ヘーシオドスが『神統記』に記すところでは、アテーナーはゼウスの頭頂部より武装して鎧を纏った姿で出現したとされる。ギリシア神話の神々の歴史においては、オリエントの神々の歴史が示すのと同様に、三世代にわたる神々の長たる「王権」の移譲あるいは強奪があった。ギリシア神話では、それは星鏤める天の神ウーラノスの支配が第一の王権で、ウーラノスは原初の大地大神ガイアとの間に多数の息子・娘をなした。これがティーターンの一族である。
ウーラノスの末子がクロノスであり、クロノスは母ガイアに教唆されて、絶対の権力を振るった父ウーラノスを不意打ちで攻撃し、ウーラノスの男性器を切り落とした。こうしてクロノスが神々の王権の第二の支配者となる。しかしクロノスはガイアとウーラノスの予言によって、彼もまた自分の子によって支配権を奪われるだろうとされた為、生まれてくる子供達を飲み込んだが、ゼウスだけはクレタ島に逃れ、やがて成長したゼウスは兄弟姉妹達を復活させ、クロノスの王権を簒奪する。
このようにして、ゼウスを主権者とするオリュンポスの王権が誕生したが、ゼウスもまたガイアとウーラノスによる予言を受けた。それは、最初の配偶者である女神メーティスとの間に生まれる子供は、最初に、母に似て智慧と勇気を持つ娘が生まれ、次には傲慢な息子が生まれるだろう。そしてゼウスの王権は再度、彼らによって簒奪されるだろうというものである。その後メーティスが身籠もると、ゼウスは妊娠したままのメーティスを素早く飲み込み、禍根を断とうとした。
アポロドーロスが『ギリシア神話』で述べるところでは、胎児はゼウスの身体の中で生き続け成長し、ゼウスは激しい頭痛を感じるようになった為、プロメーテウスに(また一説では、ヘーパイストスに)斧(ラブリュス)で自らの頭部を割らせると、中から出てきたのが甲冑を纏った成人した姿のアテーナーであった。アテーナーが生まれると同時に、宇宙は大きくよろめき、大地と大海は轟音を発しながら揺れ動き、太陽は軌道上で停止した。こうして、形の上ではアテーナーを生んだのはメーティスではなくゼウス本人だということになったので、オリュンポスの王権はゼウスを長として揺らぎないものとなった。
誕生の異説
ロバート・グレイヴズが『ギリシア神話』で記すところでは、アテーナーはヘレーネスがギリシアに到来する以前から、母権制社会のペラスゴイ人によって崇拝されていた、人面蛇身で顔を見た者を石に変える大地の女神メテュスであったとする(ただし、グレイヴズの主張に学術的裏づけはない)。ペラスゴイ人の伝承では、女神はリビアのトリートーニス湖のほとりに誕生したとされる。土地の三柱のニュムペーが女神を養育した。
女神は山羊革の衣類を纏うリビアで成長した。少女の頃、友達であるパラスと槍と楯を持って闘技で遊んでいたところ、間違ってパラスを殺してしまった。それを悲しんだ女神は、自分の名の前に「パラス」を置き、パラス・アテーナーと名乗ることにしたという。女神は長じてクレータ島を訪れ、そしてギリシア本土のアテーナイへとやって来た。他にも、雲の中に隠れていたアテーナーをゼウスが雲に頭をぶつける事によって誕生させたともいわれる。
女神の祭儀と神殿
アテーナー女神の祭儀でもっとも著名なものは、その崇拝の中心地であるアテーナイ市で7月に行われるパンアテーナイア祭である。これはアテーナーの誕生日(ヘカトンバイオーンの月の28日)を祝う祭りで、アッティケー都市連合の成立も記念して祝われた。馬術、詩歌、音楽、文芸などの競技が催された。この祭りは4年に一度大祭が行われ、パンアテーナイア祭はとくにこの大祭を指すことがある。このときはパルテノーン神殿にあるアテーナーの神像の衣が取り替えられ、乙女たちが新しく織った衣を着せた。アテーナイのアクロポリスのパルテノーン神殿のメトープには、この衣を運ぶ行列の模様が彫られている。
女神の神殿はアクロポリスの頂にあるパルテノーン神殿が著名で、また同じくアクロポリスに、女神は「エレクテウスの宮居」を備えていたとされる。エレクテウスは人名であるが、これは恐らく古代アテーナイの伝説の王であるエリクトニオスの別名と考えられる。アテーナイの支配権をめぐって、かつて海神ポセイドーンとアテーナーが争ったことがあり、初代アテーナイ王ケクロプスが女神を支持したことで、アテーナー女神が勝利を得た。
梟とオリーブが女神の聖なる象徴としてコインなどに刻まれるが、有翼の女神ニーケー(Nike、勝利の意、ローマ神話ではウィクトリア(ウィクトーリア、Victoria)と呼ばれる)も、彼女の化身であるとして登場することがある。アテーナーは父神ゼウスと同様に、アイギス(山羊革楯)を持ち、その楯にはゴルゴーンの頭部が付けられている。主に後ろに並んだ100人の歩兵を隠すほど大きい前立ての付いた兜を被り、槍とアイギスを持った姿で表される。一説には梟のように大きな灰色の目を持つと言われ、メドゥーサとの関連性を考える人物もいる。
※Wikipedia引用
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