳ら3人に比べれば精々が「太陽の前の月」に過ぎなかったようだ。
2人の親友である真紀に
「ナカジマって、ちょっとタカシマに感じが似てないか?」
と訊いたところ
「そう?
千佳は子供(小学生時代)の頃から知ってるし、タカは最初見たとき(中学時代)から大人っぽかったから、その辺はよーわからん」
と、巧妙にはぐらかされてしまった。
「まあ似てるといえば、どっちも気が強いところかな」
と笑っていた。確かに、この千佳も千春と同様、時折やや険のある表情や怖いような目付きを見せる事があり、そんなところは愛想のいいアイドル風の茜や、常にしとやかな令嬢の淳子にはない個性と言えた。
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