例によって、御苑で少林寺修業をしているところに、あのA女子どもがやって来た。
「あれっ、にゃべ。
夏休みも、頑張ってたんだ?」
「当然じゃ・・・修行に、休みなどわるわけはない」
千春とのいざこざがあった直後だっただけに、どちらかと言えば煩いA女子どもとはいえ、こうして訪ねてくる友を歓迎する気持ちは、いつも以上にあったかもしれない。
「結構、本格的やん。
ウチも随分昔のことやけど、合気道の護身術を習った事があるんやで」
と、ケーコが腕を撫した。
「ほー。
じゃあ、どっからでもかかってきなさい」
あくまで冗談で言ったのだが、これを真に受けてしまうのが常識外れのアホ(?)、いや「型破り女」であるケーコの真骨頂と言えた。
「ホンマに、えーの?」
「おっ。その目付きはマジでやる気かい・・・んじオレは攻撃せんから、自由に攻めて来てみろよ。まあド素人では、掠りもしまいが ( ̄ー ̄)ニヤリッ」
「アンタ、ウチを甘く見んといて。こー見えても柔道2段やで」
と最初は、おっかなびっくりといった感じでパンチを出してきたケーコだったが、むろんスピードが段違いだ。柳のようにしなやかに攻撃を受け流すにゃべに、ケーコのパンチは掠りもしなかった。 ((((( ̄_ ̄;)サササササッ
ところが、負けず嫌いのケーコは意地になって髪を振り乱し、パンチやキックをメチャクチャに繰り出してきたではないか。
言うだけはあって、女学生としては思った以上に鋭い攻撃であるし、なにしろ体格的にも遜色ないどころか、ウェイトでは間違いなくこちらを凌駕する巨体だ。間違って当たればカウンターの可能性もあったが、武道という点では素人の域を出ていないから、我流とはいえ修行を積んで来にゃべを捕らえようはずはない。
「クッソー、さらさら掠りもせんわ・・・動くの早すぎー。ちゅーても、アンタのは少林寺っやなくて空手やないの?」
「そんなに本気になるとは・・・みんな見てるし、カッコ悪・・・」
「ねえねえ・・・なんか、えらく注目されてーへん?」
ゆーなの言う通り、気付けば
「スワ、何事?」
とばかり見ず知らずの通行人らが、面白がって遠巻きに視線を送っているではないか!
「ちょい、にゃべー!
向こうで、みんな注目してーへん?
いややなー、恥ずかし」
「オマエが本気になり過ぎるからだろーが!」
「そーかいな?
しゃーけど、こーなっては憎たらしいやん。1発でもお見舞いしてやらな、腹の虫が治まらんて」
と、懲りないケーコは野次馬の好奇の目をものともせず、というよりは寧ろ注目されたことで燃えているようだったが、こっちも間違ってあのパンチを喰らおうものなら大怪我は必定と思えただけに、当初のオフザケモードと打って変わり真剣にならざるを得ない。
「もー、疲れた!
アンタらも傍観しとらんと、挑戦したらどーやねん?」
と、ユーナ、リナ、ヒロミの尻を叩くケーコ。
「格闘技経験のあるケーコはともかく、他の素人3人ならいっぺんに相手してやってもえーぞ!」
と挑発してやると
「うちスカートやし、遠慮しとくわ・・・動きに付いていけそうもないし。
リナとヒロミまどかはパンツやし、やってみたらえーんちゃう?」
というユーナに
「ウチもけったいな注目、浴びたくへんわ・・・」(リナ)
「とても、あの動きに着いていけそーにないわ」(ヒロミ)
と、この時ばかりはいつになく、すっかり尻込みするA女子ども。
「しかしあんだけ動いたのに、アンタはちーとも汗もかいてへんね・・・」
と目を丸くするケーコは、滝のような汗を滴らせていた ( ´艸`)ムププ
「くっそー、超悔し~わ!
こうなったら、おとんにリベンジしてもらわな」
「オイオイ・・・オヤジって、もう40半ばとかだろーよ?」
「40半ばでも、おとんなら十分アンタにゃー勝てると思うわ。寝技一発で締め落とすんちゃうかな?
講道館4段で師範もやっとったし、180cm、100kg以上あるんよ。ほっそいアンタなんぞに、ウチのおとんが負けるとは思えーへんわ・・・」
「ほー、そーかい。オレは誰の挑戦も受ける!
デカけりゃつえーってもんじゃねーぞ!」
と啖呵を切ってはみた。
が、なるほど冷静に考えてみれば「大魔神」ケーコのオヤジだ。さぞや厳ついオッサンなのではないか・・・とはいえ、まさか本当に「対決」する羽目になることはないだろうが・・・しかし、なにしろ相手が異常な負けず嫌いかつ規格外の非常識女だけに、本当に大学に「刺客」を寄こしかねん・・・などと、ちょっぴり心配の種が。
0 件のコメント:
コメントを投稿