2005/10/09

大喧嘩

 幼馴染であり、またこれまで中学や高校では何度も話をしては来ていたが、その時は真紀などが常に一緒だったから、こうして二人きりで密接に会話をするのも初めてであり、ましてやなんと言っても地元からは遠く離れた土地という開放感がある。

 

 (この分ならば、計画はスムーズに運ぶだろう・・・)


 などと考えたように、万事が順調に運んでいるかに思えた。


 ところがドライブ再会後、誤算がやってこようとは。


 「今日は、少しくらい遅くなってもいいんだろう?」


 と、暗に「泊まり」の確認をすると


 「それがね・・・門限過ぎる時は、事前に届けを出しとかないといかんってのを忘れててね・・・だから今日は、ちょっと早めに帰らないとダメなんだけど・・・」


 「そんなん、無視しろよ。そんな規則なんて、どうせ誰も守ってないんだろ?」


 「アンタ、甘いね。女子寮って、凄く規律に厳しいんだから」


 「しかしな・・・オレはてっきり、遅くまで遊べるつもりだったんだが・・・」

 

さすがに「泊りのつもりだった」とは言えないから、言葉を濁すと


  「そお?

私は、今日はそんなつもりじゃなかったけど。折角だし、少しくらい遅れるのはしゃーないけどね・・・」

 

千春の投げやりに見える態度に、ついムカッとしたせいか

 

「こんな事ならわざわざ、六甲くんだりまで出てくるんじゃなかったぜ、アホラシ」

 

と、つい本音が口をついてしまった。


 「なに、それ?
 アホラシーってのは何さ?
 そーゆー唯我独尊なとこ、相変わらずねー、アンタって」


 と怖い目付きで睨みつけて来たところは、やはり紛れもない高校時代までの気の強い千春そのものだ。


 「オマエこそ、こっちへ来て少しは大人になったと思ったが、相変わらずのワガママなじゃじゃ馬だったか。こりゃ、とんだ見込み違いだったわ」


 ここまで来ては最早、修復は不可能な最悪のドロ沼へとはまり込んでいくしかない。

 

 「大きなお世話よ、バカ!
 もう、さっさと止めてよ! 
 これ以上、乗ってられん」


 「バカめ!
 それでオマエは、どうやって帰るっちゅーのか? 
 言われんでも、(山の)下まで行ったら真っ先に叩き降ろしてやるよ」


 「下までなんて結構よ。早く止めてって!」

 

 このように、言い出したら訊かないのが千春なのである。

 

 「アホか・・・こんな山ン中で降りて、どうやって帰るって言うのか?」


 「いいから・・・そんな事は、どうでもいいっしょ!
 アンタにゃ関係ないし、とにかく一緒にいたくないから、降ろして!」


 といったアホな遣り取りしているうちに、折悪しく登山バスのバス停が見えて来た。


 すると彼女が、マコトに思いもかけぬ行動に出た (  ゜ ;)エッ!!


 「あのバスで帰るから、早く停めてよね」


 あくまで強情に言い張る彼女に対し、こちらとしては折角久しぶりで逢ったのに、こんなくだらない事で喧嘩別れするのも惜しい気がしたし、またそうは言うものの一方では腹立たしさで叩き下ろしたい気持ちもあって、どうしたものかと迷っていると、驚いた事に、彼女が走行中の車から降りようとして、ドアを開けた (/|||▽)/ゲッ!!!


 前からよく知った女だから、時折大胆で予想外の思い切った事をする性格である点は十分に承知していたとはいえ、まさかここまでアクション映画じみた真似をするまでとは想定外過ぎた。


 (もしや・・・本当に飛び降りる気か?)


 と驚いてアクセルを浮かすと、敢然と(?)飛び降りてしまった ((()))カタカタ


 些か仰天しつつ、車を路肩に停めてしばらく様子を見ていると、特に怪我をした様子もなく何事もなかったような足取りで、振り向きもせずにバス停まで一目散に走って行くではないか。


 その後ろ姿のシルエットを追ううちに、徐々に腹立たしさが込み上げて来た。


  「くそ!

ヒステリー女め (-o-)ノ ┫」


 こうなっては、そのまま引き返すのも業腹だ。


「オレは、アイツのために来たんじゃない!

六甲山に遊びに来たのだ!」


 と半ばヤケクソ気味にスカGを六甲頂上に走らせ、六甲山牧場へ到着。羊が放牧される長閑な景色の中、ハイキング気分で堪能といいたいところだが、当然ながら場所柄、牧場の中はカップルや子連れの夫婦者ばかりであり、若い男が一人で羊を掻き分けながら黙々と歩いている姿は、殊のほか人目を惹いたに違いない。

 

 さすがに入場早々に虚しさを禁じ得ず、誰も居ない六甲山頂上まで登って行くと、1000m近い高みから関西の市街を見下ろした後は、羊と戯れて過ごすイロオトコの姿があった (* ̄m ̄)ブッ

 

それから有馬温泉へとしけこむ気にもなれず、早々に山を降りて神戸市街に戻った。


  (折角来たんだから、今夜は神戸を堪能するのだ)

と、元町の南京街で、名物ブタマンに被りつく。中華風の派手なネオンが異国情緒をかもす独特のムードであったが、さすがに夜だけにカップルの姿ばかりが目に付く。 女同士の姿も多く目に付いたが、この時ばかりはさすがにナンパに精を出す元気もなく、「異人館」の見学も早々に切り上げた。

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