生まれつき惚れっぽい性質のにゃべは、かわいい子には目がない。
『B小』時代から数え上げるだけでも、初恋の香に始まり小夜子、美佳、続く『B中』では真紀、千春と続いた。そして『A高』に入学後は茜、淳子、カオリ、千佳と、まさに十指に余る入れ込みようである。
このうち『A高』で最もお気に入りだった淳子とは、さっぱり接触のチャンスに恵まれないまま虚しく月日が経ち、最早遠い夜空の彼方に輝く星のような存在であった。
1年生の時には、ともに級長を務めた茜にしても、ほんの少しだけ手応えを感じはしたものの、なにせ競争が激しいだけに独占は覚束ないままに進級となるや、一気に疎遠となってしまった。この2人に関しては、あの図抜けた美貌からも高嶺の華のような存在と言えた。
そうした中、この時点では最も身近な存在として控えていたのが、千佳、千春、小夜子のクラスメート3人である。このうち千春と小夜子の2人は、一貫して小・中時代からの憧れの存在だが、新鮮さではやはり千佳に軍配が上がる。
その千佳とは、ともに級長を務める関係であり、また千佳自身が大らかな性格だっただけに、まさに理想的な相手といえた。殊にこの千佳に関しては、美形という点では千春や小夜子とて足元にも及ばず、茜や淳子と比較してややクセはあるものの、これに続くと思えるような美少女だった。
この千佳のにゃべに対する態度はといえば、例年通り級長職に対するサボりの多いにゃべに対し、当初こそは何かと手厳しく文句を言う事が多かったが、しばらくパートナーを務めるうちに次第にその魅力に目覚めたか(?)、はたまた諦観の境地に悟りを開いたのか、次第に打ち解けて来ていた。元々、千春も千佳も中学では、それぞれ真紀と親友関係にあった事から
(千佳と千春が親友になれ。そうすれば2人と仲良くしながら、巧くすりゃあ)
などと、甚だムシの良い策を企んでいたものだったが、案に相違して2人の親友関係は待てど暮らせど、一向に成立しなかった(と言っても、特に仲が悪かったというわけではなかったが)
しかしそれも考えてみれば道理で、同じような気の強いタイプの2人では性格がぶつかるためか
(一歩引く事の上手なオーミヤだからこそ、2人との関係が巧く成り立っていたんのか?)
と気付いた時には、既に数ヶ月が過ぎていた。
ある日は、校内の隠れデートコースといわれる日本庭園で独り休んでいると
「あれ・・・?
にゃべが、こんなところに・・・」
と木漏れ日を受け、キレイなロングヘアをキラキラと光らせながら、美しい声とともに千春がやって来た。
「こんなところにいて、悪かったな・・・」
行きがかり上、なんとなくどうでも良い話を駄弁っていると、突如として千春の目が妖しく輝いた。
「ねぇ・・・にゃべってナカジマ(千佳)さんがタイプでしょ?」
と例の悪戯っぽい視線で、いきなり斬りつけて来た (/||| ̄▽)/ゲッ!!!
「えっ?
いきなり・・・なんなんだ」
「エヘへ・・・まあ、いいじゃん・・・白状しなさい。確かに彼女、魅力的だよなー」
日頃からプライドの高そうな千春が、こうしたセリフを吐く事自体が意外だったが、それだけに心底そう認めているようだった。
「うーん・・・ちゅーか前にも言ったと思うが、ナカジマってオマエに似てるよ」
「だから、全然似てないって言ってるのに・・・彼女が怒るわよー、そんなアホな事いってたら」
「な~に、心配するな・・・オマエのファンも、何人か知ってるし。今度、紹介してやるよ」
「えっ、うそうそ・・・そんなの、いないって。それよかにゃべこそ、最近は体操のヨシノさんがお気に入りかい?」
(なんでコイツは、こうも勘が鋭いのか)
こう書くとあたかもワタクシ自身が、傍から見て非常にわかりやすいタイプに思われそうだが、実際には
「何を考えているのか、サッパリワケがわからない謎オトコ」
で通っていたのだから、やはり千春が特別に鋭かったとしか言いようがないのである。
「フフン、声もなしか・・・以前はオカド(小夜子)さんが好きだったし、1年の時はシロツバキ(茜)さんばかり意識してたでしょ?
確かに彼女、抜群にカワイイよねー」
「・・・・・」
「そーゆーだらしのないヤツは、ナカジマさんには軽蔑されるよ・・・」
「大丈夫だ・・・そこまで観察してるような暇人は、オマエくらいのものだろーからな」
「愚か者め・・・甘い甘い」
「オマエこそ、くだらねー話はヤメロ。それよか、シロツバキとヨシノだったら、どっちが魅力的だと思う?」
「それこそ、クダランわ・・・こんな変な会話を誰かに聞かれたら、誤解されそうで怖い怖い・・・」
「よーゆーわ。人の思索の邪魔をしに来てからに・・・」
「あら。邪魔しちゃったわね・・・ゴメンアソバセ」
と言い置くと、スカートの裾を翻し足早に去っていく千春。
(結局、何が言いたかったのか・・・相変わらず、よーわからん女だ (-。-)y-゜゜゜
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