ミトラ教の神官たちは、カルデア人のバビロニアの神官たちと教義を習合させるようになり『ミトラの密儀・儀礼』と『バビロニアの占星学』を統合することで『秘教占星学(ズルワーン神学)』を開発することになった。
秘教占星学(ズルワーン神学)が洗練され、普及することによって『ミトラス教(ミトラ教)』は一つの宗教としての完成度と影響力を高めたのである。
ミトラス教は、古代のギリシア人やローマ人にとっては『東方(オリエント)の神秘主義への憧れ』を掻き立てる魅惑的な宗教であり、バビロニア=ストア学派の神官・学者によって次第に古代ローマ帝国へと輸出され、信仰されるようになっていった。
バビロニアの宗教・密儀・思想を、古典古代時代のヨーロッパのギリシアやローマに輸出したバビロニア=ストア学派は、紀元前4世紀から3世紀に至るまで約700年間の長期に渡り活動を続けていたという。
ミトラ教は、アーリア系民族の多いローマ帝国内でも勢力を拡大し、歴代ローマ皇帝の帰依を受けたこともあり、帝国の各地にミトラ神殿や礼拝の洞窟が建立された。
しかし、313年にコンスタンティヌス帝が『ミラノ勅令』を出してキリスト教を公認し、392年にテオドシウス帝が異教崇拝を禁じて『キリスト教の国教化』を宣言したため、ローマ帝国の異教・異端信仰となったミトラ教は弾圧され、影響力を失っていった。
コンスタンティヌス帝の甥であるユリアヌス帝は、理性的なギリシア哲学に精通した教養主義の皇帝であり、排他的・教条的なキリスト教を棄教してミトラス教を信仰し、ミトラス教の勢力を復興させようとした。
そのためユリアヌス帝は、キリスト教会から見た場合には『背教者』と呼ばれる。
だがユリアヌス帝のキリスト教批判の動きも虚しく、その後のローマ帝国の皇帝はキリスト教に深く帰依すると同時に『一神教に基づくローマ帝国のアイデンティティ・世界観』によって、ローマ帝国の立て直しを図ろうとした。
392年、テオドシウス帝がキリスト教をローマ帝国の『国教』とし、他の宗教に対する寛容政策・保護政策を廃止したことにより、ミトラス教も異端宗教として弾圧されるようになる。
ミトラス教の洞窟神殿は容赦なく破壊され、その跡地にはキリスト教の教会が建立されるようになった。
ミトラス教(ミトラ教)の歴史区分は、以下のように分けられることがある。
1.原始ミトラ教時代・・・紀元前の発生から紀元3世紀頃までの、バビロニアを中心として布教された時代。
2.西方ミトラ教時代・・・ローマ帝国やセレウコス朝シリアを中心に布教された時代。
3.東方ミトラ教時代・・・バビロニアを超えて、ペルシア(イラン)や中央アジア、中国大陸など、ユーラシア大陸全域にまで拡大していった時代。伝道者マニの名前から、チャイナではミトラ教は『マニ教(摩尼教)』と呼ばれることが多かった。
4.東方神智学時代・・・イスラム教神学と、ミトラ教の神秘主義が思想的・儀礼的に融合していった時代。
●弥勒信仰および マイトレーヤ信仰との関係
※この節は検証可能な参考文献や出典が全く示されていないか、不十分です。
仏教には、弥勒菩薩が存在し「弥勒信仰」がある。
この弥勒は、サンスクリット語ではマイトレーヤというが、マイトレーヤとはミスラの別名、またはミスラから転用された神名である。[要出典]
すなわち「マイトレーヤ」は、ミスラ神の名と語源を同じくする。
「mitra/miθra」は本来「契約」というほどの意味だが、後には転じて契約によって結ばれた親密な関係にある「盟友」をも意味するようになった。
マイトレーヤは、その派生形容詞/名詞で「友好的な、友情に厚い、慈悲深い(者)」の意味となる。
また弥勒の字である「阿逸多(Ajita)」は、ミトラの母であるアーディティヤが変化したものと言われている。[要出典]
ミスラは、クシャーナ朝ではバクトリア語形の「ミイロ(Miiro)」と呼ばれ、この語形が弥勒の語源になったと考えられ、クシャーナ朝での太陽神ミイロは、後の未来仏弥勒の形成に影響を及ぼす。
ミイロの神格は太陽神であるということ以外不明であるが、定方晟はマニ教の影響なども考慮し、救世主的側面があったのではないかと推測している。
松本文三郎の仮説では、このような比較神話学および比較言語学の系統分析によって、ミトラ教の神話体系が仏教では菩薩として受け入れられ、マイトレーヤを軸とした独特の終末論的な「弥勒信仰」が形成されたとする。
マイトレーヤ信仰または弥勒信仰は、後にチャイナなど東アジアに伝わった。
なお仏教の弥勒信仰以外にも、インドではヴェーダにミトラ神(मित्र, mitra)が記されている。
中央アジア経由でソロアスター教から仏教に融合され、日本に至った神にミトラ神がある。
ミトラ神は、ゾロアスター教では主神アフラ・マズダの下位の神である。
このミトラ神が漢訳され、毘沙門天つまり多聞天となった。
ソロアスター教の文献によれば、ミトラ神は千の耳を持つとされる。
ゆえに「多聞天」と意訳された。(京都大学名誉教授、宮崎市定が推定)[要出典]
※Wikipedia引用
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