2006/09/17

誤算(二度目の契約更新)part2


 「勿論、担当者は現場の事などは全然把握出来ていない人なので、決して気を悪くなさらないで下さい・・・」

と言われようが、悪くしないわけにはいかない。

「そこで私からの個人的な提案なんですが、この際でもありますし別の現場に移る事を考えられては、いかがでしょう?」

今の契約は年単位であり、最初の更新の時に「半年単位」を希望したが却下され二年を終えたわけだが、再度「半年」か若しくは「3ヶ月単位」の短期更新を申し入れた経緯があった。言うまでもなく、現場での業務に満足できていないためであり、最短の「3ヶ月単位」というのは『辞める場合は、最低でも3ヶ月前に申し入れる』という、クライアントとの契約に基づいたものである。

1ヶ月単位にして欲しい」と希望を出したが、代わりの技術者を探す期間と面接や稟議、さらには引継ぎにも1ヶ月を要する、というところからの計算らしい。ただし「半年」とか「3ヶ月」という契約期間は、あくまでもワタクシとS社の間での話であり、S社とN×社、或いはN×社とN社との契約はどれも一年単位となっているから、金銭その他の契約交渉は一年区切りのタイミングでしか出来ないとの事だった。

それでも敢えて「半年」または「3ヶ月」という、短期契約を希望したのは「嫌になったら、いつでも自由意志で辞められる」メリットを考えてのものであり、また同時に「嫌になったら、いつでも自らの意志で辞めてやるぞ」という意味も含めていた事は、言うまでもない。
  
「この際、今の現場は9月で辞めて、新たな現場に移る意思があれば、当社としても全力で受け入れ先を探しますよ。正直、にゃべさんにお支払いする額もかなり高額になって来てますので、当社としてはまったく儲けがなくなって来ているのが実情でもあるし、にゃべさんとしてもこの際は残業手当も付いて、もっと高額な収入になるところに移られた方がいいんじゃないですか?」

と、明らかに別の現場に移したいような口ぶりからすると、余裕がないというのは嘘に決まってはいるが、N×社との交渉がA氏にとっても思わぬ不調に終わったのだけは確かなようではあった。

 A氏は執拗に

10月からは、新しい現場に移りませんか?」

と、他の現場へ移したがっている様子がありありだった。自分としても確かに今の現場に対する不満はあったし、もっと能力を活かせるような現場に移りたい気持ちはヤマヤマだったが、ここはじっくりと時間を掛けてでも、慎重に決めていきたい気持ちの方が強い。先の例から見ても、A氏の言う事はまったくあてにならないのは良くわかったし、現場を移るのであればこの際、S社そのものと縁を切って会社ごと乗り換えてやろうという腹積もりもあった。

という事は、また新たな転職活動をする事であり、この先そう何度も繰り返すのは難しい事を考えるならば、今回のような「失敗」にならないよう、じっくり腰を据えて活動する必要があるのだ。

そうした考えもあって、最低の「3ヶ月契約」を申し入れると

「何度も繰り返しになりますが、私としてはこの際スッパリとこのタイミングで他の現場へ移る事を、強くお勧めしますよ・・・」

と不満げな色を露にしながらも、しぶしぶと受け入れた。この一連のやり取りを通じて、ワタクシにはA氏のドス黒いハラの内が総て読めた。つまりA氏としては相手は天下のN社という事もあって、交渉次第で青天井までも吹っかけられるという目算があったのだろう。ところが、NX社の担当者が元々A氏と親しい部長から、それまでまったく面識のなかった別の部長に代わるとともに様子が変わって来たようで、どういう事情かはわからないものの契約に対して非常にシビアになり、増額を勝ち取れなかったという誤算が生じた。となればA氏としては、ワタクシから給料の安上がりな若い技術者に挿げ替えれば、それだけ利益が生じるという計算だろう。

今の契約が、残業分も含めた月額固定で頭打ちとなっているのだから、これまでの実績を盾に給料の安い若手で利益を浮かせて、技術力はあるが年齢やキャリアを考え金の取れそうな自分は、残業代等で稼げる別の現場へ移したがっている。これは電話での遣り取りからも明らかだった。

 ワタクシのこの推測は、間違いなく当たっているに違いない。そしてA氏の立場からすれば、そう考えるのは当然なのだろう。Nx社が「ならば、現行条件で納まる技術者に変えろ」というバカげた事をいうのは、現場の事がまったく把握出来ていないからだし、それを見越して技術力を度外視すれば利益を追求する企業としては、そう考えるのもまた無理はない。

が、実際にそうなった場合に一番困るのは、現場責任者のH氏である事は明らかなのである。給料も安上がりに済みそうな若い技術者で、ワタクシと同等の技術レベルを備えた人物がいれば問題ないだろうが、これまで他社から出向してくる例を見ても、おいそれとそんな都合の良い人材が見つかるとは、とても考え難かった。

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