( ゜ ▽ ゜ ;)エッ!!
これが美和の母??
まさか・・・)
思わず我が目を疑ったのも無理はない。
和服のモデルかと見紛うばかりに美しいその女性は、いかに若作りとはいえどう見ても30前にしか見えなかった!
「どへんも、毎度、美和がしんどいお世話に・・・」
柔らかく笑ったその女性は実にビックリするほどに美しく、天上から降ってくるような上品さを湛えた口調の声も、かつて見たことも聞いたこともないものだった。
キャンパスでは「美形」として男子学生の人気を集めていた美和も、この女性の前ではすっかり霞んでしまうほどだ。単なる美しさだけでなく、なにか圧倒的な存在感を身に纏った(実際、「同級生の母」というよりも、一人の「女性」としか見ることができないくらいの魅力をたたえた)その「女性」は、思春期のにゃべに圧倒的な衝撃を与えた。
「い、いえ、と、とんでもないっす・・・
オレの方こそ、フジワラ・・・いや美和さんには、いつも色々と教えられてばかりで・・・あ、にゃべと言いますけど」
生まれてこの方18年、およそ「緊張」という感情とは一切無縁だったにゃべに、人生初の「緊張」が訪れた瞬間だった。
(キンチョーするとか、あがるとか、みんなが言ってたのはこういうことだったんか・・・)
などと、ガラになく逆上せているこちらにはお構いなく
「まあ、よきあんばいに・・・」
と、その美しい「女性」が手を突いて挨拶するから、益々逆上せるしかない。
「いえ・・・こ、こっちこそ、よろしくお願いします」
「では」
と早速、華麗な手捌きでお茶を点てはじめたのだが、これがまたさすがは「家元」だけあって、素人にも目を見張るような鮮やかな手さばきであり、また全体的な造作の美しさは、まことに息を吞むほどだ。
(こんな本格的になるとは、話が違うしやばいな。
こんな美しい人に、軽蔑されたくない・・・)
と、益々不安が募るばかり。
「では、どうぞ・・・」
「いや・・・実は恥ずかしながら、飲み方がわからなくて・・・」
「ヾζ  ̄▽」ゞオホホホホホ
良いのですよ。遠慮なく、ご自分にあった飲み方でどうぞ」
と、目で美和を促した。
「ハイ」
事前に美和につけ刃の講釈を受けたものの、この「超本物」を前にしては、すっかりそんなものは消し飛んでいたのである。
結局はまたしても美和に教わりながら、しどろもどろに何とか飲み干した、にゃべ。
「いや・・・本当に美味しいですね」
実際、元の素材が高価なものか、あるいは「家元」先生の超一流の腕によるせいか
(抹茶って、こんなに旨いものだった・・・??)
と思ったほどに、予想をはるかに超えた美味だったのだ(ただし後年、寺院などで飲んだものは、どれもあまり旨くはなかったが)
このようにして一通りの「儀式」が終わった事で、ようやく針の筵から降りた気分ではあったが、張りつめたような静寂感の漂う茶室、また格式ばった家そのものの雰囲気といい、何から何まで別世界という雰囲気であり、また美和の方も普段のキャンパスでバカ笑いをしている時とは打って変わり、さすがは「家元」たる母の威厳の前に(?)、ガラにもなくおしとやかに澄ましているのにも調子が狂った (; ̄ー ̄)...ン?
(こりゃ、ノコノコ一人で来るんじゃなかった・・・)
などと、後悔し始めた矢先である。
「美和から、にゃべさんは愛知県のお方とお聞きしましたけど、京都にご興味を持たれはって、こちらへ?」
と会話が始まり、ようやく緊張から開放されたにゃべ。
改めて向き合う形になった美和の母は、大人の色香の香る成熟した美しさに溢れ、遂に人生初の緊張感を味わうことになってしまった。
「まあ、そんな感じですか・・・では、お忙しいところにあまり長居も出来ませんから、この辺りでボチボチと」
と腰を上げかけると
「あら、まだ良いではあらしまへんか。うちの方はあんまりお構いできまへんけど、どうかごゆっくりなさっていって・・・」
「でも、なんか忙しそうですし・・・」
実際に、この間にも、弟子(?)らしき数人の女の子が
「先生、よろしでしょうか?」
と、襖越しに何度か声をかけてきていた。
「あらあら・・・若い人が遠慮しちゃだめよ・・・」
「恐縮です・・・」
と夢うつつのような気分のまま、取り留めのない会話を交わした。
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